中国企画記事 特選
2004年7月31日記

日本企業工場長、取り調べ後に釈放―中国深センの強姦未遂事件

刑事事件性なし、地元メディアは過剰報道 告発の中国人女性、不自然過ぎる周到さも
「自作自演」の疑いも浮上 反日感情の火種、どこまで
 中国広東省深セン市にある日本のプラスチックメーカー「株式会社コバヤシ(本社・東京都台東区)」の工場「新橋小林」(写真左下)社員寮で7月22日夜、工場責任者の日本人男性(58)が同工場で働く中国人出稼ぎ女性労働者(20)に対して強姦未遂を行ったとして同女性から告発された事件は、地元メディアの取材攻勢とは裏腹に公安当局の取り調べで事件性は薄いと判断、ようやく終息に向かいつつある。(深川耕治、04年7月31日記)

 「コバヤシ」は合成樹脂やプラスチック製品の製造・販売を行っており、香港に関連会社を置き、深センでも工場を稼働している。事件は7月22日夜、深センの社員寮の一室で本社取締役の工場責任者が中国人女性社員と二人だけでいたところ、突然、女性が騒ぎ出し、工場責任者の男性から強姦されそうになったとして地元公安当局に連絡したことに始まる。

 コバヤシ側の主張や地元紙などの報道によると、事件当時、同女性の弟ら中国人男性二人が社員以外は入れないはずの社員寮内で密かに待機、女性が騒ぎ始めて突然部屋に入り、一緒になって周到に猛抗議したという。告発後、女性は弁護士を通して中国メディアに自身の主張を一方的に述べ、地元メディアは事実確認しないまま、女性側の主張だけに絞って「外国人工場長による強姦未遂事件」として連日報道(写真右)。問題を複雑化させた。

 同女性の告発を受け、深セン市公安当局は工場責任者の日本人男性を拘束し、7月23日と24日の両日、取り調べを行い、24日、証拠不十分のまま、同男性は拘束を解かれた。事件性がないと判断されるまで出国が認められない同男性は市内の社員寮とは別の場所に待機し、公安当局の最終判断を仰いでいる。

 7月27日、「コバヤシ」東京本社の小林達夫社長が深セン入りし、同事件について遺憾の意を表明。地元メディアの取材攻勢の中、中国メディア向けに公開書状を出し、書状では事件を起こした工場責任者を停職処分とし、強姦未遂罪が確定すれば工場責任者を懲戒解雇することを明らかにしている。同社長は公開書状以外、地元メディアの直接取材を拒否し、一貫して沈黙を守った。

 当初、地元メディアは会社側が直接取材に応じない姿勢を非難、反日感情を煽る広州紙「南方都市報」(7月29日付)は日本人男性の副工場長を隠し撮りして掲載し、厳しいバッシングにさらされた。深セン紙「晶報」(7月26日付)は女性側の弁護士から入手した加害者とされる工場責任者のスナップ写真まで掲載したが、同紙や「深セン商報」など地元メディアは徐々に告発女性側の不自然な主張の矛盾点も指摘、“自作自演の仕組まれた事件”との可能性も示唆し始めた。

 「コバヤシ」の小林達夫社長は記者(深川)の取材に対し、「珠海の買春事件や昨今のサッカーアジアカップの反日感情などを考えると、事件が報道されたことは遺憾。こういう言い方はしたくないが、『計画的にはめられた』という感じ。事件自体は当人同士の問題とはいえ、苦慮している」と話している。

 同社側の調査では、事件発生時点で被害を受けたとされる中国人女性は社員寮内で突然騒ぎだし、室内の物品を自分で荒らして意図的に問題化させた形跡もあるとしており、用意周到な同女性の告発にも不自然な部分が多いとしている。女性側は二月にも同様の強姦未遂行為があったと主張してメディアを挑発しているが、同社側は「事実無根。時期を見て反論する」と慎重に事態を見守っている。

 加害者とされる男性は既婚者、告発した中国人女性は未婚者で、この点も中国側の感情を逆撫でしている。男女関係のもつれが反日感情の根強い中国メディアを巻き込み、中国進出の日系企業に大きなダメージを与えた形だ。今後は中国進出の日系企業が駐在員の私生活で厳しく身を律することが求められる教訓的な事件とも言える。

 広東省では珠海市で昨年起きた集団買春事件が国内の反日感情を高ぶらせ、西安の日本人留学生の寸劇事件なども問題化した。中国がホスト国の「サッカーアジアカップ」では重慶の日本戦での異様なブーイングなど反日感情が根強く盛り返してきている中、同事件が反日感情の火種となるか、地元メディアの報道姿勢を含め、憂慮される事態が続いている。

深センのセン=土ヘンに川