香港企画記事速報
2007年10月10日記 深川耕治

香港行政長官、施政方針演説で香港の新たな進路を示す
(07年10月10日=香港特別行政区政府からの提供資料情報)

 曾蔭權(ドナルド・ツァン)行政長官は本日(10月10日)、第3期政府における初の施政方針演説において、香港の発展の新たな進路を提示した。

 立法会での演説で、曾長官は香港の将来に絶対的な自信を持っていると述べた。

 また、曾長官は『香港の新たな進路』と題された施政方針演説の中で、「わが国の台頭は新たな機会をつくり出すとともに、香港に新しい時代をもたらすものでもある」と語った。

 「今後5年間、我々はこの新時代のための新たな精神を育成する必要がある。我々は、新時代において発展を持続する力を備えた新しい香港人へと生まれ変わらねばならない」

「これらの機会をつかむためには、新たな目標を設定しなければならない。我々にはビジョンが必要だが、より重要なのはそのビジョンを達成するための実際的な計画である」

曾長官は今後5年の間にそのビジョンを実現するための3つの“指針”を提示した。

・ 第一の目的として、経済発展の促進;
・ 持続可能な調和のとれた多元的な発展;そして、
・ 社会的流動性の促進、貧しい人々の支援、職の創出、コミュニティにおける思いやりの文化の促進に向けた社会的調和の向上

曾長官はこれら目標の達成のため“進歩的発展”という概念を提示した。

「“進歩的発展”という言葉は、経済的発展のみならず全体的な進歩を指すものである」と長官は述べた。

「経済的利益に加えて、文化、社会、環境といった面での利益の実現を目指さなければならない。進歩的発展は、持続可能で調和のとれた多面的な発展に重きを置くものである。」

曾長官は、社会の全員が進歩的発展の実現に向け役割を果たすと述べた。

「政府、企業、個人のそれぞれの責任について実際的な観点から考えるべきである。」

政府の役割は主として、全市民が繁栄と進歩の果実を分かち合う機会を得るよう、持続的経済発展に有効な政策を策定することである、と曾長官は述べた。企業に対しては、社会におけるその経済的役割のみならず、賃金保護、環境保護、歴史・文化遺産の保護、さらには思いやりのある社会の建設といった分野で社会的責任を担うよう呼びかけた。

また個々の市民に対しては、各人が時代とともに前進すべく機会をとらえて自らの力を高め、新たな経済を取り入れ、変化する世界のニーズに応える必要があると語った。

曾長官は、香港を発展の新たな高みに導き、将来のチャレンジを受け止めるための5つの主要分野の概略を示した。

・ 経済成長のため10の主要な社会基盤整備事業を実施する。それら事業には、中国本土との連動性を高め香港の交通網を強化する鉄道・道路の新設、また西九龍文化地区、啓徳でのクルーズ船ターミナルの建設、新界北部の新規開発などが含まれる。

・ 住環境の改善、歴史・文化遺産保護の強化、歴史的建造物の再生、文化およびコンテンツ産業の振興、新たな食品安全法や安全基準の導入を通じて、良質の生活を享受できる良質な都市を建設する。

・ 減税や不動産税の割戻しによる市民への富の還元、社会企業の発展促進、訓練・再訓練機会の拡充、貧困の軽減、高齢者サービスの改善などを通じて、思いやりのある社会の建設のため投資する。

・人的資源の開発を促し、健康的な加齢を奨励することにより、人口構成を最適化するとともに有能な人材を誘致する。政府は2008〜09学年度から12年間の無料教育を提供する。また、適切な範囲で少人数制の授業を導入し、さらにアジアにおける教育のハブとしての香港の地位を向上させる。包括的な医療制度改革も実施する。

・政治改革に関する諮問期間中に得た市民からの意見を整理、要約し、香港社会の意見を忠実に反映した報告書を中央政府当局に提出することにより、民主化を進めガバナンスの向上を図る。政府はまた、すべての地区評議会が各地域のいくつかの施設の管理に関わることを許可するとともに、地域の小規模な事業のための予算を増額する。さらに、地域における草の根的な事項についてより適切な対応を可能にすべく、地区職員に対する支援を強化する。基本法を振興し、国民教育をさらに強化する。

