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2013年8月9日記


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終戦記念日の尖閣再上陸断念 香港の反日団体
台湾から出航計画も困難に
有力スポンサーめぐり確執


 昨年8月15日に沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)に抗議船で不法上陸した香港の民間団体「保釣(釣魚島防衛)行動委員会」は終戦記念日の同日に再上陸する計画を延期した。代わりにメンバー数人を台湾に派遣し、台湾の遊漁船「全家福号」で15日に尖閣諸島に向けて出港したいとしているが、船の調達が困難で終戦記念日の再上陸計画は事実上、断念せざるを得ない状況だ。(深川耕治=2013年8月9日記)

中国ヨット領海侵入も空振り
中国からの出航は計画継続


8月7日夜、今後の方針について打ち合わせをする香港の保釣行動委員会メンバーら
 保釣行動委は尖閣上陸へ向けて抗議船「釣魚台2号(正式名称・啓豊2号)」を香港沿岸から12日に出航させる計画を進めていた。乗船するのは香港、マカオの活動家など12人前後を予定し、香港メディアのクルーも参加予定だった。

 出港を延期せざるを得ない理由は抗議船の出港許可に必要な整備が満たされず、香港海事当局が1日の立ち入り検査で不備箇所を多数指摘し、不備を補修完了しない限り、出港を不許可にしたことだ。

 同委員会の羅堪就主席は8月8日、香港島北東部の港に係留中の抗議船「啓豊2号」上での記者会見を開き、「香港当局の言いがかりで12日の出港は断腸の思いで延長せざるを得ないが、年内には出航し、再上陸する。香港出港を阻止されても、両岸(中台)の保釣活動家に呼びかけ、8月15日に上陸するよう働きかける」と述べた。

 羅主席は同委メンバー数人を8月14日に空路、台湾に派遣し、「8月15日未明に台湾北部の港から台湾の抗議船に乗船して尖閣諸島上陸を目指す」としているが、台湾側は遊漁船「全家福号」出港の準備が整っていないため、事実上、困難な状況だ。

 香港海事当局が8月1日に行った抗議船の船舶検査では「37カ所の不備を指摘され、そのうち22カ所のみ対処できたが、残り15カ所は修理の対応ができなかった」(羅主席)としている。

 2011年1月に香港、台湾、中国などの民間団体が設立した世界華人保釣連盟(本部・香港)の李義強秘書長(中国福建省アモイ在住)も「15日に中国大陸から抗議船で尖閣諸島に向かう計画だ」と表明しており、香港発の抗議船上陸は延期されても、終戦記念日の尖閣違法上陸の動きは中国側では収束しておらず、むしろ、予断を許さない状況だ。

 8月12日の出航を計画していた香港の抗議船は昨年8月15日、尖閣諸島の魚釣島に違法上陸した時に使用した同じ「啓豊2号」。昨年の上陸の際に日本の巡視船と接触して破損して帰港後、香港島東部の港に係留され、約100万香港ドル(1香港ドル=15円)をかけて修理する必要があったが、修理費用を40万香港ドルしか捻出できず、1日の船舶検査時までに出港許可の条件を満たせなかった。

 保釣行動委は過去1年、香港海事当局との“さや当て”を続け、海事法の手続きを遵守しなかった保釣行動委側の不備で出港延長は決定的となった。

 「啓豊2号」所有者の羅堪就氏は昨年8月12日の香港出港をめぐり、香港海域外への航行を禁止する指示に違反した商船条例違反で2月14日、香港当局に起訴されたが、同28日、検察当局は突如、「公共の利益に合わない」との理由で起訴を取り下げる異例の事態となり、中国当局の何らかの政治的判断があったとの見方が濃厚だ。

 昨年8月の出港時は香港当局は黙認したが、過去6年間は中国政府の強い意向を受け、出港を許可していない。今回の出港延期は中国当局の圧力というよりも、香港の政治的なお家事情が大きい。

8月7日、香港の汚職取締公署の調査で動く香港の保釣行動委員会顧問でスポンサーでもある劉夢熊氏
 保釣行動委は今回の上陸計画については同顧問で資金援助の有力スポンサーである元全国政治協商会議(政協)委員の劉夢熊氏が中心となって半年以上前から中国外務省、公安省、国家安全省の窓口と粘り強く交渉を続けてきた。2月末から3月にかけては羅堪就氏ら同幹部3人が米国とカナダを巡回訪問し、支援募金を呼びかけて連携強化を図った。

 しかし、香港の汚職取締公署(ICAC)は1月、劉夢熊氏が副会長を務めていた上場企業・東方明珠石油の業務買収に絡む汚職疑惑で劉氏を逮捕し、即日釈放。その後も再逮捕されて釈放されるなど、不穏な関係が続く。

 劉氏は香港誌「陽光時務週刊」に対して昨年3月の行政長官選挙時に後押しした梁振英行政長官について「行政会議(行政長官の諮問機関)入りを約束してくれていたが裏切られた」「自宅違法増築問題で虚偽発言をしている」と批判。

 香港のラジオ局「商業電台」の電話取材でも同様の発言をしているため、7日、ICACは同ラジオ局に当時の取材記録を提出するよう命じたがラジオ局側は拒否。行政長官選挙時の事実と異なる機密漏洩にあたるか、取り調べが進められている。

 香港のトップを決める行政長官選挙前、梁振英氏を支持していた劉氏らが出席した食事会に暴力団幹部が出席し、暴力団の仲介で梁氏支持を取りつける密会となっていたとの疑惑も浮上。梁行政長官の支持率が低迷していることもあり、保釣行動委の大口スポンサーで顧問でもある劉氏の封じ込み圧力は強まるばかりだ。

8月3日には中国人冒険家・●(羽の下に雀の少をとったもの)墨(たくぼく)氏が乗ったヨットが中国海警局所属の船3隻に護衛されるような形で一時、日本の尖閣諸島領海に侵入
 保釣行動委メンバーは、領土問題については一貫して愛国だが、中国の民主化を支持する反中共の急進民主活動家が大半を占め、曽健成氏や啓豊2号の船長・楊匡氏など中国の民主化を強く要求している人物が多い。中国政府は尖閣問題で愛国主義が制御できず、民主化要求へ暴発することを何よりも懸念しているため、中国当局との交渉では常に反中共の活動監視強化と上陸許可の狭間で最終決断が出るのは直前になってからだ。

 一方、中国当局が抗議船の尖閣上陸を後押しする動きも出ていた。8月3日には中国人冒険家・●墨(たくぼく)氏が乗ったヨットが中国海警局所属の船3隻に護衛されるような形で一時領海に侵入しており、香港当局が抗議船の出航を黙認すれば、中国海警局所属の船に護衛される形での尖閣上陸が可能だったとの見方も出ていたが、空振りに終わった。

 ただ、中国、台湾からの抗議船で15日の終戦記念日に合わせて尖閣上陸を計画している動きは継続されており、1年前の民主党政権時とは違う安倍政権の対応が注視されている。

●=羽の下に雀の少をとったもの