連載 「三通」の実験場アモイ 中台貿易の最前線ルポ 第5回



  連載 北京五輪と中国(全12回)
 連載 変わりゆく香港「一国二制度」10年の実験
 激戦・台湾総統選2004
 ルポ コピー天国・中国
 中華圏の魚食ブームを探る



免税でも規制多く苦慮も 台湾農産物の開放
割高感、品質でカバー困難?


 [メイドイン台湾」知名度優先、地道に宣伝

中埔果物卸売市場前にあるケ小平の写真=深川耕治撮影
 アモイ市湖里区の中埔果物卸売市場。全国各地から特産のフルーツが集まる巨大市場に隣接する屋根には、港湾都市・アモイを経済特区に指定した故・ケ小平氏の顔写真と揮毫(きごう)、江沢民前中国国家主席の顔写真が高々と掲げてられている。

 同市場には中国最大の台湾フルーツを売買する集散センター「アモイ台湾果物販売集散センター」がある。同センター内のビルの一角には、台湾の馬英九総統と台湾人経営者のツーショット写真や訪中した連戦国民党名誉主席夫妻の写真を大きく看板にして堂々と宣伝するケースもあり、従来、台湾指導者の宣伝を取り締まっていた中国では別格扱いだ。

 同センターの実務責任者である蕭宗華氏は「過去3年間、苦労して台湾農産品の中国大陸での認知度を高めるために努力を続けてきた。台湾が民進党政権であった時代は非常につらい日々だった」と馬英九総統への期待感を高めている。

アモイ台湾果物販売集散センターの一部には台湾の馬英九総統と経営者のツーショット写真や訪中した連戦国民党名誉主席夫妻の写真を巨大看板にする店も=深川耕治撮影
 蕭氏は台中市生まれで父親が湖南省出身の外省人(戦後、台湾に移民した人々)。馬総統と同じ湖南省出身の外省系の台商(台湾人ビジネスマン)なので馬総統にはひときわ親近感があるという。

 アモイ台湾果物販売集散センター(李至強理事長)は2002年2月、台湾農産物の流通売買を行う準備のための貿易会社としてアモイで商業登録され、2005年5月、台湾農産物が中国に輸入許可されたことで、国務院台湾弁公室が祝意を表す中、2006年4月に正式開業した。

 取り扱っている台湾の農産物は台湾産マンゴー、パイナップル、ライチ、バナナ、ウリ、カリンなど22種類。いずれも台湾各地(台南、台中、高雄、南投、屏東など約200の農業団体)から仕入れ、コンテナによる船便でアモイへ直送して税関検査を行った後、陸路で同センターに届けられる。当初は消費者への知名度がなく、割高感が先行したが、「時間をかけて台湾産の魅力を知ってもらうことから始める」(同センター)との戦略がじわじわと効果を上げ始めた。

 内覧会で北京、上海、天津、広東省、湖南省など10数省・市の卸売業者と契約し、全国配送。2005年の総売上は14万5000億元(217億5000万円)、2007年は37億元(555億円)に達して順調に収益を伸ばしている。

 免税のはずが手数料13%の現実

アモイの台湾果物販売集散センターにある台湾フルーツの販売コーナー=深川耕治撮影
 だが、免税を魅力に進出した台湾企業の中には強い不満の声もある。

 「さっぱり売れない。高雄から金門島に運び、アモイに陸揚げしてここに運ぶのに、結局13%の税金がかかり、細かい規制も多い」と話すのは台湾の高雄県青果公会理事長、林全和さんだ。林さんは同センター内に「泰吉水果行」という台湾フルーツを卸売買する店舗を開店し、高雄とアモイを半月ずつ往復している。台湾フルーツに自信と誇りを持っていただけに「大陸の客は安さで判断する。どんなに品質の良い台湾フルーツでも割高感があると、庶民に敬遠されてしまう」と肩を落とす。

 一方で、台湾の国民党幹部と密着連携し、海峡農業基金会を立ち上げ、中国の党幹部とも交流を重ねながらアモイ以外に北京にも台湾農産品ビルを建てて台湾フルーツを売り込む企業「台湾農之郷(黄一鍾社長)」もある。

アモイの台湾果物販売集散センターにある台湾フルーツの販売コーナー=深川耕治撮影
 台湾総統就任式の直前である5月18日、福建省福州では海峡両岸経済貿易交易会が開幕し、今年は台湾から21の市・県が出展して台湾の観光・物産を紹介した。同交易会は毎年開催される度に国務院台湾弁公室が新たな台湾との貿易優遇策を発表。2005年には台湾の果物類を免税でアモイなど特定地域で流通販売することを認め、今年は福建省内の四港を新たに台湾向けの小額貿易港に指定した。国民党、中国共産党の双方にパイプやコネがある「台湾農之郷」のような企業は事前に情報を入手し、即応することでビジネスチャンスが広がる。

 馬英九総統は台湾農産物を保護するために「台湾の農産物は中国に売るが、中国からは労働者も農産物も受け入れない」と公約しているが、中台双方が世界貿易機関(WTO)に加盟した自由貿易の原則から見れば「中国産農産物の台湾への流入は不可避」(中国社会科学院台湾研究所経済室の孫升亮主任)。土地が狭く、コスト高の台湾農産品は中国の農産品が流入すれば負け組になるばかりか、食の安全も懸念される。巨大な中国市場は台湾にとって商機とリスクが表裏一体のブラックボックスだ。
(中国福建省アモイ・深川耕治、写真も=08年6月8日記)

※許可なく写真の二次使用は禁じます




中国株スーパーバブル攻略法!