台湾関連情報

2011年4月21日記


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世代交代に腐心 曲がり角に立つ台湾の尖閣防衛運動
尖閣周遊クルーズ中止へ 香港発台湾経由、1200人募る
日本の震災、国際非難避ける

 
尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐり、領有権を主張する香港、台湾、中国の活動家らが抗議活動を開始して40周年を迎え、香港で今年1月に世界華人保釣連盟が発足。同連盟は6月17日、尖閣諸島近海を大型客船で周遊する計画を進め、1200人規模の参加を募っていたが東日本大震災の弱みにつけ込むとの国際的非難を避けるため中止を決定。昨年9月に発生した尖閣海域での中国漁船衝突事件以来、中台当局から海上での抗議を封じ込まれてきたが、圧力をかわす腐心の策は国際世論の厳しい批判の前に露と消えそうだ。(深川耕治=2011年4月21日記)


民間活動40周年で新戦略 中国政府の圧力かわし腐心
地道にシンポで計画練る 資金や航行阻止で衰退化も


1971年、全米各地で展開された中国人らによる尖閣諸島の日本領有に抗議するデモが1月29日と4月10日に行われた。当時の貴重な写真
 1971年1月29日、ニューヨークの国連本部前やワシントン、シカゴ、ロサンゼルスなど6都市で米国に留学している中国人ら約2000人余りが尖閣諸島(中国名・釣魚島)の日本領有に抗議するデモを行い、同年4月10日に米国4都市で中国人4000人がデモ行進、同年7月7日、香港のビクトリア公園で約1000人が参加した抗議集会で警察と激しい衝突が起こって40周年目を迎えた。

 これを機に今年1月2日、香港では香港やマカオ、台湾、中国大陸、米国やカナダの華人ら6カ国・地域の民間団体でつくる「世界華人保釣連盟」が発足。同連盟会長には長年、台湾で保釣(釣魚島を日本から防衛する)活動を続けてきた黄錫麟氏が就任した。台湾で中華保釣協会の秘書長を歴任し、尖閣諸島へ漁船で抗議行動を展開し続けた政治家だ。

2011年1月2日、香港で結成された世界華人保釣連盟の設立風景
 同連盟は、尖閣諸島が沖縄県の一部と明記する日米の沖縄返還協定が1971年に調印された6月17日を「釣魚島の日(中国民間保釣日)」と定めて毎年活動を行うことを発表。同連盟の設立目的は「最近、民間の保釣活動に対して中国政府の様々な圧力が強まっている。保釣活動40周年を節目に新たな活動方針を打ち立て、政府の圧力を打破して保釣の目標に一歩でも近づけたい」との強い危機感がある。

 中国では当局のコントロール下にある中国民間保釣連合会があるが、形式的な活動のみ。保釣活動のリーダーだった北京在住の童増氏は監視付きの軟禁状態が続く。中国当局が最も憂慮しているのは、保釣運動が反日運動と同様、当局のコントロール下を離れ、統制が効かなくなって反政府運動に転じる可能性があることだ。福建省アモイで当局の干渉を拒む李義強氏らが中心となって国内の民間活動を束ね、台湾や香港とも連携しようとしているが、当局の厳しい監視が強まっている。

台北の世新大学でのシンポジウムに参加する世界華人保釣連盟の黄錫麟会長
 世界華人保釣連盟が香港で設立しながらも組織のトップは台湾人が就任することから見ても、中国政府の圧力にできるだけ屈しない人事配置となっている。

 黄会長は外省人2世で、外省人の父親(中国安徽省出身)から領土問題について強い感化を受け、保釣活動に身を投じるようになった。1996年以降、11回にわたって台湾から尖閣諸島へ出航した保釣活動家だ。黄氏の主張は、歴史的に見て釣魚島が台湾宜蘭県所有の島であり、同海域は台湾漁民が活動していた生活圏でありながら漁業権を奪われている状態を返還せよ、ということだ。

