中国企画記事 特選
2004年5月13日記

漬け物の防腐剤用に殺虫剤
格安粉ミルクで乳児13人死亡

中国、各地で横行する有毒・粗悪食品

 中国製偽造ダイエット食品の輸出で日本人死亡者も出した中国模倣品問題。二〇〇二年七月には中国産輸入冷凍ホウレンソウから基準値を大きく超える農薬が検出された事件も発生した。今度は発がん性物質や違法な漂白剤、殺虫剤、工業塩を加えた粗悪食品が中国各地で横行・発覚し、通常より低価格であることに魅せられた貧困層が口にして犠牲になるケースが後を絶たない。中国産の農産物や食品を大量に輸入している日本にとっては対岸の火事では済まされない深刻な事態だ。
(深川耕治、2004年5月13日記)

picture 模倣品撲滅の抜き打ち検査が行われた深センの羅湖商業城=深川耕治撮影
 香港と陸続きの深セン羅湖税関。隣接する大型商業施設「羅湖商業城」は連日、外国人観光客でにぎわう中、十日、羅湖区商工所の「打假隊(模倣品取り締まり隊)」が各店舗に抜き打ち検査に入り、偽ブランド品のバッグ、腕時計、衣料品など数千点を押収した。摘発されたのは同一グループが経営する一店舗と倉庫三カ所で、見せしめ的な一罰百戒だ。
 二年前、中国製ダイエット用未承認薬の「せん之素こう嚢(せんのもとこうのう)」による日本人の健康被害が問題化した際、羅湖税関四階の薬局では堂々と同薬が店頭販売されていたが、記者(深川)のクレームにも、まったく動じる様子はなかった。
 羅湖商業城の管理責任者は今回の抜き打ち取り締まりについて「市場経営の秩序を維持し、健康な発展に有利だ」と語っているが、連日、中国各地では殺虫剤などを防腐剤代わりにした粗悪食品の存在が官営メディアで紹介され(表参照)、それらが深センや広州まで流通販売されていることが判明し、イメージ悪化を払拭(ふっしょく)したいとの意図も含まれている。
picture 中国中央電視台(CCTV)のCCTV1で9日放送された「毎週質量報告」の映像の画面。殺虫剤を泡菜にまいている=香港のテレビ局「無線電視台(TVB)」のテレビ映像から
 中国内で新たに衝撃が走ったのは、中国中央電視台が九日に放送した報道番組「毎週質量報告」。香港のテレビ局でも部分的に報道され、毒薬が含まれる「毒菜」の実態が明らかになった。
 同番組ではまず、四川省成都市内の泡菜(中国式の漬け物)を製造する企業が製造過程で防腐剤代わりに殺虫剤「敵敵畏」や食用禁止の工業塩を添加している姿を映像を交えて紹介。工場主の一人は「自宅用の泡菜としては決して食しない」と話し、年間千トンの泡菜を製造して北京、広州、深セン、寧波、太原、蘭州、鄭州など大都市に販売していることを明らかにした。
 現場リポーターが「この漬け物用野菜の周囲には虫がわいているが、どうするのか」と尋ねると、「十日に一回、殺虫剤をまいて防腐剤代わりにしている」と製造業者が答えている。
 また、製造過程で政府基準値の六倍前後の防腐剤・安息香酸ナトリウムを使用。同省彭州市の泡菜製造工場では食用では絶対に禁止されている工業塩を廉価な密輸品であることを理由に大量に使用し、外見が変わらないよう工夫を施しているという。これらの泡菜は香港のスーパーマーケットでも大量に出回っており、香港の衛生当局は検査強化を示唆している。
 このほか、最近では安徽省西北部の阜陽市で起きた粗悪粉ミルク事件は貧しい農村の悲惨な現状を浮き彫りにした。同市で販売されていた問題の粉ミルクは五十種類以上あり、たんぱく質含有量が政府基準の十分の一以下で慢性的な高熱と下痢を引き起こす。基準を満たす粉ミルクに比べて価格が五分の一程度のため、貧しい農民が生後三―五カ月の乳児らのために購入した。その結果、頭部だけが肥大した乳児が市内の病院に運び込まれ、少なくとも十三人が死亡、百七十人以上が栄養失調となった。
 同事件は氷山の一角にすぎないとみた中国政府は各地で基準に満たない粉ミルクをチェックし、悪質業者の摘発を開始。全国各地の食品が集まる広東省広州市では、雲南省大理産の粉ミルク十八・六トンから基準値をはるかに超える大腸菌を検出し、「全孝」というブランドの乳製品を製造する企業を摘発。また、安徽省合肥市の診療所では有効期限の切れた大量の医薬品が保存されており、診療所の責任者らを捜査している。
 野菜を中国本土に依存する香港では、一九八八年、約四千人の香港人が中国本土から入ってきた野菜で農薬中毒となり、集団入院したケースがあり、〇一年には中国本土産ネギを食べた香港人一家五人が手足や舌の麻痺(まひ)、めまいなどの症状に襲われ、救急車で搬送されて緊急入院する事件も発生。中国本土での粗悪食品事件はすぐに飛び火する。
 中国野菜の輸入量第一位の日本では、香港と同様、中国産の農薬汚染された野菜に対する対応が緊急を要しており、欧米のように輸入規制強化策を検討するような対抗策の必要に迫られそうだ。
【最近起きた中国内の粗悪食品事件簿】
●泡菜(中国風野菜の漬け物):四川省成都市内の食品工場で生産された毒入りの泡菜が遠くは広州、深センまで販売された。
●春雨:山東省竜口市で製造された春雨が化学肥料用の漂白剤を大量に使って加工され、長期的に食すると発がん作用があることが判明。
●卵(鶏卵):天津市内の養鶏場で飼育されている鶏に人造色素を混入させた飼料を与え、産んだ卵の卵黄部分をさらに赤みがかるようにして高値で売買。
●粉ミルク:安徽省阜陽市内で製造販売された粉ミルクがたんぱく質の含有量が政府基準の10分の1に満たない粗悪品で少なくとも13人の乳児が死亡、170人が栄養失調に。
●芽菜(青菜の芽を使った四川省特産の漬け物):北京市内で製造された芽菜が工業用漂白剤を使って加工されていた。
●生薬用の山査子(さんざし):河北省興隆県で禁止されている工業塩や防腐剤を添加した山査子をカルフールなどスーパーマーケットで販売。
●鼓油(豆類の油):湖北省の工場でカツラを製造するために使う鼓油原料に、禁止されている混合色素や塩を混ぜて販売。
●ハム:浙江省金華市で製造されたハムが死んだ豚から作ったもので、発がん性のある殺虫剤を防腐剤として使っていた。
(資料:中国中央電視台)