連載 「三通」の実験場アモイ 中台貿易の最前線ルポ 第4回



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金門県長は中台経済統合派
大陸から2000人留学生受入れ構想


 馬英九総統との合成写真も 金門島クルーズ人気


アモイからの小金門島クルーズで小金門島の目の前で記念撮影する中国人観光客たち=深川耕治撮影
 中国各地からアモイに訪れた観光客が必ず出向こうとする船旅は、台湾領小金門島を間近に見ることができる約2時間の金門島観光遊覧船クルーズ(金厦海域観光遊覧)だ。

 江蘇省南京から両親を連れて来たという男性(32)は「母が福建省泉州の出身。台湾の指導者が国民党になって両岸(中台)が平和に交流できる時代になるか、この目で確かめたかった」と声も弾む。

 アモイ港から出港するクルーズ船は毎回、団体客でほぼ満席。海上からアモイの高層ビルや朱色の屋根で統一された南欧風の建物、コロンス島の鄭成功像、最新鋭艦艇が横付けされて「高レベルの『海上猛虎』チームを建設しよう」と掲げられた横断幕のある海軍基地(南京軍区)が見える。

小金門島に掲げられた台湾側のスローガン「三民主義が中国を統一する」=深川耕治撮影
 南下した船は30分ほどで台湾が実効支配する小金門島のわずか100メートル手前で停泊。島には「三民主義(孫文が提唱した民主、民生、民権)が中国を統一する」と刻まれた巨大スローガンがあり、中華民国旗の掲揚された監視塔、迷彩色の歩哨所も一望できるが、人影もなく、不穏な動きは全く感じられない。アモイから巡遊する他の観光船二艘もゆっくり往来している。

 平和の象徴、三通で“非武装化”

 「もっと笑って。イー、アール、サン(1、2、3)!」。船上デッキでは金門島前で撮影スタッフがデジタルカメラで若い女性2人組や10組ほどの家族の撮影をしていた。下船前、できあがった写真を見た江蘇省出身の二十代の女性らは「馬英九はかっこいい」と興奮気味。船上スタッフは「台湾新指導者・馬英九が一緒にいる合成写真が最近の流行。パソコンで簡単にできるし、政府も厳しく言いません」と小声で話す。

 江西省南昌市から視察に訪れたという同市政治協商会議委員(58)は「あくまで個人的意見」と前置きしながら「金門島を見れば、ご覧の通り、両岸(中台)が面子で張り合う時代は終わり、果実を取る時期に入ってきた。台湾指導者が馬英九になって両岸関係は経済貿易から大きく変わっていくだろうが、『一つの中国』をめぐる政治問題の進展は困難だ」と話す。

 台湾が実行支配する金門島側も大きく様変わりした。

アモイからの小金門島クルーズで記念撮影する中国人観光客=深川耕治撮影
 中台間の砲撃戦があった台湾領の金門島は1958年8月23日から40数日間続いた砲撃で40万発の砲弾が島内に撃ち込まれ、ピーク時は台湾軍兵士10万人が駐留ていたが、1992年に軍隊を大幅縮小。今では島内の駐留軍兵士は2000人超にまで激減している。大きく分けて大金門島と小金門島からなる金門県は島の戸籍人口が約8万人(うち長期居住者約5万人)。

 金門砲撃戦で軍人が闊歩していた島内はピーク時で映画館が17カ所あったが、現在は一カ所のみ。軍に依存する経済復興しかなかった金門島は軍の大幅縮小で経済復興は望めなくなった。そこで島民が望みをかけたのが小三通(台湾が支配する大陸沿岸の金門、馬祖両島に限定した中台間の通信、通商、通航)の段階的解禁。金門島、馬祖島に限り、中国人観光客を受け入れることが許可され、観光復興に望みをかけた。しかし、実際は福建省籍の中国人だけが延べ2万8000人、金門島観光に訪れたのみだ。

 不動産高騰狙う両岸住民 台湾への投機にも積極的

李●(火ヘンに主)烽金門県長
 台湾の李●(火ヘンに主)烽金門県長(県知事)は「金門は中台の特別区であり、アモイの後背地。金門の前途は台湾にはなく、大陸にある」と断じる。李県長は台湾立法院(国会)内では数少ない中台統一を党是とする新党に所属。大陸との経済統合による「大中華経済圏」を主張している。台湾本島ならば、ごく少数の急進統一派だが、島の復興を第一優先する地元指導者としてはアモイを対岸とする中国大陸は台湾本島以上の運命共同体と映る。

 三通解禁後は金門技術学院(2000人在籍)に大陸の留学生2000人を受け入れ、台湾各地の大学の分校も建設して学生交流を活性化させる構想を準備している。カジノ建設構想にも熱心だ。金門空港は年間100万人が往来しているが、直行便の発着空港に指定され、新空港が開港すれば年間450万人が往来できると皮算用している。

 不動産投資に熱心な金門県住民の大半はアモイの不動産を購入後、他者に貸し出し、毎月の賃貸収益は1億元(15億円)に上る。アモイの不動産関係者は「中台直行便が解禁されれば台湾からアモイへの不動産投資が急増するだろう。最近はアモイ市民が台湾の不動産投資のノウハウを教えてほしいとの問い合わせが多い」と話しており、中台双方の不動産投資への期待は両政府の対話再開を待たず、高まる一方だ。(中国福建省アモイ・深川耕治、写真も=08年6月7日記)

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