中国企画記事 特選

2004年8月6日記

武装警察ら1万人動員で厳戒 サッカーアジア杯決勝
観戦での暴徒化、懸念ぬぐえず
19年前の暴動、教訓にできるか/サッカーの群集心理、抑止できず
 中国で開催中のサッカーアジアの決勝、日本対中国戦が8月7日午後、北京の工人体育場で開かれるのを直前に、中国政府は同試合会場に武装警察官ら約一万人の保安要員を動員して厳戒態勢を敷き、一部の中国人観客らが暴徒化する危険性を未然防止する対策を取っている。

 サッカーの国際試合でこれほど異常な厳戒態勢が敷かれるのは、中国内でも前例がない。一九八五年五月十九日、サッカーワールドカップ予選の中国対香港戦が同じ北京の工人体育場で行われて中国が敗北、出場資格を失った時、群衆が暴徒化した事件は中国政府の頭痛の種だ。北京五輪を四年後にひかえ、観戦マナーが国際的な評価に繋がることを憂慮する中国の面子(めんつ)をかけた闘いとなっている。

 「五・一九事件」とも言われる同事件は、サッカーワールドカップ出場を賭けた中国対香港の試合直後に起こった。中国が敗退してワールドカップへの出場権を失ったことに憤った一部の中国人サポーターらは周辺の商店や自動車を損壊させ、外国人客らを殴打・負傷させた。

 それだけではない。今回のサッカーアジア杯では中国の初戦だった7月17日の対バーレーン戦(2−2引き分け)で、遼寧省大連では、市中心部の中山広場前で大型マルチビジョンに映し出された実況中継の途中、若者二人が中国チームの戦い方をめぐって言い争いになり、にらみ合いの周囲には約二百人の群衆ができて野次馬と化した。

 市民の通報で地元警察官がパトカーで駆け付け、言い争った二人や関係者二人の合わせて四人を連行する事件(写真右)にまで発展。中国の強豪プロサッカーチーム「大連実徳」を輩出している大連ではサッカー熱は高く、若者を中心に中国チームへの応援は熱烈だが、ちょっとした言動でも言い争いになる素地があり、独特の群集心理は警察当局が力の論理で抑止する以外、収まりそうにないのが実情だ。

 江沢民前政権期から日本に対する民族的反感を増幅させる歴史教育、愛国教育に力を入れてきた中国は、その教育の洗礼を受けている若者を中心にむき出しの反日感情が日本戦でのブーイングなどに表れており、尖閣諸島問題や靖国神社問題などにも敏感。今回のサッカー決勝戦でも不測の事態は起こらないと断定できない状況が続いている。(04年8月6日記、深川耕治、写真も)
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