連載 「三通」の実験場アモイ 中台貿易の最前線ルポ 第2回



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大金門島と1日10便の高速船
7月の航空直行便に熱い期待



 直航解禁で「小三通」色あせるか

 
福建省、広東省など中国各地で働く台商(台湾人ビジネスマン)が大きな荷物を持って次々と集まってくるアモイ市中心部の和平港。ここは小三通(台湾が支配する大陸沿岸の金門、馬祖両島に限定した中台間の通信、通商、通航)の拡大で四月以降、台商やその家族に限定したアモイ−台湾領大金門島間の高速船が一日十便運航(所要時間約一時間)されて活況だ。

 二〇〇一年一月、台湾の陳水扁政権(当時)は小三通を部分解禁し、台湾領金門島と馬祖島の住民のみ大陸往来を許可したが、経済効果は微々たるものだった。しかし、四月一日以降、中国との往来枠を台湾全土の台商と家族に広げたことで最近では、福建省泉州・石井港〜台湾領大金門島・水頭港間(所要時間約1時間半)や福建省福州・馬尾港〜台湾領馬祖島・福澳港間(同二時間)でも高速船を増便運航。中国で働く台商にとって香港やマカオ経由で迂(う)回する煩雑さがなくなり、運賃も安い「生活の足」となっている。

福建省アモイの和平港で台湾領金門県からの高速艇が到着し、港から出てくる台湾人ビジネスマンや家族ら=深川耕治撮影
 「中華民国」として独立しているとの認識に立つ台湾では一九八一年以降、台湾を自国の一地域としか認めない中国に対して三不政策(接触せず、交渉せず、妥協せず)をとり、原則として三通(中台の交通、通商、通信の直接往来)を禁じてきた。

 そのため、台湾と中国を往来する手段は、香港やマカオを迂回するルートのみ。香港やマカオ経由の航空便の場合、台北からアモイへ片道所要時間約八時間、交通費千七百元(二万二千五百円)かかっていたが、小三通の拡大で台北から金門島まで航空便で行き、金門島から高速船を使ってアモイへ向かえば片道四時間、七百元(一万五百円)だ。

 近い地の利生かし商機狙う

 高速船でアモイ入りした台湾人ビジネスマンやその家族らは大きな荷物を抱えながら思い思いにタクシーや車に乗り込む。広州市内で働く台北出身の林長祐さんは「馬英九氏が総統になれば直行便が増えてさらに便利になるだろう。台商にとっては環境が改善され、中台貿易がさらに活性化すると確信している」と期待を込める。

 航空直行便が就航すれば、台商の大切な「生活の足」は船から空の便に大きく移行し、高速船の利用度は以前よりも低くなる。「直行チャーター便が解禁されれば、距離の近いアモイ−台北間のチケットが一番安いし、所要時間も約一時間。アモイの旅行業者にとって国内観光客の台湾ツアーが増え、一大ビジネスチャンスだ」(アモイ中国旅行社)と見通し、台商よりも大陸観光客の台湾観光収益にターゲットを絞っている旅行会社も多い。

1日10便が運航している台湾領金門県からアモイ和平港に停泊する高速船。金門島からアモイまで所要時間は約1時間=深川耕治撮影
 台湾交通部(国土交通省)の発表では七月解禁予定の中台間週末直行チャーター便は週三十六便。台湾側の発着予定空港は八カ所(台北松山、桃園、台中清泉崗、高雄小港、花蓮、台東、澎湖馬公、金門の各空港)=図参照=、中国側は北京、上海、アモイ、広州の四空港が候補地として見込まれている。

 中国人観光客を乗せた直行便が最初に台湾に到着するのは七月四日。台湾紙の報道では「一つの中国」をめぐる政治問題を棚上げしたい中台双方は「中国大陸地区住民が台湾地区観光に赴く」との形式で非公式合意し、台湾の対中民間窓口機関・海峡交流基金会の江丙坤理事長訪中で正式合意すると見られている。

 中国側は「官冷民熱」氷解

福建省アモイの和平港で台湾領金門県からの高速艇が到着し、港から出てくる台湾人ビジネスマンや家族ら=深川耕治撮影
 四月時点で中台間の週末チャーター直行便の七月解禁は台湾側の一方的な確定で中国側は未確定状態。これが台湾与党・国民党の呉伯雄主席の訪中、五月二十八日の胡錦濤中国国家主席との国共トップ会談でチャーター直航便と中国人観光客の台湾観光受け入れ枠拡大は基本合意され、大きく前進。台湾の海峡交流基金会と中国の対台湾窓口機関・海峡両岸関係協会の対話再開、事実上の政府間協議で本決まりになる。

 八年続いた台湾の民進党政権時代、台湾側の勇み足な態度に中国側は三通解禁に対して「官冷民熱(官僚は冷ややか、民間は熱望)」状態が続いたが、八年ぶりの国民党の与党復帰、対中急接近で急速に氷解する動きだ。だが、そこには必然的な“副産物”として様々な課題や問題点が浮かび上がってきている。(中国福建省アモイ・深川耕治、写真も=08年6月5日記)

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