中国企画記事 特選

2004年6月28日記

麻薬問題が深刻化する中国
広東省が「麻薬の集散基地」化
エイズ感染の最大原因に
中毒被害、全国市県の8割超す
 中国の麻薬問題が深刻化している。国内の八割を超える各市県区で薬物問題を抱え、麻薬中毒患者の正式登録数は百五万人を突破。そのうち約七割が三十五歳以下の青少年で専門家の見方では実際は八百万人から一千万人が中国内の麻薬中毒患者総数と推定している。
(深川耕治=04年6月28日記、写真も)写真は麻薬取締りを強化する広東省広州市公安局


麻薬取締りを強化する広東省広州市公安局 中国公安省麻薬対策局の李遠征副局長は6月26日、「中国内の約二千八百六十カ所の県・市・区のうち八割を超える約二千二百地域で麻薬品問題が発生し、去年末までの麻薬中毒患者の登記総数は百五万人を超えている」と発表した。麻薬中毒患者のうち、三十五歳以下の青少年層は七二%、エイズ感染者のうち麻薬中毒患者は六割を占めており、毎年の麻薬中毒による損失額は二千億元(二兆六千億円)にも上る深刻な経済損失でもある。

 中国エイズ予防協会の戴志澄副会長によると、専門家の分析では実際の麻薬患者数は登記数の八〜十倍に上り、実数は八百万人から一千万人と見通している。とくに静脈注射による麻薬中毒患者数は着実な増加傾向にあり、中国内のエイズ感染者約八十四万人のうち静脈注射による麻薬中毒患者によるエイズ感染数は全体の六三%にも上る。

 中国の温家宝首相も10日、湖北省都・武漢市の強制戒毒所(薬物依存治療施設)を視察し、国外からの薬物流入激増と国内の薬物供給源増加の二重圧力について四つの麻薬撲滅事業(@薬物の知識宣伝と予防強化A小中学校での薬物禁止カリキュラム設置B「薬物ゼロ村」建設C政府全関係部門の協力で薬物撲滅監視体制を確立)を提出した。とくに麻薬常用者に対して中国医学と西洋医学を組み合わせた療法を研究開発し、薬物依存脱出の治療管理強化の促進を強調した点が目新しい部分だ。

 中国本土では、実際は毎年百万人単位で麻薬中毒患者が増え続けているが、その最大原因は、中国雲南省と隣接する“麻薬生産国”ミャンマーやアフガニスタンで大麻製造やケシ植物栽培などが絶えず、この二カ国で製造販売される麻薬の八割以上が中国内に流入し続けていることにある。

 この点については、党中央も強い危機感を抱いている。羅幹中央政法委員会書記(政治局常務委員)は6月21日日、雲南省都・昆明で開かれた全国薬物撲滅会議で「あらゆる手段を尽くして国外の薬物が国内に大量流入して流通したり、メチルアンフェタミン類の薬物製造取り締まりで大きな成果を上げることが最重要課題だ。薬物中毒者の社会復帰対策も強化しなければならない」と強調している。

 ミャンマーと隣接する中国雲南省臨滄市では地元公安当局が今年に入って五ヶ月間で二百件以上の麻薬の運び屋摘発を行っているが、実際は、ミャンマーから中国雲南省に流入する麻薬量の約一割前後にしか満たないという。

 雲南省臨滄市麻薬撲滅隊の何慶文副隊長は「運び屋がミャンマー北部で生産される高純度のヘロイン一cを中国広東省に運ぶ時、細かい不純物を入れて十c分にごまかして分け、さらに相場の十倍の値段につり上げて売買するので、広東省内の麻薬患者は実質百倍の価格でそのヘロインを買うことになる」と広東省が全国の麻薬売買集散基地と化していることを指摘する。

 中国当局の調査結果では、広東省が一九九八年から二〇〇二年の期間、メチルアンフェタミンや「揺頭丸」(アンフェタミン類似薬物)の国内製造販売の九割を占め、改革開放政策のもとで急成長を続ける広東省の影の部分を浮き彫りにしている。

 これに呼応するかのように広東省都・広州市では6月26日、麻薬撲滅の官営組織によるデモが行われ、市民三万人が「一人が麻薬中毒になれば家族全員が災難に遭う」などのプラカードを掲げてデモ行進した。広東省では全省をあげて麻薬撲滅対策に取りかかっており、この日は全省で約百万人が同様のデモ行進に参加し、深刻な麻薬問題の啓発に取り組んでいる。