深川耕治=2008年6月15日記

中国メディア批評 独自コラム



 連載 変わりゆく香港「一国二制度」10年の実験
 激戦・台湾総統選2004
 ルポ コピー天国・中国



天安門事件追悼集会を地震追悼部分のみ報じたCCTV 中国

間接的な「再評価」の可能性も


◆急接近する中国と台湾の近未来

 中台関係が大きく動き始めている。

08年6月4日夜、香港島ビクトリアビクトリア公園で行われた天安門事件追悼キャンドル集会=深川耕治撮影
 6月13日、中台窓口機関トップ同士が中台を結ぶ週末チャーター直行便の運航と中国人の台湾観光全面解禁など経済分野での協力強化をうたった合意書に調印した。両機関の9年ぶりの対話再開は政治問題を棚上げした「中台急接近」という形でスタートし、台湾では「大陸(中国)に呑み込まれる」との危機感も募る。

 中台関係に関する連載ルポのため現地取材し、上海の台商(中国で働く台湾人ビジネスマン)から面白い実話を聞いた。上海で車を運転していた台商が交通警官に呼び止められ、免許証を見せろと言われ、台湾の運転免許証を提示。「大陸(中国)では認められない」と罰金切符を切ろうとした時、台商は「台湾は中国の一部だ。当然、台湾の免許証は大陸でも認められるはずだ」と自信たっぷりに主張し、警官はやむなく切符を切るのをあきらめたというのだ。

 7月以降、中国人の台湾観光が解禁され、今度は中国人が台湾でレンタカーを運転する日も近い。中国人が台湾の警官に免許証提示を求められた時、どう主張するかを考えると、「一つの中国」をめぐる政治問題はちょっと滑稽に見えてくる。

◆天安門事件の再評価をめぐる中国メディアの異変

四川大地震の犠牲者も追悼した香港の天安門事件19周年追悼キャンドル集会=深川耕治撮影
 北京の天安門広場で人民解放軍が学生らの民主化運動を武力鎮圧した1989年6月4日の天安門事件についても中国で再評価に関する変化の兆しが少しだけ見えてきた。

 対中融和路線の馬英九台湾総統は中国の人権や民主化問題についての関心が強く、毎年六月四日には事件再評価を求める所感を発表していたが、今年は四川大地震での中国政府の対応を評価する内容に終始し、中国への人権弾圧批判がすっかり影を潜めた。

 一方、中国中央テレビのニュースサイト「CCTV.COM」は、6月4日夜、香港の民主化団体「支連会(香港市民支援愛国民主運動連合会=司徒華主席)」の主催で開かれた天安門事件十九周年の追悼キャンドル集会を四川大地震犠牲者の追悼集会として写真付きで報じ、中国当局の真意が何なのか、様々な憶測を呼んでいる。

 香港で行われた今年の同集会は48000人(主催者発表)が参加。スローガンは「一つの世界、一つの人権、一つの夢、天安門事件の再評価」だ。同事件の犠牲者を追悼すると同時に四川大地震で犠牲となった人々に対しても黒色のTシャツを着て哀悼の意を表し、献花式、民主化と追悼を表す聖火式を行った後、参加者全員で一分間黙祷。支連会の司徒華主席は「地震は天災で回避しようがないが、天安門事件は一党独裁政権による血の弾圧であり、人災。回避しようがあった」と訴えた。

◆香港で市民権得た地道な再評価運動

「CCTV.COM」内の五輪ネット・スポーツ欄に掲載された香港の天安門事件19周年追悼キャンドル集会=香港紙「蘋果日報」より
 「CCTV.COM」内の五輪ネット・スポーツ欄に掲載された6枚の写真付き紹介内容は、集会のテーマの一つでしかない四川大地震の犠牲者追悼のみに焦点を当て、天安門事件には直接言及していないが、記事には「約2時間の集会では歌や朗読、黙祷があり、烈士記念碑(天安門事件犠牲者を悼む記念碑)に献花された」との表現が含まれていた。参加者数についても「48000人を超え、サッカー場5個分が埋め尽くされた」と主催者発表の参加者数(警察発表は15000人)を紹介し、支連会の面子も立てている。

 同ニュースサイトは中国中央テレビのネットワーク報道センターが管轄し、同テレビ局では十六ある副局の一つ。サイトに掲載されるニュースは党中央宣伝部の厳しい検閲を通過済みのものだ。「決して偶然掲載されたものではない」(香港バブテスト大の杜耀明助教授)との見方が中国メディア研究者の間では常識化されている。

 支連会副主席の李卓人氏は「中国政府がよく使うエッジボール(卓球用語でテーブルの端をわずかに擦るだけでインと判断されるくせ球)。婉曲的に再評価しても良いというシグナルであり、19年間、地道に事件再評価運動を続けてきた効果の表れ」と話す。

 中国当局は天安門事件について「反革命暴乱」と規定して21人の学生指導者らを逮捕。学生らに同情した趙紫陽総書記(当時)は罷免され、軟禁中に死亡した。中国内でも同事件の再評価を求める声はあり、香港での追悼集会は中国でも知られている。メディア統制が厳しい中国では政治問題で微妙な変化が起こる時、観測気球を上げて各界の反応をじっくり見定める手法が取られるが、中国当局が同事件の再評価を間接的に黙認する動きと解釈できるか、もう少しじっくり動向を分析する必要がある。(深川耕治、写真も=08年6月15日記)



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