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2012年3月17日記


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梁振英氏優勢、再選挙の可能性も 香港行政長官選挙
醜聞合戦、政治不信に危機感 中央政府

 3月25日に行われる香港行政長官選挙は何俊仁(アルバート・ホー)民主党主席(60)、唐英年(ヘンリー・タン)前政務長官(59)、梁振英(C・Y・リョン)前行政会議召集人(57)の3人が立候補し、本命である親中派が二候補に分裂して醜聞合戦の様相を呈している。梁氏優勢だが、同選挙に強い影響力を及ぼしてきた江沢民派の廖暉元香港マカオ弁公室主任の政治力が陰り、選挙やり直しの可能性もあり、泥沼化している。(深川耕治=2012年3月17日記)

親中派分裂、民主派は歓迎

 香港のトップを決める第四代香港行政長官選挙の立候補届け出は29日に締め切られ、民主派の何俊仁氏(推薦票188票)、江沢民前中国国家主席と近い親中派の唐英年氏(390票)、胡錦涛国家主席につながる団派(共産主義青年団派)に近いとされる親中派の梁振英氏(305票)が立候補を承認された。

 立候補を表明していた親中派の葉劉淑儀(レジーナ・イップ)新民党主席は150人の推薦を集められず、出馬断念。早くも香港ナンバー2の政務官ポストに意欲を示している。

選挙活動する唐英年(ヘンリー・タン)氏
 当初、同選挙で本命視されたのは江沢民氏率いる上海閥と関係良好な唐英年氏だったが、度重なるスキャンダルで支持率が低迷。先月16日、妻名義の邸宅に違法地下室を造っていたことが当局の立ち入り検査で発覚し、昨秋の不倫騒動、隠し子問題など、夫婦の不仲もあり、行政長官としての資質がないとの厳しい批判にさらされている。推薦人の中にはだれに投票するか明示せず、白票を投じる動きもある。

 一方、高支持率を維持していた親中派の梁振英氏に関しても、選挙対策本部メンバー3人や梁氏を支持する劉夢熊・全国政協委員らが出席した食事会に暴力団・上海仔幹部の郭永鴻氏らが出席し、暴力団の仲介で梁氏支持を取りつける密会となっていたとの疑惑が浮上。3月12日付の香港各紙で報じられ、関係者は弁解に追われている。

選挙活動する余裕の梁振英氏。しかし、暴力団との手打ち疑惑が浮上している
 同選挙が泥沼化する中、3月14日、温家宝中国首相は全国人民代表大会(全人代=国会に相当)後の閉幕記者会見で香港行政長官選挙について触れ、「公開、公正、公平の原則を堅持し、厳格に法に基づいて処理すれば香港は多くの香港人が支持する行政長官を選出できる」と述べ、高支持率による行政長官選びを示唆した。

 香港の時事評論家、林和立(ウィリー・ラム)氏は「中央政府は選挙やり直しを望まず、高支持率の梁振英氏の当選を望んでいる」と分析。だが、親中派2候補のスキャンダル問題で政治不信が高まれば、同選挙で今回投票する1193人のうち、一回目の投票で候補者に600票以上の得票がなく、二回目の決選投票で再び600票以上の得票がない場合は5月6日に選挙やり直しとなり、白票がどれぐらい増えるかによって選挙の行方が大きく左右されることになる。

 今月8〜13日に実施した香港中文大学による最新世論調査(1146人調査)結果によると、梁氏の支持率は45%で先月より12ポイント減、唐氏は23%で4ポイント増、何氏10%で1ポイント増となり、依然として梁氏の支持率が断然トップだ。

 「次期行政長官にだれがなると予想するか」との問いには「梁氏」と答えたのは前月比6ポイント増の41%でトップ。唐氏は2ポイント減の40%で2位となり、何氏は1ポイント減の33%となった。「選挙に最も影響を与えるのは何か」との問いには6割が「中央の意向」と答え、「再選挙になるか」との問いには「可能性大」が13%、「五分五分」と答えた人は41%となった。

 財界との癒着疑惑で支持率が急落する曾蔭権(ドナルド・ツァン)香港行政長官
 今選挙は、中央政府内での権力闘争の代理戦争が展開されているとの見方もある。

 1996年から始まった香港行政長官選挙は、だれを選出するかについて中国国務院香港マカオ弁公室主任が絶大な影響力を保ってきた。初代行政長官の董建華氏を選出する際は同主任だった魯平氏の後押しがあり、とくに15年間にわたり同主任だった江沢民前国家主席率いる上海閥と太いパイプのある廖暉氏は曾蔭権行政長官の選出において他候補を押さえて強く推薦したとされ、曾氏選出の際は梁振英氏の推薦を拒絶して押し切った経緯がある。

 今回も唐英年氏を推したが、政治力が弱体化し、胡錦涛国家主席率いる団派に近い梁振英氏が優位に立つ事態となり、「廖暉グループ瓦解」(16日付香港紙「蘋果日報」1面トップ)との見出しが踊る。重慶市党委書記を解任された薄煕来党中央政治局員をめぐる権力闘争劇と似通った部分があるというのだ。

 3月16日に行われた香港行政長官選挙の立候補者3人による公開テレビ討論で2003年当時の梁振英氏(左の発言を暴露する唐英年氏(右)=香港のテレビ映像より
 投票の8日前である3月16日、香港行政長官選挙に立候補した3人の公開テレビ討論会が開かれた。

 背水の陣に立たされた唐英年候補は、2003年7月1日、香港基本法23条をめぐり、香港で53万人の反政府デモが展開された後、同9日に香港立法会議場を取り囲む形で5万人が反政府デモが行われる直前、香港政府の幹部会議で梁振英氏が「暴動を防ぐ特別警備隊を結成し、催涙弾で応戦すべきたと話した」と秘密のベールに隠されていた会議の一部を暴露。

 梁振英氏は「事実のねつ造であり、人格攻撃だ」と応戦したが、当時の政府機密情報を選挙戦で公開すること自体が前代未聞であり、香港政界に激震が走っている。

 香港紙「りんご日報」3月16日付1面トップ記事は「廖暉グループ瓦解」
 親中派の候補が二人擁立されたこと自体が行政長官選挙で初めてだが、二人の候補が人差し指を突きつけ合って罵り合う事態に香港メディアは色めきだった。

 民主派は親中派の泥仕合について「梁氏を欽定(中央政府が暗黙の推挙)する動きは党人治港(中国共産党員が香港を治める)路線を浮き彫りにしている」(泡沫候補の何俊仁民主党主席)と痛烈に批判。親中派が分裂することで支持率が伸び悩む民主派が息を吹き返す好機と見ている。

 優勢が伝えられる梁振英氏について「中国共産党員ではないのか」とただし続けてきた民主派の重鎮、李柱銘(マーチン・リー)元民主党主席も「行政長官は特定政党の背景があってはならないことが法令で規定されている。たとえ中国共産党の地下党員であっても立候補を見送るべきだ」と述べ、党員疑惑を問い続けているが、梁氏は何度も公式に否定している。

 行政長官選挙が終われば、9月9日に4年に1度の立法会議員選挙(70議席)が控えており、親中派が二分されたことや曾蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官の財界癒着疑惑で世論調査による支持率が2月の前回調査より4ポイント低下の25%に低迷する中、政治不信が蔓延すれば、民主派に有利な選挙情勢になりかねない状況となっている。







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