香港企画記事速報
2004年6月30日記

粗悪食品流入と犯罪増に悩む香港
中国本土客の香港観光解禁
中国本土への「北上」就労増える
 香港は返還後の景気急落を中国依存型の経済政策で乗り切ろうと必死だ。だが、英国領香港のレッセ・フェール(自由放任)経済は、中国一辺倒に傾斜する経済政策に方向転換したことで中国本土客による犯罪増や中国本土産粗悪食品の流入など社会不安を伴う高リスクの経済システムに変容しつつある。(2004年6月30日記=香港・深川耕治、写真も)


 香港・九竜半島でいつも夜遅くまで活気に満ちている旺角(モンコック)。中でも有名なショッピングエリア、女人街は昨年後半から中国本土観光客が急増し、小店舗の売り上げが急増している。坪単価は香港返還直前の不動産バブル期に匹敵する最高価格まで跳ね上がり、仲介業者の話では来年の契約ではさらに二割高になると予想しているほどだ。

 同様の不動産高騰現象は旺角だけでなく、日本の渋谷に当たる若者の街、香港島コーズウェイベイの小店舗でも起こっており、売上高に確実に貢献する中国本土客の急増は返還前の活気を取り戻す契機となりそうな勢いだ。

活気を取り戻した淘大花園(アモイ・ガーデン)内の商店街 九竜半島の牛頭角にある高層マンション「淘大花園(アモイガーデン)」=写真右=。昨年四月、住民一人が広東省江門市内の実家に帰省し、住民六、七人に新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)を感染させ、集団感染が広がった最大被害エリアの一つだ。現在、SARS騒ぎがまるでなかったかのように活気を取り戻し、マンションのリフォームや新築が進む。時折、中国本土からの観光客グループが不動産会社のガイドに連れられ、同マンションの買い付けの下調べに来る姿がひときわ目立つようになった。SARS騒ぎで不動産価格が底値になり、最近は価格上昇が見込まれて「買い時」との不動産業者の言葉に目が輝く。

 昨年六月二十九日、香港と中国本土の間で経済・貿易緊密化協定(CEPA)が締結され、今年一月一日から施行されたが、香港、中国本土、マカオの人と外資、モノの交流が活発化し、中国本土頼みの構図がさらに強まっている。

 また、広東省全域の主要都市住民だけでなく、北京や上海など中国本土の大都市部の住民が香港への個人旅行ビザの申請を行うことが可能となり、これまで人数を限定されていた中国本土の団体旅行客だけでなく、個人旅行客が急増した。

 香港では中国各地の富裕層が個人観光をするようになり、香港の不動産を買いあさるなど、一時低迷していた香港不動産価格の向上に貢献している面も大きい。中国本土の民営企業家が香港に巨額を投資するなどの動きも顕在化している。

 香港では市民が人民元の口座を香港の銀行で開設することが可能となり、景気低迷に悩む香港人が広東省広州市内で「香港城」と呼ばれる香港商品専門店を個人で開店営業することも許可された。七%台の香港の失業率は香港人大卒者の職業難を慢性化させ、中国本土へ「北上」して就職するケースが着実に増えている。香港にとっては地元民の有能な人材の中国本土への流出現象が起こり、逆に中国本土の有能な人材は中国本土を拠点として香港資本を買いあさるという香港にとってはありがたくない動きが加速。有能な人材の空洞化は、「中国の経済センター」をめざす上海に香港が飲み込まれかねない危機感を高めている。

香港で安全性の信頼が高く、人気が出てきた台湾産食品 香港と中国本土が経済依存を強めることで、香港にとっては「影」の部分が拡大している。「中国本土の粗悪食品にはこりごりだ。むしろ、台湾の食品の方が衛生管理がしっかりして信頼できる」と香港人の主婦らは「安かろう、悪かろう」の中国本土産食品を敬遠し始め、台湾からの輸入食品(写真左)に人気が集まり始めている。

 ここ半年、中国の粗悪食品問題は香港メディアで取り上げられない日はない(下図参照)。しかも、香港に輸入された中国本土産食品七品目に有害物質が入っているとの香港食物環境衛生署の警告は、最新世論調査で「中国本土食品を信頼しない」と答える香港人が六割を超えるほど、信頼が失墜している。

 来月からは中糧工業食品輸出入有限公司が中国本土側の一括窓口として香港への輸入を取りまとめることになっているが、今後、粗悪食品の香港への水際防止がどこまでできるか、香港人にとって不信感が払しょくされていない。

香港税関では中国本土客が免税品と偽って密輸品を香港に流入させたり、逆に香港から中国本土へ流出させようとして逮捕される事件が相次いでいる。今年五月期だけでも中国本土客八百七十人が密輸容疑で香港税関に逮捕されている。

 また、香港の九竜地区や新界地区では、中国大陸から密入境したと見られる売春婦が急増した。香港島の歓楽街、ワンチャイ(湾仔)ではカラオケボックスを舞台とする大がかりな中国本土と香港マフィアによる売春事件が発覚した。高級キャバレーである夜総会で中国大陸の売春婦を香港人男性に斡旋し、カラオケボックスで売春させるというものだった。香港警察は一週間から三ヶ月の旅行ビザで香港に入境した三十五人の中国人女性を逮捕している。このような事件は昨年後半から急増しており、中国本土客による犯罪は増加する一方だ。

 今後、香港がさらに中国本土との依存を強めれば、経済波及効果は確実に現れる一方、治安悪化や粗悪食品問題などCEPAによる「影」の部分がいっそう憂慮される事態となりそうだ。(2004年6月30日記)
【中国本土産の粗悪食品に関する香港各紙の報道(抜粋)】
2004年
4月24日 安徽省産粉ミルクが品質不良で多数の被害者
5月5日 山東省産ビーフンに発ガン性物質添加
5月10日 四川省で漬け物に工業用塩と殺虫剤を添加
5月17日 四川省産のメンマに二酸化硫黄
5月18日 広東省茂名市で果物缶詰に二酸化硫黄
6月5日 広東省深セン産のマントウに漂白剤
6月7日 海南省産ココナッツに漂白剤
6月14日 湖南省産ピーナッツに漂白剤
6月15日 広東省広州市で発ガン性物質入りピーナッツ売買