中国企画記事 特選

2004年8月30日記

国民の健康増進と無関係な五輪熱 中国
メダル獲得への資金膨れ上がる/新たな政治権力醸成の懸念も

 アテネ五輪では米国に次ぐ金メダル獲得数(三十二個)=下表参照=だった中国の躍進が目立った。四年後の北京五輪に向けて大きな弾みがついた形だが、国威発揚を目的にメダル獲得への資金投入が膨れ上がり、もはや国民の健康増進とは無関係な方向へ向かっている。(2004年8月30日記、深川耕治、写真も)


 近代五輪の父、国際オリンピック委員会(IOC)の二代目会長を務めたピエール・ド・クーベルタンが語ったとされる「参加することに意義がある」との五輪精神とは裏腹に肥大化、商業化の加速が批判されている昨今の五輪。だが、アテネ五輪後半の金メダルラッシュで商業効果を改めて“覚醒”させたのは中国だった。

いまだにマルクス・レーニン主義を標榜する社会主義国家・中国にとって五輪で金メダルを獲得することが「挙国体制」を敷く最大目標であり、その具体策を一括管理するのは国家体育総局だ。同局科学研究所の李力研・研究員が発表した資料によると、国家体育総局が八八年のソウル五輪(金五個)のために投じた事業費は年間十億元(一元=十三円)の計四十億元、九二年のバルセロナ五輪(十六個)は百二十億元、シドニー五輪(二十八個)では二百億元。

 今回のアテネ五輪では少なくとも二百億元が事業費として投入され、開幕当初は「金メダルの最低目標は二十」と控え目だった中国は最終的に三十二個の金メダルを獲得し、金メダリスト一人当たり約六億元を事業費として注ぎ込んだ換算となる。総メダル数は中国を凌いで二位(九十二個)ながら金メダル数では三位(二十七個)とふるわなかったロシアが今回、金メダリスト一人当たり三千万元しか注ぎ込んでいないことに比較すると、中国はロシアの二十倍以上の資金投入額だ。

 事業費額に比例して金メダル獲得数が着実に増えている中国は、メダリストへの報奨金を毎回つり上げ、アテネでは金獲得者が前回より五万元増の二十万元、銀が十二万元、銅八万元でメダリストへの待遇がさらに良好となったように見える。

 アテネに派遣された選手団を含む中国代表団約一千三百人は一人当たり毎年四百万元の育成費用が投じられた計算だが、これは中国の戦闘機「殲8」最優秀パイロット一人を養成する額(百万元)をはるかに凌ぐ巨額だ。しかも、選手の報奨金に比べて資金を吸収しているのは行政管理部門であり、国家体育総局の政治権力は政治・経済、軍事部門に比べて増大しているのが特徴でもある。

 しかも、国家体育総局に投じられる巨額の事業費は国民の税金から徴収されたものでありながら、一般国民のスポーツ振興、健康増進とは無関係に金メダリスト養成費のみに投じられている現実がある。

 九〇年代、国家体育総局は気功集団「法輪功」と蜜月時代があり、気功を健康増進に取り入れる名目で法輪功を利用した時期もあったが、江沢民前政権時代、非合法組織の烙印を押した瞬間、切り捨てた。“五輪ビジネス”が愛国精神鼓舞と直結する政治力を持つ社会主義国特有の新たなスポーツ権力は国家体育総局の歪んだ利権増大による党内の権力バランスにも影響を及ぼし始めている。この点は西側諸国には決して起こりえない社会主義国家の特質だ。(2004年8月30日記、深川耕治、写真も)

写真=広東省広州市では2008年の北京五輪に次ぐ2010年のアジア五輪開催地決定に沸いている=深川耕治撮影


【2004年アテネ五輪メダル獲得数一覧(10位まで)】

国名 金メダル 銀メダル 銅メダル 合計
米国 35 39 29 103
中国 32 17 14 63
ロシア 27 27 38 92
オーストラリア 17 16 16 49
日本 16 12 37
ドイツ 14 16 18 48
フランス 11 12 37
イタリア 10 11 11 32
韓国 12 30
イギリス 12 30