「これらの戦略を成功させるためには、政府、企業、個人がそれぞれの役割を果たさなければならない」と曾長官は述べた。

「我々は各自の責任を果たすため、実際的かつ積極的であらねばならない。」

「異なった社会階層、年齢層、異なった政治的見解を持つ人々すべてが進歩と前進のために力を合わせる時、我々は黄金の10年へと向かう新たな旅路につくのである。」

「香港はより輝かしい世界都市へと進化を遂げるであろう。」


以 上

2007年10月10日
以下、詳細な施政方針演説内容

二〇〇七〜〇八年度香港行政長官施政方針演説
主題「香港の新たな進路」
・社会基盤整備事業を通じて経済発展を促す
・活性化を通じて地域社会の発展を図る
・市民の自助努力への支援を通じて社会的調和を促進する

経済成長のための10の主要な社会基盤整備事業
「社会基盤整備事業は大きな経済的利益をもたらし得る。その付加価値は年間1,000 億香港ドル以上と見込まれ、さらに約25万の新たな職を創出する」
・サウスアイランド線:2011 年に着工
・沙田−セントラル線:新界北東部と香港島を東九龍経由で結ぶ。2010 年に着工
・屯門西バイパスと屯門−チェクラプコック連結線:深?のディープベイと新界北西部、および香港国際空港を連結する。2016 年に竣工予定
・広州−深セン−香港高速鉄道:西九龍と広州を結ぶ高速鉄道は2009 年着工予定
・香港−珠海−マカオ大橋:近い将来における予算措置の完了を目指す
・香港−深?空港協力:香港国際空港と深?空港を鉄道で結ぶ計画について研究する
・落馬州緩衝区の香港−深?共同開発:落馬州緩衝区の開発に関して深?当局と協力する
・西九龍文化地区:2008 年半ばの立法化を目指し、西九龍文化地区管理局ができるだけ早い時期に設立できるようにする
・啓徳開発計画:最初のクルーズ船ターミナル埠頭は2012 年の完成を予定する
・新規開発分野(NDAs):新界北部に良質な住環境を提供するための新たな開発分野を策定する

国際金融のハブ
・中国本土の企業と投資家が、QDI(中国国内有資格機関投資家)計画と個人投資家向けのパイロット計画
・早期にイスラム債が香港で起債できるよう研究を進める
・国際仲裁サービスの発展を促進し、国際仲裁機関との関係を強化する
経済と貿易の発展
・珠江デルタで活動する香港企業の再編、高度化、移転を支援する
・香港の競争力向上と国家の発展を支援するため、中国の第11 次5 ヵ年計画の行動要綱を実行する
・独占禁止法に関して市民の意見を集め、2008 〜 09 年に法案を立法会に提出する
・商業原理に従い政府所有資産の管理を強化し、より高い収益率とより良い管理を実現する
良質の都市と良質の生活
「『進歩的発展』という言葉は経済的発展のみならず全体的発展を意味する。経済的利益に加えて、文化、社会、環境といった面での利益・・・、持続可能で調和のとれた多面的な発展を目指さなければならない」
環境保護
・提案されている「建築物エネルギー効率規則」の強制実施について市民の意見を募る;二酸化炭素排出監査を実施し、範を示す;地球温暖化と闘う排出削減運動を実施する
・大気の質を改善するための新たな規制制度について電力2社と協議する
・あらゆる工業、商業過程において工業用ディーゼルの利用に代えて超低硫黄ディーゼルの使用を求める法律を制定する
・ 停車時にエンジンの停止を求める法律の制定に関して市民の意見を求める
・「緑化綱領」を香港全土で実施する
・ より良い住環境を整備するため建築物等の開発密度を低下させる
・ 環境保護基金に10 億香港ドルを投入する
文物保護
・歴史的また建設された文物が関係する公共事業はすべて影響評価調査を実施する
・NGO(非政府組織)が歴史的建造物の有効的な再利用を申請することを認める
・香港ジョッキークラブのセントラル警察署再利用提案を採用する;湾仔の屋外市場を保護し美化する;アバディーンストリートのセントラルスクールの元の敷地に関して、売却リストから外し、再利用について提案を公募する
・個人所有者に文物保護を促す経済的動機づけに関して検討する
・文物保護専門事務所を設立し、文物の保護活動の中心とする
文化と創造性
・油麻地劇場を広東オペラセンターに改造し、広東オペラの振興を図る
・コンテンツ産業育成のための施設と人材養成の戦略計画を策定する
安全な生活
・消費者保護のため「食品安全法案」を提出し、食品ラベル法を法制化する

