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ルポ コピー天国・中国
ルポ コピー天国・中国(2)

偽ロレックス買う日本人

「生産大国」としての比重大―広州


広州駅西側に軒を連ねる偽ブランドの時計販売店

 出稼ぎ労働者が群がる広東省の省都・広州市内にある広州駅前。駅から西側へ約一キロ歩くと、腕時計を販売する店舗が軒を連ねる。店に入ってガラスケースを見回すと、中国製の安い腕時計しか陳列していない。

 「ロレックスはあるか」と尋ねると、「ちょっと待って」と女性店員が店主を呼ぶ。店主が運んできたバッグの鍵を開け、辺りを見回しながら、おもむろに中から高級そうな時計を取り出した。

 「このロレックスはいくらだ」と尋ねると「三百六十元(約五千円)。品質は良い」と現物を大切そうに見せてくれた。時計の商標はロレックスだが、トレードマークの文字の形が本物と明らかに違い、ベルト部分も安い偽物だと分かる。「日本人や韓国人、卸業者のインド人などもよく買っていく」と店員は話す。

 広州市内には百五十社近い日系企業が進出しているが、その日本人駐在員らが日本人を呼び寄せた時や日本に帰国する時のお土産品として面白半分で偽物のロレックスを買うケースが後を絶たない。

 広州の日系企業で働く中国人男性(30)は「安易な気持ちで偽物を買っていく。これが偽物市場の需要を拡大させる要因になっていることを日本人自身が自戒すべきだ」と警告する。

 乾電池、歯ブラシ、ボールペンから家電製品、音楽CD、自動車、バイク、工業製品に至るまで中国製コピー商品は世界各国の真正品需要をむしばみ、対策の遅い日本企業が集中的に深刻な被害を受けている。

 特許庁の調査によると、模倣品の製造地は中国本土が全体の三分の一(33%)を占めて六年連続トップ(グラフ参照)。二位以下は韓国(18・1%)、台湾(17・6%)、香港(5・3%)と続き、中国を中心にアジア諸国・地域が全体の九割を占めている。模倣品の流通地域でも中国が一位(18・2%)、続いて台湾(13・9%)、韓国(12・2%)、香港(8・2%)、インドネシア(4・6%)の順となっている。

 中国はコピー商品の流通より製造大国としての比重が強く、一九九〇年代に入って急成長。「地方政府も後押ししてくれる、おいしいビジネスはコピー製品」とのゆがんだ風潮の広がりに加え、中国内での高技術力と安い生産コスト、有名ブランドの普及、国有企業改革のひずみなどが背景にある。中国内では沿岸部の四省(広東省、福建省、浙江省、江蘇省)で集中的に模倣品生産が行われ、卸売り市場として広州市、浙江省義烏市、湖北省武漢市、遼寧省瀋陽市などが拠点となっている。

 輸出拠点は新疆ウイグル自治区のウルムチ、福建省寧波市、香港、雲南省昆明市などで、中東、中央アジア、ロシア、東南アジア、日本などに地下流通網を広げている。

 日本貿易振興会(ジェトロ)香港の青木登経済協力部長は「日本では製品の商標と意匠(デザイン)がきちんと登録・保護されるが、中国では意匠権が無審査のまま登録可能なのが問題」と指摘する。

 中国の国家工商行政管理総局が統括する「著名商標」には、国内家電大手の海爾(ハイアール)、TCLなど中国企業や中国系企業など約二百社が登録されているが、海外企業は米コカ・コーラしか登録できていない。世界貿易機関(WTO)加盟国とは思えない国内企業保護優先の不公平な構造がまかり通っている点が、中国に進出する外国企業の不満を増大させている。

(広州・深川耕治、写真も=2002年9月13日記)