中国メディア批評
2007年10月24日記

国営放送CCTVの香港フェニックステレビ締め出しに視聴者が猛反発

◆政府宣伝の国営放送  北京は第十七回中国共産党大会を終え、新指導部の選出が決まったことで、五年に一度の「政治の季節」は大きな節目を迎えている。

 ポスト胡錦濤の権力闘争が国際的に注目される中、中国当局は貧富の格差拡大や環境汚染の弊害を生んだ経済成長至上主義から脱却するため、胡錦濤総書記が掲げる戦略思想「科学的発展観」の定着と「和諧社会」の実現に全力を注いでいることを対外的に宣伝することに躍起だ。

 中国国営放送の中国中央テレビ(CCTV)はその代表格。党大会開幕直前の五日から六日間に渡って大型歴史ドキュメンタリー番組「復興之路(復興の道)」を放送。アヘン戦争以来、党の指導的地位は歴史的な選択であったことを論証する内容で昨年放送された大型ドキュメンタリー番組「大国崛起(大国の勃興)」に次ぐ姉妹番組といったところだ。

 だが、同番組に合わせたネットフォーラム「復興論壇」では「多党制と直接選挙の実行こそ真の民主だ」「復興とは?冗談だろ。共産党管轄下の復興ということか?」など民主化を求めるネットユーザーの声が続出した。

 CCTVは新社屋を朝陽区中心部に建設中で来年中に完成予定。北京でも一等地の建設現場に立つと、日本のNHKよりはるかに巨大で側面が平行四辺形をした奇抜な建物で、国営放送の財力に圧倒される。その一方で六月ごろから建設予定地の住民が当局から強制移転させられることに反対し、トラブルになっていることが香港誌などで報じられるなど、地元政府と住民をめぐる土地問題は首都・北京でも恒常化している。

 北京で映像技術に関する展示会に出掛けた時、中国内の各テレビ局が出展していたが、CCTVは北京展覧館(十二号館まである)の中の一館を全部借り切って展示スペースを持っていたことを見ても、中国テレビ界を牛耳っている総元締めであることの証左ともいえる。

◆2億人視聴の衛星局  中国テレビ業界の巨頭、CCTVが最近、香港フェニックステレビ(鳳凰衛視台)の締め出しにかかり、中国内でフェニックステレビを視聴する中国人から猛反発を受けている。フェニックステレビは香港に拠点を置く中国語圏向け民間衛星テレビ局で、使用言語は標準中国語。一九九六年から放送開始され、二十四時間ニュース番組や映画チャンネルなどがあり、高学歴者向けの制作作りで法律上は外国人居住区や三つ星以上のホテルなどで視聴できる。

 しかし、実際は中国内の一般居住区でもケーブルテレビのチャンネルの一つとして有料視聴できるエリアが多く、中国内の視聴者数は推定二億人(六千万戸)だ。十年前の党大会後の記者会見で朱鎔基首相(当時)が同局の女性キャスターが登場する番組を視聴していると発言し、有名になった。

 党宣伝部の意向通りにプロパガンダと化したCCTVの硬派番組よりも多角的かつ専門家の分析意見や討論をふんだんに取り入れたフェニックステレビは中国内の知識人をはじめ、庶民層にも人気があり、CCTVとしては何としても国内で排除したいライバル局ということになる。

 表向きは国家広播電影電視総局(広電局)が党大会前のメディアへの規制強化の一貫として、法律上、三つ星以上のホテル以外の一般居住区で視聴できる技術的な実態を取り締まるということだが、フェニックステレビの国内視聴者数を目減りさせ、地方局を含むCM過当競争を制したいCCTV側の政治的意図は明らかだ。フェニックステレビの広告収入は現在、CCTVの五分の一程度だが、北京五輪を控え、CCTVにとって潜在的な脅威であることに変わりはない。

◆新次元の言論統制へ  七月末から八月初旬、フェニックステレビは中国各地で突然視聴できなくなり、視聴者らはネットフォーラム上で「放送禁止になったのは民主と法制の衰退」「われわれは知る権利があり、中国大陸でも香港、台湾のように言論の自由はある」など政府の言論統制に批判的な書き込みが大半を占めた。

 中国は地上波テレビから衛星テレビを含む有線テレビ、インターネットの普及で新次元の言論統制が強化される時代を迎えている。(香港・深川耕治=07年10月24日記)