第4回  香港映画復活への道・上

「大陸へ映画売り込め」 
45億円の基金設立、新進映画に融資 香港政府


香港アジア映画投資会で大賞を受賞した左から彭浩翔監督、張婉●(女ヘンに亭)監督、羅卓瑤監督

 七〇年代のブルース・リー、八〇年代のジャッキー・チェン主演カンフー映画など香港映画黄金期が過ぎ去り、中国返還後、香港映画は衰退した。返還前、「映画制作の自由」に規制がかかるのではないかとの懸念が広がり、ジョン・ウー監督ら実力派の映画人は米ハリウッドなどに進出。有能な人材流出の穴を埋める若手が資金難で育たないのが要因だった。

 全盛期だった九〇年代前半、年間二百本を超える作品が制作された香港映画は〇五年が六十四本、〇六年は五十一本とじり貧状態。全体の興行成績も落ち込んでいる。ただ、〇一年公開の周星馳(チャウ・シンチー)監督・主演「少林サッカー」(興行収益七億五千万円)、〇四年公開の同監督映画「カンフー・ハッスル」(同九億円)が興行記録を塗り替え、ベルリン映画祭音楽賞を受賞した彭浩翔監督の「イザベラ」など一部で高い評価を得る作品も出てきた。

映画「少林サッカー」などで有名な周星馳監督(左から2番目)は映画産業振興策を打ち出した曽蔭権行政長官(左から3番目)の選挙応援に駆けつけた

 再選を果たした香港のトップ、曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官は昨年十月、「映画発展局」と「映画発展委員会」の新設を表明。〇七年度と〇八年度の財政予算案に「映画発展基金」へ三億香港ドル(四十五億円)の支出を提案している。実務を取り仕切る王永平・商工科技局長は「中小映画の資金難による作品激減を打開するため、有能な人材が業界参入する環境作りに融資することが不可欠」と話し、中小映画の制作コストの三割以内での融資を行う方針だ。

 三月二十日、恒例となった香港国際映画祭で「第一回アジア映画大賞」の授賞式が香港の中心部・湾仔(ワンチャイ)で開かれた。同授賞式は本来、韓国・釜山で行う計画で構想されたものだが、韓流ブームに危機感を抱いて映画産業振興に再び力を入れ始めた香港が、中国の強力な支援を取り付け、最終的に香港が開催地に決まった。

 アジアナンバー1の映画を競う華やかな授賞式では、大賞は韓国映画「グエムル‐漢江の怪物‐」(ボン・ジュンホ監督)、監督賞はベネチア国際映画祭の最優秀作品賞を受賞した中国映画「三峡好人」の賈樟柯(ジァ・ジァンクー)監督、特別賞・アジア映画大ヒット俳優大賞は劉徳華(アンディ・ラウ)が獲得。実際は香港映画復活と中国映画の興隆を印象づける内容となった。劉徳華は授賞式で「映画というものはヒットしてもしなくても映画をあきらめることは決してしない」と話し、香港映画に希望の光が見えることを鼓舞。

香港国際映画祭で特別上映された「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 」の主演、阿部寛(中央)と広末涼子(左)

 今年二月、第七十九回アカデミー賞が発表され、マーティン・スコッセシ監督の「ディパーテッド」が作品賞や監督賞など四部門を制すると、原作である〇二年公開の香港映画「無間道(インファナル・アフェア)」が俄然、注目を集めるようになった。梁朝偉(トニー・レオン)扮するマフィアに潜入する捜査官にレオナルド・ディカプリオ、劉徳華扮するマフィア内偵の警官にマッド・デイモンが演じたリメイク作品がハリウッド映画の頂点に輝くアカデミー賞作品に輝いたことに香港映画界は復活への自信を深めている。

 また、香港国際映画祭と同時開催された香港アジア映画投資会(HAF)も注目の的。アジア各国の映画界関係者が設立した映画投資の場で、新作映画の企画段階で投資パートナーを募り、制作費問題で苦悩している映画監督に名作作りのチャンスを与えている。今年は二十五作品が選ばれ、総額七十五万香港ドル(千百二十五万円)が贈られた。大賞には「メッセンジャー(使徒)」(羅卓瑤監督)、「三国志演義の赤いバラと白いバラ」(張婉●監督)、「夜来香」(是枝裕和監督)などに決まり、各十万香港ドル(百五十万円)が制作費などとして支払われた。

 香港貿易発展局の邱松鶴エグゼクティブディレクターは「九七年のアジア通貨危機以後、映画界で悪循環が生じ、投資者は国際映画スターの映画に巨額投資するか、小規模の映画に少額投資するか二極化した。中間にある七百万香港ドル(一億五百万円)から一千万香港ドル(一億五千万円)程度の投資が激減し、新進映画は資金力がなくて頭打ち状態に陥ってしまった」と話し、今後、中小規模の映画制作支援のために香港政府や民間組織が制作融資のシステム作りを構築する重要性を強調している。(香港・深川耕治、写真も)

●=女ヘンに亭