香港関連記事 特選

2013年3月8日記


  • 見出し一覧(戻る)
  • 香港情報
  • 台湾情報
  • マカオ情報
  • 中国指導者 WHO'S WHO








尖閣上陸の活動家ら北米訪問 香港
起訴に反発、再上陸へ募金活動

 
昨年8月、沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)に違法上陸した香港の民間団体「保釣(釣魚島防衛)行動委員会」のメンバーらが北米訪問を計画して資金協力金を募り、再上陸の準備を着々と進めている。上陸時に使った船の所有者である同メンバーが香港検察当局から起訴されたことで募金支援活動の動きが強まり、香港政府は異例とも言える起訴取り下げで沈静化を図ろうとしている。(深川耕治=2013年3月8日記)

起訴を一転取り下げ 香港検察当局
政治的思惑、制御できぬ愛国心懸念

 2012年8月15日、尖閣諸島に上陸する香港の保釣行動委員会メンバーら
 2月14日、香港海域外への航行を禁止する指示に違反した商船条例違反で香港当局に起訴されていたのは、香港保釣行動委員会のメンバーで昨年8月15日、尖閣諸島の魚釣島に上陸した抗議船「啓豊二号」所有者の羅堪就氏。

 有罪になれば最高25万香港ドル(1香港ドル=12円)以下の罰金または2年以下の懲役となるところだ。

 起訴された段階で保釣行動委員会は「これでは島に対する日本政府の立場を支持することになる。昨年8月12日の出港時には検査後、出航を認めたのにだまし討ちだ」と猛反発。起訴された羅堪就氏は裁判所に出廷しない姿勢を示していた。

 昨年8月、尖閣諸島違法上陸のために使った抗議船「啓豊二号」は現在、香港島東部の港に係留され、日本の海上保安庁の巡視船と接触した時の傷跡が残ったままで「修理費用が約100万香港ドルかかる」(羅堪就氏)という。同船は船舶検査の有効期限が昨年十月末で切れており、移動すれば違反となるため、再点検を受けるために補修が不可欠な状態だ。そのため、保釣活動に積極的な支援をしてくれそうな米国、カナダの華人、華僑に補修資金を募って活動を拡大するため、北欧訪問を計画して巻き返しを図ろうとしていた。

米国、カナダへの宣伝募金活動に出発する香港の保釣行動委員会メンバー。左から曽健成氏、陳妙徳主席、羅堪就氏
 2月28日、香港海事署は「公共の利益に合わない」との理由で検察当局が起訴を取り下げたことを発表。香港検察当局が裁判に持ち込む起訴を一転して取り下げるのは異例で、中央政府の意向を汲んだ何らかの政治的判断があったとの見方が濃厚だ。

 同28日、保釣委員会の陳妙徳主席、羅堪就氏、曽健成氏の3人は香港国際空港を出発し、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、バンクーバー訪問を開始し、19日に香港に戻る予定だ。在米、在カナダの華人に対して保釣宣伝活動を展開し、支援募金を呼びかけて連携強化を図るのが目的。ただ、ニューヨークでの宣伝集会は参加者が約二十人の小規模なもので昨年8月の上陸直後の盛り上がりは冷めている。

 香港政府は保釣委員会の抗議船出航については昨年8月以降、非常に敏感になっており、香港海事署は係留する啓豊二号に出入りする人の動きをチェック。中央政府の意向を反映し、日中関係が政治的な敏感な時期は上陸による抗議活動を事前に阻止し、黙認の時は簡単なチェックですませることで対処してきた。

ニューヨークでの支援集会で活動を宣伝する香港の保釣行動委員会メンバーら
 香港の保釣委員会メンバーは領土問題では愛国だが、大半が急進民主派で、曽健成氏や楊匡氏など、中国の民主化を要求している人物が多い。中国政府としては尖閣問題で愛国主義が制御できず、民主化要求へ暴発することを何よりも懸念しているため、保釣活動のコントロールに神経を尖らせている。

 さらなる異変は香港の汚職取締公署が1月8日、香港の保釣行動委員会の顧問で資金援助の有力スポンサーでもある劉夢熊氏を企業経営に絡む不正行為の疑いで逮捕し、即日釈放したことだ。その後も再聴取されるなど、不穏な関係が続く。劉氏は地元誌に対して梁振英行政長官について「行政会議(行政長官の諮問機関)入りを約束されていたが裏切られた」「自宅違法増築問題で虚偽発言をしている」と批判。親中派内の内紛となっている。

 香港人活動家の尖閣諸島上陸に限らず、中央政府は香港の政治、経済問題について今まで以上に干渉する傾向が強まっている。

 北京で17日まで開会されている全国人民代表大会(全人代=国会)では6日、全国政治協商会議(政協)主席に就任する予定の兪正声政治局常務委員が香港やマカオの政協委員ら15人と接見して5つの要望を提示。2017年に実施実現が見込まれる香港行政長官の普通選挙について「香港が中央と対抗して人心から離れた執政となるのは好ましくない。長期政権が愛国愛香港の力量を確保すれば市民生活は改善し、経済安定のキーポイントになる」「香港は中国本土の社会主義を転覆する基地になってはならない」と政治的に踏み込んだ発言が目立った。

 香港の陳永棋政協委員は兪氏の発言内容について「根本的に愛国愛港(愛香港)の人物でなければ行政長官選挙に参戦すべきでないという意味だ」と解説。香港中文大学の馬嶽准教授は、親政府派の団結を求める踏み込んだ発言が目立ったことについて「(香港の保釣委員会メンバーで活動資金を出している)劉夢熊氏が梁振英行政長官を批判する事件が重大な懸念材料にある」と分析している。