相互に助け合う社会の建設
「繁栄の果実を共有する度合いは、社会の各層によって異なる。低所得の家庭の中には苦しい状況に置かれた家庭もある・・・、私は彼らの問題を軽減すべく全力を尽くす」
富を人々に還す
・2008 〜 09 年度、個人所得税の標準税率を15%に、就業所得税率を1%引き下げ16.5%とする
・2007 〜 08 年度の最終四半期の不動産税を免除とする
社会企業
・財界と非営利団体の社会企業計画への参加を求める;年末までに社会企業に関する首脳会議を開催する
雇用可能性の向上
・再訓練計画を拡大し、対象を15 才以上で副学士またはそれ以下の学歴の人々とする;就職支援サービスを提供する
最低賃金
・「賃金保護運動」が不満足な結果に終わった場合、警備員と清掃労働者の最低賃金を法制化する
不利な境遇にある人々のケア
・包括的社会福祉控除計画における控除所得に関する規制緩和、児童発達基金の設立、高齢者向け介護施設の追加供給など、貧困支援委員会の諸策を実施する
高齢者のケア
・70 才以上の全市民に民間医療サービスを受けるための医療券を提供する
・より多くの高齢者向けデイケア施設を提供し、特定地域では在宅ケアサービスを増やす
・2億香港ドルを拠出し高齢者の住環境を改善する
・香港住宅協会は香港島において高齢者住宅の建設に適した用地を特定する
青少年の麻薬問題への対応
・青少年の麻薬問題に取り組むための部署横断的タスクフォースを設立する
人材を育成し、人材を集める
「人口構成の変化に対応するため、人的資源の開発を促し、健康的な加齢を奨励する必要がある」
12年間の無料の教育
・公立学校と職業訓練校で12 年間の無料教育を提供する
少人数制の授業
・2009 〜 10 学年度から条件が許す公立の小学校で、少人数制を導入する
教育のハブ
・インターナショナルスクールの新設もしくは既存校の拡張のための用地を準備する
・留学生枠を拡大し、卒業前後の就職規制を緩和する
人材の誘致
・人材獲得計画を変更し、香港の発展に貢献する人材を誘致する
医療改革
・包括的な医療制度改革を実施する。これは基層医療の強化、かかりつけ医による医療サービスの促進、民間医療サービスの利用、患者指向の電子カルテ制度開発等を含む
・年末までに改革と財政計画について市民の意見を募る

民主化と統治の改善
「基本法の規定に合致する形での普通選挙の実施について、社会の合意を形成するため全力を尽くす。また、その早期実施に関して、中央政府の信頼と理解を得るため最大限の努力をする」
民主化
・『政治改革に関する提案書』に関して得た市民の意見を整理、要約し、香港社会の意見を反映するものとして中央政府当局に報告書を提出する。第3期香港特別行政区政府の任期内において普通選挙の実施に関して合意を形成すべく努める
卓越した統治の追求
・18 の地区評議会のすべてをいくつかの地域施設の管理に関与させる。地域の小規模な事業のため年間3億香港ドルの特別予算枠を設ける
・地域行政を支援し、住民生活に関わる問題に迅速に対応できるよう、地区職員により多くの資源を提供する
立法会との緊密な協力
・立法会と密な協力関係を築き、重要な政策を策定する際はできるだけ早期に議員の見解を求める
中国本土との一体化
・適切なメカニズムを導入し、「一国二制度」の下、中国の「第12 次5ヵ年計画」に関して香港特別行政区がその策定準備を支援する活動を早期に取れるようにする
基本法の振興
・公務員の『基本法』関連の研修を強化するとともに、公務員採用試験にも盛り込む。コミュニティや学校でのPRを強化する
国民教育
・各界と緊密に協力し、国民教育を推進するとともに、青少年の国家の発展に対する理解と認識を深める。学校での国旗掲揚を奨励する
オリンピック精神の振興
・国民教育とスポーツの振興において、2008 年北京オリンピックを主要テーマとして強調する

結論
 「香港は調和のとれた、多元的で、安定した、先進的な社会であり続ける。我々は企業の社会的責任を重視しつつ、自由市場のルールに則って行動する。伝統的な中国人家族の核となる価値を保つと同時に、現代的な価値観を取り入れる。
 我々は社会的安定や政府の効率性を損なうことなく民主化を推進する。経済的発展を追及すると同時に、環境保護と文化の保持に努める。我々は個人の自由と多元性を大切にするとともに、中国国民としての意識を共有する。香港は中国の都市であり、同時に地球の都市でもある。」