中国関連記事 特選

2012年4月27日記


  • 見出し一覧(戻る)
  • 香港情報
  • 台湾情報
  • マカオ情報
  • 中国指導者 WHO'S WHO









疑心暗鬼 見え隠れ 中ロが海上軍事演習
自国製技術のコピーを監視 ロシア
武器の現状確認の意味濃く 中国

 
中国とロシアの両海軍による合同軍事演習「海上連合2012」が22日から27日までの6日間、山東省青島沖の黄海で行われた。両国が合同演習を始めた2005年以降、最大規模とされる今回の演習は、アジア太平洋地域優先の戦略を打ち出した米国や周辺国の海洋権益をめぐる動きをけん制する狙いがある一方、両国に軋む違法技術移転への疑心暗鬼を払しょくできるか、確認する場にもなった。(深川耕治=2012年4月6日記)

米や周辺国の海洋権益けん制
ロシアは米中に埋没しない立場確率へ


 中ロ両軍にとって、今回の演習は2005年8月、初の合同軍事演習「平和の使命2005」で陸海空三軍約1万人が山東半島で行って以来の大規模な軍事演習。敵の潜水艦に対する共同作戦や海難救助訓練を行った。米国がアジア太平洋地域を重視する戦略を打ち出し、日本や韓国、フィリピンなど同盟国との連携強化を強く警戒し、表向きは中ロの軍事的協調関係を顕示する狙いがある。

 中国側はミサイル駆逐艦「ハルビン」、中国式イージス艦と呼ばれる「瀋陽」、「福州」、「泰州」、「舟山」や護衛艦、ミサイル艦、総合補給艦、医療船「和平方舟」など16隻と潜水艦艇2隻、約4000人が参加。中国が国産開発中のジェット噴射推進による022級ミサイル搭載快速艇も配備され、殲8,殲轟7などの戦闘機、直9、直8などの軍用ヘリも使われた。

米国製戦闘機F15に匹敵する能力を持つロシア製スホイ27
 ロシア側からは太平洋艦隊旗艦ミサイル巡洋艦「ワリャーグ」、「マルシャル・シャーボシニコフ」、「アドミラル・ヴィノグラードフ」、「アドミラル・トリブツ」の3隻の大型対潜艦のほか、3隻の補給艦が参加した。

 中国国防省によると、同演習の目的は「海上合同防衛と通航ルートの確保」。今回の演習は「両軍の艦船に搭載されたソナー、防空レーダー、武器制御システムなど最新のハイテク技術を装備しているのは中ロ両国がハイレベルの戦略的互恵関係を築き上げている証左だ」(張軍社海軍軍事学術研究所副所長)という。

 黄海では米韓両国が韓半島有事の米軍増援態勢を点検する合同演習を毎春実施。「今回の演習目的は共同守護エリアの安全と第三国など具体的な国家の脅威に対処するものではない」(中国国防省の銭利華外事弁公室主任)とするが、香港の軍事評論家、馬鼎盛氏は「演習の大部分の航行ルートは日本海であり、対馬海峡から黄海に至る遠距離での武力能力を試す意味がある。日本を意識し、日米韓三国に関係する海域」と解説する。

 軍事上、結束を強化する中ロ両国だが、軍事技術盗用問題では根深い不信感が横たわる。1989年の中ソ和解以来、中国はソ連との軍事交流を復活させ、翌90年に旧ソ連製戦闘機スホイ27の導入を決定。ロシアとライセンス契約を結び、輸入機とライセンス生産版を合わせ、200機以上が中国空軍と海軍に配備されている。

中国製J11(殲11)は外観すらスホイ27にそっくり。内部構造もスホイ27の技術盗用が多いとされる
 その一方、中国側は国産戦闘機として殲11(J-11)の自主開発生産を発表。殲11はロシアの思惑でレーダーや火気管制システムの能力はスホイ27よりも低く設定されていたが、中国は独自の改良を重ね、日米の戦闘機F15イーグルと互角に戦うことができる数少ない中国空軍の主力戦力機となっている。

 スホイ27の中国でのライセンス生産は04年に開始。08年、ロシアは中国の殲11がスホイ27の知的所有権を完全盗用しているとし、国際協定違反として提訴する構えを見せた。両国が08年12月に兵器に関する知的財産権保護協定を締結した後も、ロシア側はライセンス生産されたスホイ27のエンジン部分を中国が自主開発したとする戦闘機「殲11B」に勝手に搭載したとして不満を表していた。

ロシア太平洋艦隊旗艦ミサイル巡洋艦「ワリャーグ」
 すでに2000年当初からロシア製軍事兵器の中国への盗用はロシア側の根強い不信となって表れており、05年にはロシア製兵器の中国への大量売却契約は激減。東南アジアやアフリカなどへの輸出でも中ロは競合し、兵器の知的所有権をめぐる不信感は国際競争でも表れ始めている。

 スホイ27に限らず、潜水艦やミサイル、戦車などに到るまでロシアの技術の盗用疑惑は後を絶たないが、ロシア側は中国に対して外交関係を最優先して強い抗議は控えてきた。

 今回の合同軍事演習は中国側にとって技術移転していないロシア軍の新しい軍事兵器のレベルを確認する場となり、ロシア軍にとっては自国の最新軍事技術を中国軍が盗用していないか監視する場ともなっている。

 ロシアは今夏、米海軍が主催する環太平洋合同演習(リムパック)に初参加する方針を固め、9月にウラジオストクで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議はロシアが太平洋重視を最大限アピールできる場と見ており、蜜月とは言いがたい中国との軍事関係の中で米中二極構造に埋没しない立場を確立する新たな動きに出ている。

 一方、フィリピンと中国との間で領有権を争う南シナ海・中沙諸島 のスカボロ礁(中国語名・黄岩島)では10日、フィリピン軍艦が操業中の中国漁船を拿捕(だほ)しようとして中国監視船が阻止。双方の艦船や監視船のにらみ合いが2週間以上続いている。

 米国とフィリピン両軍は16日から27日までフィリピン南西部の南沙(英語名スプラトリー)諸島にあるパワワン湾周辺で毎年恒例の合同軍事演習「バリカタン」を実施。大地震を想定した演習には日本やオーストラリアも初参加した。

 実戦訓練では中国を仮想敵と想定し、石油・天然ガスの掘削施設が攻撃された後、防衛奪還する想定で、米側から4500人、フィリピンから2300人が参加する大規模なものとなった。2010年11月には黄海上で米韓合同軍事演習が実施されており、北朝鮮軍による韓国・延坪島砲撃を受け、米韓軍事同盟の強化も中ロの結束につながっている。

 中ロ両軍による今回の軍事演習は、中国の台頭を意識してアジア太平洋地域優先の新国防戦略を打ち出した米オバマ政権や周辺国の海洋権益をめぐる動きをけん制する狙いがあり、中国の軍事的台頭と海洋進出に伴い、米中二極構造の変化の中で一定の緊張が続いている。