 台北県永和市の市民代表(議員)となり、宋楚瑜氏が率いる親民党所属の政治活動を展開。台北県が市町村合併して新北市に格上げされて初めての新北市議会議員選挙(昨年11月)に立候補したが、当選ライン(2万票)に遠く及ばず、落選(5136票)した。

 台湾では黄氏よりも先に保釣活動を始めて尖閣諸島に上陸した経験のある金介寿氏が国民党所属で新北市議選に立候補し、同じ永和区でトップ当選。黄氏は保釣活動を眼目とする政治家としては世代交代による憂き目にさらされている形だ。

3月27日、香港保釣行動委員会や民主党などが共同で開催した保釣活動40周年をテーマにしたシンポジウム。世界華人保釣連盟の黄錫麟会長も参加した
 世界華人保釣連盟は設立当初から6月17日にチャーターした客船で尖閣諸島近海へ航行する活動を計画。1200人を目標に香港、マカオ、台湾、中国本土から乗船参加者を募り、香港から出港して台湾北部の基隆港を経由し、尖閣諸島に近づいて戻る内容だ。あくまで平和的に尖閣諸島を海上から見学し、上陸はしない周遊クルーズにする予定で準備を進めていたが、大型客船のチャーター問題や航行許可が香港や台湾当局から下されるか大きなネックとなっていた。昨年、香港や台湾で漁船を出航させようとした保釣活動家が当局に阻止され、圧力はさらに高まっている。

3月27日、香港保釣行動委員会や民主党などが共同で開催した保釣活動40周年をテーマにしたシンポジウム。世界華人保釣連盟の黄錫麟会長(左から2人目)も参加した
 香港では3月27日、香港保釣行動委員会や民主党などが共同で保釣活動40周年をテーマにしたシンポジウムを香港バプテスト大学(香港浸会大学)で開催。黄錫麟氏や香港民主党の何俊仁立法会議員、中国の政策助言機関である全国政治協商会議(政協)委員の劉夢熊氏、香港の民主活動家の曽健成氏らが日本の震災をふまえ、今後の活動計画について活発に討議した。

 4月9日から2日間、台北の世新大学でも「保釣40周年」をテーマにシンポジウム(同大と台湾清華大学、中華保釣協会の共催)が開催。初日冒頭で同大の頼鼎銘校長が挨拶し、資料展を同時開催するなど台湾では大規模なものとなった。しかし、参加者は40年前に活動した「老保釣」(60代以降の保釣支持者)が大半で「新保釣」と呼ばれる20〜40代は指折り数えるほど少数。台湾の老保釣は海外留学組の知識階層が大半で学術的だが社会対話に乏しく、草の根運動への広がりがなかったことが原因だ。

台北の世新大学での保釣運動40周年をテーマにしたシンポジウムを主催した林孝信世新大学客員教授。1971年の保釣運動に参加した老保釣の1人
 同シンポでは「学術討議だけでなく写真巡回展を行って社会に根ざした活動にすべきだ」(主催者の林孝信世新大学客員教授)、「映画監督たちの物心両面の支援で映画やテレビドラマ、ドキュメンタリーで映像による地道な啓蒙で若年層に浸透する準備がある」(劉虚心氏)など若年層や大衆啓蒙を目指す意見が出た。抗議活動に必要な漁船買収にも高額な資金が必要で、従来のボランティア的な資金繰りでは保釣活動が弱体化し、尻すぼみになることへの危機感をにじませている。

 3月11日の東日本大震災や福島原発事故を考慮し、世新大学でのシンポ終了日の4月10日、世界華人保釣連盟の黄錫麟会長は6月17日に計画していた大型客船での尖閣諸島への出航計画中止を発表。「すでに3月末時点で多くの同志が共通意見に達していた。日本が深刻な危機に直面している時、弱みにつけ込んで保釣活動を行えば国際的な非難を浴びる」と話している。