深川耕治=2008年8月20日記

中国メディア批評 独自コラム



 連載 変わりゆく香港「一国二制度」10年の実験
 激戦・台湾総統選2004
 ルポ コピー天国・中国


TV大手2局が本土企業傘下に メディアの“中国化”浸透

◆自由報道過去のもの

 北京五輪の馬術競技が開催されている香港では、愛国的な雰囲気がピークに達している。地上波テレビは北京五輪開幕を見込んで昨年末から地上デジタル放送がスタート。半年間で普及率9・7%(欧米や日本でも同5%前後)に達し、視聴エリアは香港の約70%をカバー、アナログに比べて約三倍の高画質になって評判も良い。

 五輪期間中、中国国歌が流れない日はないほどの金メダルラッシュだが、香港では二〇〇六年からゴールデンタイムに地上波テレビ局で中国国歌をCM形式で流すようになり、「愛国」という大義の前に香港メディアも中国本土との一体化、親中化が着実に進行している。

 新聞十八紙、テレビ局六局がしのぎを削る香港だが、一党独裁のメディア規制が敷かれる中国本土と比べ、自由な報道で知られる「メディア天国」と評されたのは過去の時代。特にTVメディアの変貌ぶりは返還前では想像すらできないほどだ。

 香港の二大地上波テレビ局、亜洲電視(ATV)と無線電視(TVB)はいずれも、ついに中国大陸の資本傘下に入ってしまった。二局とも、広東語、英語の二チャンネルを持ち、英語放送チャンネルでは標準中国語のニュースやドラマも増え続けている。

◆強まる中央政府支配

 一九五七年、香港で最初に設立され、当初、英国資本だったATVは昨年六月、筆頭株主が入れ替わり、中国の国政助言機関・全国政治協商会議の委員が総裁を務める企業が58%の株を取得し、中国政府系の中信集団傘下企業も約15%を取得。ライバル局のTVBに比べ、中国本土で発生するデモなどは簡単にしか触れず、中国寄りの報道姿勢が香港人に反発を受ける状態だったが、さらに中国色が強まった形だ。

 そして、香港の有名芸能人を次々と輩出し、娯楽番組では中華圏で最も充実している香港最大の民報地上波局TVBも、広東省の大手不動産会社・碧桂園(楊国強会長)が七月、TVB創業者でオーナーの邵逸夫氏(101)から主要なTVB株を百二十五億香港ドル(約千七百五十億円)で買い取った。

 TVBは自社でタレント養成所を持ち、チョウ・ユンファ(周潤発)やアンディ・ラウ(劉徳華)などを輩出。主催する香港小姐(ミス香港)出身の女優も多く、台湾や中国本土との芸能プロデュースでも大きな力を持っている。筆頭株主は映画会社ショウ・ブラザーズで、会長は同社創業者の一人、邵氏だった。ニュース報道でも中央政府に対して中立を保ち、中国本土でのデモやチベット騒乱などについても現地に特派員を送り、独自ルートからの客観報道に徹して香港視聴者だけでなく海外からも高い評価を受けている。

 オーナーの邵氏が高齢のため、次期オーナーの候補として、香港の親中派財界人や中央政府に近い中国本土財界人などの名が上がっては消えていたが、ついに事実上、中国本土企業に買収され、中央政府のメディアコントロールが強まることが確実視されている。

 TVBの買収に成功した碧桂園(カントリー・ガーデン)の楊会長は建設労働者出身のたたき上げの実業家で、広東省を中心に高級マンション、最高級別荘などを次々と販売。次女で執行役員の楊恵妍氏は米経済誌フォーブス(アジア版)が発表した〇七年の中国長者番付で一位となり、経営陣四人が四十位以内に入るなど、中国民営企業として俄然注目が集まっている。

◆本土での市場拡大へ

 香港メディアは、厳しいメディア規制が続く中国本土のメディアとは異なり、親中、反中、中立それぞれの立場から人権弾圧や民主化、権力闘争、少数民族問題などを報道、貴重な情報源となっている。中国共産党にとっても、情報を間接的に流して内外の反応を見る“観測気球”として利用でき、テレビ局大手との関係を深めることは香港の親中度を間接的にコントロールするための絶好のチャンスとなる。

 香港の大手紙の中では、部数最多の東方日報と親中カラーが強まる星島日報が〇六年から中国本土で新聞販売を開始している。香港メディアにとって中国政府に近い財界人がオーナーになることは、本土でのビジネスチャンスを広げ、生き残るために欠かせない手段となりつつある。(深川耕治=08年8月20日記)



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