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2011年4月8日記


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原発建設スローダウン 中国
安全強調、模様眺め

日本報道で不安広がる

 
原発推進大国である中国は、沿海部だけでなく内陸部にも建設計画を積極拡大してきたが暗雲が立ち込めている。東日本大震災による福島原発事故で原発の安全性に不安と恐怖が広がり、政府は新規計画の一時停止を発表。安全性の強調に躍起だ。原発建設反対の世論が広がれば、反政府勢力となりかねず、電力確保と住民不安の狭間で建設スローダウンは避けられそうにない。(深川耕治=2011年3月7日記)

地震に弱い内陸部も計画
広東省で放射能漏れ事故も
隣接の香港、神経尖らす


 中国では現在、原発13基が稼働し、すべて沿海部に集中
(図参照)。さらに、建設・計画中の原発は27基あり、全世界で建設・計画中の原発の約41%を占める。中国は2020年までに新規原発60基増を目指す原発推進大国だ。

 計画中の原発には湖南省(3カ所)、重慶(2カ所)、甘粛省(1カ所)、河南省(1カ所)、四川省(1カ所)、湖北省(1カ所)、江西省(1カ所)、安徽省(1カ所)など内陸部も含まれている。四川大地震の震源地から500キロ圏内に重慶と四川省の計画地があり、河北省唐山で発生した唐山大地震の震源地から500キロ圏内に河南省洛陽の計画地があることも地震に弱い内陸部の懸念材料となっている。

 中国の発電に使うエネルギーは現在でも7割以上が石炭。次いで水力、石油、原子力の順となっている。大半を輸入に依存している化石燃料は温暖化を悪化させる二酸化炭素を排出するため、温暖化対策に原発推進を重点にしている。中国は2030年でも一次エネルギーの5割以上が石炭と予想され、二酸化炭素を大気に放出して環境を悪化させる化石エネルギーから脱し、低コストで二酸化炭素を発生させない原子力利用へシフトすることを積極推進する立場となっている。

 中国政府は原子力発電中長期計画で国内発電力を現況10.8.ギガワットから2020年までに約7倍の86ギガワットに拡大する計画。原子力発電が総発電量に占める割合は約1%から5%に増加する見通しだ。

 東日本大震災による福島原発事故の翌12日、中国政府は「原発を発展拡大する決意と計画に変更はない」(中国環境保護省の張力軍次官)とし、原子力専門家で中国科学院の陳達教授が「中国の第三世代の原発は冷却トラブルは生じないし、原発建設地には活断層は通っていない」と中国国営メディアにコメントして原発の安全性を強調していた。

北京紙「新京報」3月29日付1面トップは福島原発事故の影響で黒竜江省上空に放射能が微量に検出され、東南沿岸地方に広がっていることを報じた
 しかし、中国の主要メディアは東日本大震災の被災状況や福島原発事故を連日、大きく報道し、原発事故による放射能汚染被害が水や食物に広がることが中国庶民にまで知れわたり、原発への不安を増幅。「食塩が放射能汚染食品に効く」との風評が広がり、塩の売り切れや急騰現象まで発生している。

 中国政府は16日、温家宝首相が主導する国務院常務会議で「核安全計画を作り上げるまで新たな原発計画の審査・承認を一時中止する」と方針転換を見せ、稼働中の全原発に対しても厳しい基準で緊急安全検査を実施するなど、強気の原発建設続行論が色あせ、模様眺めや慎重論が強まり始めた。

 中国電力企業連合会によると、従来の原発強硬推進から安全と高効率優先路線へ転換し、最新計画では内陸部の原発建設は延期される見通し。地質測定で地震地帯と判明した福建省や遼寧省での原発建設も再検討されるという。

 中国の原発は1956年7月、周恩来首相(当時)が原子力エネルギー事業部の設立を提案して以来、核兵器開発の軍需産業の一部として発展してきた特異な歴史がある。国家プロジェクトとして次々に建設地を設定し、安全なクリーンエネルギーとして側面のみを強調。放射能漏れのリスクを伏せる形で地元住民を説得させ、大きな反対もなく、計画発表から10年以内に稼働に持ち込んできた。

香港紙「蘋果日報」4月4日付1面トップは広東省深セン(土ヘンに川)の大亜湾原発ルポ記事を紹介。原発事故やテロによる不測の事態への不安感が広がっている
 一方で09年8月、中国核工業集団公司党組書記で同公司(泰山第三原発有限公司理事長)の康日新社長が総額18億元(1元=13円)の建設計画をめぐり、660万元を受け取った収賄容疑で解任、逮捕されるなど、原発を巡る汚職事件は絶えない。原発を含む国有の電力会社は李鵬元首相の利権として長年、政治力を得て批判を集めていた影の部分を持つ。

 香港から50キロ離れた広東省深セン(土ヘンに川)の大亜湾原発では、昨年2度にわたって内部で放射能漏れ事故が発生し、香港では安全性に強い疑問が投げかけられ、情報公開を求める動きが強まっている。昨年5月に発生した放射能漏れについて同原発の事業会社は否定していたが、その後、地元政府は放射能の上昇を認めたが、事故のレベルに達していないとの見方を示していた。深セン市地震局は大亜湾原発付近に3つの活断層があることを認め、不安を高めている。

 福島原発事故で放射能漏れによる日本食被害に過敏に反応する香港では、日本食ブームが続いており、風評被害で日本食レストランが大打撃。香港から50キロしか離れていない大亜湾原発に対する安全性を不安視する世論が高まり、同原発の一部施設で一般見学を認めることが発表された。現地取材を行った香港メディアは「テロリストに占拠されるセキュリティの甘さが不安」(香港紙「蘋果日報」)と報じている。