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2013年4月21日記


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“SARS再来”に戦々恐々

鳥インフル拡大で香港・台湾

 3月から中国で発生した鳥インフルエンザ(H7N9型)は上海周辺の中国東部だけでなく北京や河南省などにも飛び火し、じわじわと拡大を続けている。渡り鳥による感染は回避できず、人から人への感染の可能性が高まっている中、労働節(5月1日)から始まる連休で大量の中国大陸の人々が押し寄せる香港では、新型肺炎(SARS)の再来になりかねないと戦々恐々としている。(深川耕治=2013年4月21日記)


人から人へ感染の可能性も

連休控え流入を懸念

 H7N9型ウイルスの感染者数は4月18日現在で87人、そのうち18人が死亡、6人が治癒している。内訳は上海市が32人(11人死亡)、江蘇省21人(3人死亡)、安徽省3人(1人死亡)、浙江省27人(2人死亡)、北京1人、河南省3人の2市4省。

 H7N9型ウイルスは、当初の発生地域である上海周辺の中国東部だけでなく首都・北京や中国中部の河南省に拡大しており、当局は感染場所と疑われる市場にある数千羽の家禽類を殺処分し、生きた鳥を扱う市場を閉鎖するなど対応に追われている。

 18日、世界保健機関(WHO)は「感染者の約4割が家禽類との接触がなく、ウイルスの感染源は特定できていない。調査を拡大し、突き止めていく」とし、少なくとも2家族で家族間感染が疑われているため、「限定的な人から人への感染の可能性はある」と指摘。中国疾病予防制御センターの曽光首席専門官(流行病学)も「感染者の約40%が家禽類に接触した形跡がない。どうやって感染したのか謎だ」と話し、正確な感染源は依然不明のままだ。

 渡り鳥による国境を越えた感染拡大も周辺諸国・地域にとって脅威だ。鳥類はH7N9型ウイルスに感染しても症状がほとんど出ず、カモやガチョウ、ハトなど野鳥で流行し、農村部の家禽が感染しても感染ルートが気付かれにくい。上海や北京など大都市には市場経由でウイルスが運ばれて来た可能性が高い。

 上海周辺の中国東部で感染が拡大していることに警戒を強めているのは台湾。1990年代から上海市近郊への大規模投資が始まり、上海に滞在する台湾人は30万人以上に上る。特に台湾の外省人(戦後、台湾に移住した人々)には浙江省出身者が多く、台湾と中国間での移動が多いため、台湾衛生当局は疑似感染を含め、検疫強化している。

 中国広東省に接する香港も悪夢の再来を危惧している。

 中国広東省が発生源である2003年の新型肺炎大流行では、全世界で約8000人が感染、そのほぼ1割が死亡。今回のH7N9型ウイルスでの感染死亡率は約20%で新型肺炎よりさらに高い。現段階では広東省内での感染はないが、中国東部からの旅行客、ビジネスマンの香港への出入りには神経を尖らせている。

 香港では観光シーズンに突入し、中国大陸から流入する恐れのある鳥インフルエンザの防疫に懸命だ。昨年の5月1日からの連休期間、香港の旅行客数は34万人で今年も昨年とほぼ同数の観光客を見込む。税関では通常業務に加え、香港食物衛生局は100人以上の職員を現場に派遣して体温検査を行う予定だ。新型肺炎の教訓を活かし、香港政府は中国大陸からの観光客に限らず、各ホテルや観光バスなどの衛生対策強化を観光業界に指示している。

 感染が拡大しているH7N9型ウイルスは大部分の感染者が家禽類を取り扱う市場と関わりがあり、香港への感染流入を危惧する何栢良香港大学感染伝染病センター総監は「家禽類を扱う業者や市場で鶏を買う市民は感染リスクが高い。市場での生きた鶏の売買を停止し、人を鶏と隔離すべきだ」と香港政府当局に提案している。

 何総監は「輸入家禽類の検疫を強化しても野鳥など渡り鳥から香港に流入する可能性はあり、今年下半期か年末には香港でも家禽類や人への感染が発生する可能性が高い」と分析する。

 香港では1日25万羽分の鶏を食しているが、そのうち生きた鶏を扱う割合は非常に少ない。何総監は「生きた鶏の売買を暫時停止し、冷凍処理された鶏肉のみで対応すれば感染防止につながる」との対処法を打診するが、家禽業界は猛烈に反対。香港の林鄭月娥政務長官は「現時点で生きた鶏の売買停止論議は時期尚早」と判断している。

 感染者を隔離入院治療している杭州医院を視察した香港大学微生物系の袁国勇教授は「初期病状は新型肺炎に酷似している。感染者の大半は成人で児童の病状は比較的軽度である点は1997年に香港で発生したH5N1型インフルエンザとも似ている」と話している。

 鳥インフルの影響で中国各地の鶏肉料理専門店は大打撃。重慶市内で鶏、カモ、ガチョウ、ハトなどを扱う専門料理店では売り上げが7、8割下がり、店名から「鶏」を外すなど青息吐息だ。

 大型チェーン店では「当店で食事後1カ月以内に鳥インフルエンザに感染したことが確認された場合、治療費全額の他に60万元(1元=15円)の賠償金を支払います」と告知して顧客に保険加入の署名を求めたが、大半が拒否しているという。

 湖北経済学院の食堂ではリスク回避のため、鶏肉や鶏卵のメニューを豚肉などで代用するなど一風変わったメニューに様変わりしている。