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2008年7月9日記 最新中国株情報 WINTRADE


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中台直行便解禁で打撃 中国返還11周年の香港
民主化低迷、「中国化」如実に

地震と五輪で愛国教育取り込む
行政長官の支持率急落も懸念材料


 7月1日、香港は中国返還11周年を迎え、6日には中国の習近平国家副主席が視察のため香港入りし、3日間の滞在を終えた。政経両面の中国化が進む香港では曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官の支持率が政府副局長の不透明人事をめぐる甘さやインフレ対策の後手で急落。9月の立法会(議会・定数60)選挙に「香港の良心」と評される陳方安生(アンソン・チャン)立法会議員が出馬しないことを表明し、親中派有利、民主派苦戦の展開だ。中央政府の民主派切り崩しや巧みな愛国教育の懐柔策がじわじわと香港人の政治意識やアイデンティティまで変えようとしている。(深川耕治、写真も=08年7月9日記)


香港のコンテナ港。中台直行便の解禁で貨物便も打撃だ=深川耕治撮影
 7月1日、返還11周年記念式典で曽行政長官は「香港で行われる北京五輪馬術競技の開催に全力を尽くす。四川大地震の被災地復興プロジェクトにも積極参加したい」と述べたが、市民の反応は冷ややかだ。
 昨夏までインフレ率2%前後だった香港も原油高や食料品高騰から今年5月には五5.7%まで上がり、インフレ対策に悠長すぎる政府の対応に低所得者層の不満が増大。鳥インフルエンザ対策強化で活鶏販売店の鶏一斉処分や営業停止を断行し、業者の猛反発も続く。

 5月に曽行政長官が発表した高官新ポスト、副局長の政治的選考人事や待遇に不明朗な部分が多く、民主派や各メディアは厳しく非難。7月1日恒例の民主派デモでも「血税を無駄にするな」などのかけ声が増え、情報公開が後手になった曽行政長官への批判が集中している。

 必然的に曽行政長官の支持率は急落。6月中旬に行った香港大学の調査では支持率51.3%で今年5月から約12ポイントダウンし、香港紙「明報」が7月1日行った世論調査でも36.9%(前年同日比14.4ポイント減)と低迷。「北京政府からも見切りをつけられれば董建華前行政長官と同じく中途辞任の道を真っ逆さまだ」(劉慧卿立法会議員)との声も出ている。

香港の立法会議場。9月7日投開票の香港立法会議員選挙は民主派が苦戦を強いられる=深川耕治撮影
 4日、中国と台湾を結ぶ週末チャーター直行便が始まり、中台の中継貿易基地だった香港の“経済地盤沈下”も憂慮されている。香港を訪れる台湾人は年間220万人。うち150万人(65%)が中国大陸やマカオへ往来するだけのトランジッド客で香港観光を目的とする宿泊客は70万人(35%)しかいない。香港政府の見通しでは「短期的には一定の衝撃がある」(鄭汝樺運輸住宅局長)が、長期的な巨額損失や景気への影響は少ないと楽観視している。

 だが、年間150万人の台湾人が香港経由で中国大陸と往来し、年間70万人の中国人が香港経由で台湾と往来する現状が中台直行便解禁で撤廃されれば、トランジッド客が一人当たり200香港ドル(3000円)を香港で消費していたとしても年間4億4600万香港ドル(66億9000万円)の損失。

 しかも、香港と台湾各地を結ぶ香港資本の航空路線(香港ドラゴン航空やキャセイパシフィック航空)の便数激減は避けられず、中台間の三通(中台間の通信、通商、通航の直接往来)がさらに解禁されれば、年間2000億香港ドル(3兆円)規模の中台中継貨物便収益を得ていた香港の航空貨物便による損失は甚大だ。「台湾との金融、貿易、観光業での協力強化で生き残りを模索すべきだ」(親中派政党・民建聯の譚耀宗立法会議員)との意見が立法会でも主流を占めている。

 経済の懸念材料が増える中、香港は政治面でも民主派が衰退。7月1日、民主派による毎年恒例の民主化デモは主催者発表で4万7000人(前年比2万1000人減)で小中学校で国旗掲揚式が定例化するケースが増え、四川大地震への義援金活動や北京五輪で愛国教育が青少年のアイデンティティを親中化させ、「中国人意識」を浸透させている。香港大学の最新世論調査では「自分は中国人」と答えた人は52%で「自分は香港人」と答えた人(47%)を上回り、1997年の調査開始以来、最高となった。

香港国際空港。7月4日スタートの中台間週末チャーター直行便や三通解禁への動きは中台中継貿易で繁栄した貨物便などに大打撃との見方も=深川耕治撮影
 民主派は、3月に政界引退を表明した元民主党主席の李柱銘(マーティン・リー)立法会議員に続き、香港政府でナンバー2の政務官を務めた陳方安生立法会議員が7月6日、9月7日投開票の立法会議員選挙に「出馬しない。若い世代に議席を譲りたい」と表明。若手が育たない民主派にとって現有2議席減は昨年12月の補欠選で陳方氏に惜敗した葉劉淑儀(レジーナ・イップ)元香港保安局長など親中派に取って代わられる可能性が高く、苦戦を強いられている。

 7月4日、香港立法会議員20人による四川大地震の現地視察団は空路、現地入りしたが、急進民主派の梁国雄議員のみ「四川省でデモを起こすとの噂があった」(視察団長の范徐麗泰香港立法会主席)との理由で当局から入境を拒否された。視察団には従来、中国本土への入境を禁止されていた3人の民主派議員(民主党の楊森氏、李永達主席、●(サンズイに余)謹申氏)らも他に含まれていたが、入境を許可され、「梁議員の拒否理由はこじつけ。視察は香港政府の人気取りに過ぎない」(楊森議員)との批判が出ている。

 中央政府の愛国心をくすぐる巧みな懐柔策は、台湾が中国に取り込まれる以上に香港の対中依存度をじわじわと高め、民主派の世代交代で民主化も低迷・頓挫する動きを強めている。