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2011年3月18日記


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震災時の日本人道徳を賞賛 中国
秩序正しさ、防災対策見習う


 地震大国である中国が東日本大震災に高い関心を寄せている。原発事故も含め、連日、中国や香港の各メディアはトップ記事扱いで報道。被災時、日本人の秩序正しさや防災対策の手際の良さを高評価し、中国人研修生20人を避難させた後に津波に呑まれた宮城県男性の自己犠牲の姿を詳報して中国内の日本への見方が変わりつつある。
(深川耕治=2011年3月18日記)

中国人研修生救った男性詳報
国内の風評混乱窘める社論も


中国共産主義青年団の機関紙「中国青年報」3月15日付の1面紙面。全人代報道一色が通常だが、東日本大震災に関して胡錦涛国家主席が天皇陛下に慰問電報を送ったことや「日中が団結して震災の痛みを分かち合おう」との論評記事が掲載されている
 地震発生時、中国では3月5日から開幕した第11回全国人民代表大会(全人代=国会に相当)が開会中だった。日本が未曾有の大震災となったことから、全人代関係の報道一色となる通常報道から日本の震災報道を優先し、中国各紙は日本の震災に大きく紙面を割いている。08年5月に四川大地震を経験し、原発建設を推進する中国としては被災後の日本の対応に強い関心を持っている表れだ。

 中国は3月13日、国際救援隊15人を初めて日本へ派遣。重災エリアである岩手県大船渡市で捜索救助活動を続けている。3月14日、温家宝首相が記者会見で日本に哀悼の意を表明し、胡錦涛国家主席は天皇陛下に被災者への慰問電報を送付。尖閣諸島の領有権をめぐり、中国漁船衝突事件で対日感情が悪化した中国主要メディアでも、震災後の日本支援を呼びかける報道が際立っている。

 胡錦涛国家主席の出身母体、中国共産主義青年団の機関紙「中国青年報」(3月15日付)は「心の結び目を紐解き、震災の苦痛を共有しよう」との評論記事を一面に掲載。「一部の中国人が不快な戦争の記憶から日本への支援に複雑な心情を持つ」としながらも「現在の被災した日本人は戦時中の刀を振り回して(中国人を)虐殺した軍国主義者ではない」とし、「人類共通の災難に直面する中、共に手を携え、痛みを分かち合えば、生命は愛で堅固になる」と呼びかけている。

 北京紙「新京報」(3月13日付)は「日本民衆の“転ばぬ先の杖”に感慨ひとしお」と題する社説で「日本建築の堅固さに感心する。学校は倒壊せず、逆に避難所に利用されている」と四川大震災との違いを評価、「避難時に救急箱や避難用食品、懐中電灯、工具、ラジオなどを手際よく準備して行動する人が多く、防災頭巾やヘルメットをかぶる人もいて、日本人は非常に優秀」と絶賛している。

北京紙「新京報」3月17日付で大きく掲載された佐藤充さんに関する新華社通信の記事
 中国中央テレビも被災地に中国語の説明案内があるとして外国人に配慮する対応を評価。「日本人の冷静沈着さに強い印象」(3月13日付の中国紙「第一財経日報」)、「日本は冷静な災害対策で混乱せず、中国・香港が先に混乱している」(3月18日付の香港紙「蘋果日報」社説)と日本の秩序正しさや冷静さに学ぶ姿勢を見せている。

 中国で感動を呼んでいるのが、東日本大震災で中国人研修生20人を自分の家族よりも先に避難場所に誘導し、自分や家族は津波で犠牲になったニュース。

 宮城県牡鹿郡女川町の水産会社「佐藤水産株式会社」専務だった佐藤充さんは3月11日の大地震の時、「地震で津波が来るから早く避難しなさい」と叫びながら中国人研修生約20人を連れて高台に避難誘導した後、自分の家族を捜しに戻り、研修生たちの目の前で津波に呑み込まれて犠牲になった。

 中国国営新華社通信は女川町に特派員に送り、佐藤さんのおかげで避難して助かった中国人研修生たちを直接取材。「地元の人々の助けがなければ、私たちはとっくに死んでいたでしょう」と涙ながらに話す中国人研修生らの談話を3月16日に詳報し、北京紙「新京報」をはじめ、3月17日付の中国主要各紙は大きく掲載した。

 中国共産党機関紙、人民日報傘下の中国紙「環球時報」は3月16日付で「日本に温かい支援の手を差し伸べよう」と支援を呼びかける声明を学者100人の意見広告の形で発表。100人の中には対日強硬派の学者も含まれ、異例の支援を展開している。同紙のネットフォーラムでは佐藤さんの話題を提示。対日強硬派の論陣一色を占める同紙のフォーラムでも、「涙が出る。災害に直面してこんな善意ある勇敢な行動をする人がいるのか」「普通の人ではできない行動。敬意を表する」「友情ある行動。モンゴロイド同士として団結せよ」との讃辞の書き込みが散見された。

3月17日、日本の原発をめぐる中国内の風評に踊らされ、香港・大埔で食塩の販売業者に殺到する香港人たち
 その一方、「日本が南京で30万人を虐殺したことを忘れるな」「日本の中国人研修生は苦しく、辛い。奴隷のような生活をしている」など相変わらず厳しい意見も半分ほど占めるが、愛国を鼓舞する同フォーラムで日本人に讃辞を送る意見が出ていること自体が非常に珍しい。

 東日本大震災を連日詳報する中国主要メディアだが、日本人の冷静な行動とは対照的に、国内での風評による混乱が懸念されている。3月18日付の北京紙「新京報」は「塩の備蓄ではなく核の安全知識を備蓄せよ」との社説を掲載。

 「(日本の原発事故で)海水が放射能に汚染されたので今後生産される海水からの塩は安全ではない」「食塩には放射性物質を体内に取り込むことを防ぐ安定ヨウ素剤が入っている」との情報が広がって一部地域で食塩の買いだめ現象が起こり、食塩価格が一時的に10倍近く急騰したり、大手スーパーで不足して購入できない混乱が生じた。同様の混乱は香港やマカオでも生じている。

 中国各地の百貨店などでは、福島原発の事故直後から中国米より高価な日本米が売り切れになり、事故以前に輸入された日本食品が完売されるなど、消費者も敏感に反応している。