連載 特選


ルポ コピー天国・中国
ルポ コピー天国・中国(3)

軽すぎる処罰が再犯生む

模倣品対策で出遅れた日本


浙江省義烏市の「中国小商品城」などで販売していたコピー製品=現物はジェトロ香港提供

 香港島コーズウェイベイにある香港日本人商工会議所の会議室。小売流通部会に集まった企業経営者二十人が「中国における模倣品被害の現状と対策」と題する日本貿易振興会(ジェトロ)香港の青木登経済協力部長の講演に聴き入った。

 青木部長は自ら中国各地の模倣品の実情を調べ歩いた。講演では上海から南へ三百キロ、浙江省義烏(イーウー)市内にある巨大卸売市場「中国小商品城」(二万七千店舗収容)で販売されていた模倣品の電池や電卓、ボールペンなどを例に挙げながら、最近の中国における模倣品の形態は単純な商標(マーク)の模倣から意匠(デザイン)の模倣へと質的に向上してきており、手口が多様化かつ巧妙化していることを体験談から語った。

 義烏の中国小商品城は同市政府の支援で設営されているともいわれ、模倣品販売業者の取り締まりに腰が重く、一蓮托生(いちれんたくしょう)との見方が強い。

 同商工会議所では、部会ごとの小さな勉強会で模倣品被害と対策について地道に啓もう活動を続けているが、反応はいま一つ。模倣品規制が厳しい香港では、多大な被害を受けた経験がなく、積極的な質問は出てこない。「私たちは耳学問。専門家の意見を吸収し、中国とは腰を据えて付き合っていくしかない」と松井弘志・香港日本人商工会議所事務局長。

 ジェトロ北京センターが昨年十二月に発表した中国模倣被害実態アンケート調査結果(日系企業が対象)では、中国市場で偽物が横行、企業側は対策に手を焼いている実態が浮き彫りになった。

 調査結果によると、全体の三割以上がコピー商品による被害を訴え、うち半数は「深刻」な状況。損失は「十億円以上」が二十二社、六十五社が「年間一億円以上」に上り、五割の企業が「被害は悪化する傾向にある」としている。一方、対策費では、約八割の日系企業が年間「二千万円未満」で、早期に現地へ担当者を派遣して対策費をつぎ込んだ欧米企業とは対照的だ。

 コピー製品のはんらんを食い止めることができない最大要因は、処罰が軽くて再犯を生み、日本企業の対応が甘すぎたことだ。訴訟には時間もコストもかかるため、中国当局に告発するなどして行政ルートによる対策を講じるケースが多いが、刑罰が軽い(二万元程度の罰金、懲役三年以下の刑事罰は摘発数の1%にも満たない)ため、再犯を繰り返す。

 「摘発はイタチごっこ。日本企業は中国の巨大市場に参入するために中国内で波風を立てない目先ばかりを考え、中国での特許、商標権侵害に弱腰」(特許庁)との指摘もある。その弱腰ゆえに、利益侵害だけでなくブランドイメージも傷つけ、デザインや特許侵害などによる被害総額は一千億円を超えており、自衛手段に踏み切るしかない深刻な事態に陥っている。

 模倣品被害で大打撃を受けた日系二輪車業界の中で、ホンダは昨年九月、見分けがつかないほどの高技術で模倣バイクを製造していた天津の二輪車メーカーを抱き込む形で合弁会社を設立、問題の中国式解決を図った。一方、三菱自動車は、中国内で販売していたパジェロに欠陥が見つかり、中国政府が厳しい行政処分を打ち出したが、実は欠陥パジェロは国内企業が造った粗悪模造品であることが判明、逆に三菱側が提訴に踏み切った。

 日本の自動車メーカーが共同告発し、信頼できる調査会社や弁護士を使って製造現場を特定、公安当局が踏み込んで証拠品を押収、処罰するケースも増えている。今後は欧米企業とも連携を強化し、知的財産権の担当者を現地へ派遣、対策のための十分な予算を充てて、中国にルール施行の透明性を迫ることが急務となっている。

(香港・深川耕治、写真も=2002年9月14日記)