中国企画記事 特選
2007年7月12日記

中ロが陸空で合同軍事演習へ
六カ国8千人が参加 中国空軍の海外演習は初
中央アジアのエネルギー確保へ 中国
石油輸送の軍事保障の視点も


 中ロを含む「上海協力機構」(加盟六カ国)の合同軍事演習「平和の使命二〇〇七」が八月九日から十七日までロシア・ウラル軍区チェバルクル演習場(チェリャビンスク州)で行われる。中国空軍の国外演習は初めてで、「反テロ」を掲げ、戦闘部隊や後方支援部隊を合わせ六カ国五千人が参加するが、中国側の狙いは中東に連なる中央アジアの石油、天然ガスなどのエネルギー確保問題にある。(深川耕治)


 今回の合同軍事演習は第一段階では中国新彊ウイグル自治区のウルムチで参謀部による模擬演習や政治シンポジウムを行い、第二段階ではロシア・ウラル軍区のチェバルクル演習場で実弾演習を行う。

 同演習で中国人民解放軍は先発の演習部隊三百人と装備を鉄道による陸路と大型輸送機による空路(シベリア・チタ州経由)の二ルートで輸送する。当初の計画では中国軍はカザフスタンを通過してロシア・ウラル軍区に入る予定だったが、カザフスタン側が拒否。シベリア経由による空路と、ロシア南部国境沿いを陸路で移動するルートで移動することとなった。

 中国空軍は中国とパキスタンの共同開発軽戦闘機「梟竜(きょうりゅう)」(FC1)や大型軍用運輸機、国産最新主力戦闘機「殲(せん)10」(F10)など計七十機を投入。中国軍は演習全体で計一千六百人の兵士を動員する見込みだ。

 曹剛川中国国防相はキルギスタンの首都ビシュケクで十六日に上海協力機構に加盟する各国の国防相と会議を行い、中央アジアの安全保障問題を討議する。

 今回の中ロを含む演習は米国の一極支配を牽(けん)制する狙いがあり、米国国防総省も注視。軍事偵察衛星による監視を強化し、中国の最新鋭戦闘機の実践配備状況を詳細に分析する動きであることを中国各紙は報じている。

05年8月24日、中ロ合同軍事演習「平和の使命2005」のために青島空港で待機する中国空軍偵察機
 香港の時事評論家、楊達・香港バブテスト大学欧州文献センター主任は「上海協力機構の加盟国は反テロ対策で協力を強化し、中国と加盟国各国との関係を重視。中国のエネルギー資源確保で重要度が増し、中央アジアで連携しようとするウイグル独立派分子が域外組織との協力画策を行うことへの牽制になっている」と分析する。

 冷戦時代、旧ソ連と長大な国境線で接していた中国は、ソ連崩壊で分離独立した不安定な新興国と国境を接するようになり、とくに宗教紛争による宗教過激派が新彊ウイグル自治区の独立派分子と手を組む動きを強く警戒。中央アジア諸国も理解を示し、上海協力機構はそのための反テロ組織として重要な役割を果たすよう中ロが主導権を握る立場となった。今回の合同軍事演習でも中国軍は旧冷戦時代の国境沿いに近いルートを移動し、演習に参加することも中央アジアの石油・天然ガス供給、中国への輸送に対する軍事保障や地政学的な意味合いを持つ。

 二〇〇五年八月にも中ロ合同軍事演習が山東省沿海部で行われ、中ロの蜜月関係は経済だけでなく軍事、政治上でも強化されている。今回の上海協力機構による大規模軍事演習も反テロを通じて中央アジア諸国と中ロとの軍事・経済統合を目指し、米国の中央アジアへの政治・経済上の干渉を阻む思惑がある。さらに、エネルギー問題に関して、消費大国である中国は、石油・天然ガス産出国の中央アジア諸国との関係を強化したい目的もある。

 中国の国歌プロジェクトである西部大開発に必要なエネルギー資源は中央アジアから輸入され、とくに石油の大量輸入と貿易拡大は中国西部地域の経済発展に不可欠となっている。

 中国は米国がイラクやアフガニスタンに派兵した後、上海協力機構を通して米国の中央アジアからの軍撤退スケジュール提示を要求。さらに、「新シルクロード復活」による中央アジア諸国と中ロとの経済統合を目指し、中央アジアのエネルギー提携計画を推進している。

 上海協力機構の近年の動向を見ると、中国のエネルギー需要急増、イラン核開発問題の長期化、米国によるインド−トルクメニスタン間天然ガスパイプライン建設の再提案などで反テロ同盟としての従来の機能以外に「エネルギー・クラブ」としての機能も加えられている点が特徴だ。中国は石油調達先を「西進」政策で補充強化。中央アジア、中東、西アジア、南アジアの産油国を徐々に取り込み、石油の長期的安定供給を確保しようとと狙いがあり、上海協力機構を対外エネルギー政策のテコにしようとの動きが鮮明化してきている。

【上海協力機構】中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの六カ国による多国間協力組織。二〇〇一年六月十五日、上海で設立された。九六年四月に上海で発足した上海ファイブ(ウズベキスタンを除く五カ国首脳会議)が前身で、本来は旧ソ連諸国と中国との国境問題を解決する枠組みとして結成された。加盟国が抱える国際テロや民族分離運動や宗教過激主義問題への共同対応、経済、文化など多岐にわたる分野での協力強化を図っている。〇四年にモンゴル、〇五年にはイラン、インド、パキスタンがオブザーバー参加(準加盟国)となっている。