連載 「三通」の実験場アモイ 中台貿易の最前線ルポ 第6回



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 ルポ コピー天国・中国
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平和装う「統一」への野心 「国共合作」の将来
同族同根の文化圏生かす


 大嶝島民、実は民兵兼務

大嶝島にある英雄三島戦地観光園。「一国二制度統一中国」のスローガンが掲げられている=深川耕治撮影
 アモイ郊外の大嶝島(だいとうとう=アモイ市翔安区)。小三通(台湾が支配する大陸沿岸の金門、馬祖両島に限定した中台間の通信、通商、通航)の実験場である「大嶝島小額貿易対台交易市場」で国内観光客に湧く場所から車で約15分の北岸に英雄三島戦地観光園(遅浩田元国防相が命名)がある。

 「一国両制統一中国」(香港、マカオで適応する高度な自治「一国二制度」を台湾にも導入して中国を統一する)の大きな文字で描かれた「終極統一」(最終的に中国が台湾を統一する)スローガンはいまも健在。干潮時はここから小金門島までわずか2.5キロ、満潮時でも5キロの距離しかない。

大嶝島にある英雄三島戦地観光園。「一衣帯水」「一国両制(一国二制度)」のスローガンが書かれている=深川耕治撮影
 1953年、58年、60年の3回、金門島とアモイの間で砲撃戦が展開され、よく知られているのは1958年8月23日に中国側が台湾に砲撃を開始した砲撃戦だ。この時は40日以上にわたって毎日4万発の砲弾がアモイから金門島に砲撃され、金門島側も反撃。三度の砲撃戦で中国側は150人以上が死亡し、同観光園には犠牲となった「英雄」らの銅像が建つ。

 「元来、大嶝島の島民は国民党の兵士が多く、大半が島の民兵だった。金門砲撃戦はいわば親戚同士の間柄が闘った悲劇」と陳と名乗る島民(73)は語る。戦後、島民は共産党支持となり、入党して民兵として砲撃戦を闘った。「いまや時代は変わった。小三通で金門島の親戚が家に訪問し、われわれも金門島を観光できる経済交流時代になった」と同島民。アモイの旅行業者は「いまでも地元の人々が干潟で潮干狩りをしたりしているが、実は民兵を兼務している。戦時に対応する措置のまま警戒を緩めていない」と裏事情を説明する。

 非武装貿易地帯と化すアモイ

アモイ島南西部はトンネルの突貫工事が進む=深川耕治撮影
 福建省アモイ周辺と台湾は密接な地縁関係にある。台湾の本省人(戦前から台湾に住んでいる人や子孫)の原籍は七割から八割がアモイ、●(サンズイに章)州、泉州など福建省南部。台湾の選挙で族籍問題が焦点になるたび、「国民党は外来政権」と批判する民進党が、本省人の原籍実態を突かれると沈黙するのはこういう地縁事情があるからだ。

 1980年に経済特区となった戸籍人口160万人(外来人口を含め230万人)のアモイも台湾も同じ系列の?南語(びんなんご=福建省の方言)を話し、気候や生活習慣も似ている一衣帯水の同一文化圏。金門砲撃戦で“近親憎悪”が強まったが、半世紀を過ぎ、小三通が拡大するアモイの大嶝島は平和を象徴する非武装貿易地帯のようなエリアと化しつつある。

 アモイ島南西部の海岸沿いにあるアモイ台湾民俗村。テーマパーク内にある金門列島を一望できる山頂に登ると、隣接する山上には台湾側を監視する歩哨所やレーダーがあるのに人影はない。山の麓では大型トラックが往来し、大規模なトンネル突貫工事が展開されていた。アモイ島と大嶝島を海底トンネル(2009年9月開通)で結び、アモイ市中心部であるアモイ島西部から最短距離(車で20分)で結ぶための工事だ。

 「三通が解禁され、政治問題が先鋭化しなければアモイと金門島を海上で結ぶ金厦大橋構想も現実味が増す。アモイの道路整備はその外堀を埋める準備」(金門島への旅行ツアーを扱う旅行代理店員)。中国政府は台湾との政治問題を棚上げし、三通解禁による急速な経済統合を進めることが「中台統一の第一歩」と見ている。

 軍事的「漁夫の利」米国に

 その一方で中国の台湾向け弾道ミサイルの数は増え続け、台湾全土が射程圏に入っている(図参照)。台湾国防部(国防省)は08年5月、今年の国防白書で中国が台湾の対岸にあたる南京軍区と広州軍区に合計1300基超の短距離弾道ミサイルと巡航ミサイルを配備していると指摘。国民党の呉伯雄主席が五月末に訪中した際、中国指導部はミサイルの数を削減する意向を示したとしているが、時期や削減数について言及していない。

 米国防総省が発表した中国の軍事力に関する年次報告によると、中国の台湾向け弾道ミサイルは九百九十発から千七十発で、射程や精度、弾道性能が改善されている。右手で固い握手を交わし、左手で銃を向け合っている中台の構図は経済交流だけでは変わりそうにない。そこには、経済統合による新たな“国共合作”を中国主導で進め、統一への野心と悲願は着々と進める中国側の本音がある。

 香港シティ大学の王貴国教授は馬英九政権発足後の中台軍事関係について「中台は不統不独(統一も独立もしない)関係を維持する環境が整い、米国は中台の軍事バランスを維持するための仲介役としての最大メリットを取る。中国の軍事力増大に対抗する軍事バランスを取るために米国は台湾に武器購入増加を要求し、最新戦闘機F16C/Dを売り込んで米国の軍需産業を十分満足させる結果をもたらしている」と分析する。

 米国通の馬英九政権の誕生、中台貿易の活性化で最も軍事メリットがあるのは台湾への武器供与が増える米国ということになる。(中国福建省アモイ・深川耕治、写真も=08年6月10日記)

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