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2011年3月7日記


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中東型デモのドミノ化封殺 中国
海外からネット招集で揺さ振り 反政府デモ


 チュニジアの「ジャスミン革命」やエジプト政変に触発された中国内外の人々がインターネット上で中国主要都市で2週連続で一党独裁の終結を求める反政府デモ集会を行うよう呼び掛け、波紋を広げている。武装警察まで動員した公安当局が厳戒態勢を敷いて封殺。今後も毎日曜日に続行を呼び掛けて各地で散発的にデモを実行しようと計画する可能性があり、3月5日の全国人民代表大会(全人代=国会)開会後も厳戒態勢が当分続く。(深川耕治=2011年3月7日記)

全国主要都市で計画、警察が次々封殺
主催者側は毎日曜日に継続呼び掛け

無言の「散歩式デモ」で当局かく乱も

米国の中国語ニュースサイト「博訊新聞網」の中国ジャスミン革命集会に関する特集ページ
 きっかけは、米国の中国語ニュースサイト「博訊新聞網」(http://www.peacehall.com/index.shtml)が2月19日、「茉莉花(ジャスミン)」をキーワードに北京や上海、成都、西安、南京、杭州、武漢、長沙、長春、瀋陽、広州など中国主要13カ都市の指定された場所で20日午後2時(日本時間同3時)に「政治改革を求め、一党独裁を終結させよう」「私有財産の保障と司法権の独立を」「言論の自由を」などを叫ぶ反体制集会を行う匿名の呼び掛けを紹介したことだ。

 博訊は中国反体制派サイトとして民主化の動向を積極的に紹介していることは中国内でも一部で知られているが、国内では特殊なソフトを使用しない限り、閲覧できない。同情報も内容が中国内で閲覧できる掲示板サイトやブログなどに転載され始めたため、当局は即刻削除し、デモの未然阻止に躍起になっていた。

3月6日、中国広東省深セン(土ヘンに川)市内の中国ジャスミン革命集会の指定場所で記念撮影する中国のネットユーザーたち=香港のウェブサイトから
 特にエジプトやチュニジアの政変に対して中国への飛び火を非常に強く懸念した中国当局は国内サイトで「エジプト」「チュニジア」「ジャスミン」などの検索をできなくしていた。さらに、博訊新聞網はデモ呼び掛けの詳細を紹介した直後から激しいハッカー攻撃を受け、閲覧不能の状態に追い込まれた。ネット上では「中国当局が仕掛けたハッカー攻撃」との指摘も出ている。

 その後も博訊は代理サイトを立ち上げて各集会場所での動向を動画や写真付きで報じ、香港各メディアの速報サイトにも紹介されている。博訊の臨時ブログには27日にも「20日と同じ場所で集会を続ける」と呼び掛け、ツイッター(中国内では禁止)などで情報が拡大。20日に計画された集会は13都市だったが、27日は少数民族問題を抱える新疆ウイグル自治区を含む二十数都市に広がった。

 3月6日には北京、上海など40以上の都市で集会開催が呼びかけられ、江沢民前国家主席が提唱した思想として知られる「3つの代表」という作戦コード名が皮肉っぽくつけられ、当局に揺さ振りをかけている。民主化集会の集合場所に指定された北京の繁華街である王府井や西単地区から海外メディア記者らを排除。集会指定場所は私服警官が待機して厳戒態勢はピークに達して徹底封殺しているが、今後も予断を許さない。

3月6日、三回目の中国ジャスミン革命集会を警戒し、北京大学付近を巡回する警官たち=香港紙「太陽報」より
 博訊や海外の反体制サイトの情報を元に過敏なまでに即時対応した中国当局はデモ集会を未然に防ぐ対策が用意周到だった。

 香港の人権組織「中国人権民主化運動情報センター」によると、2月20日までに中国当局は全国で1000人近い人権活動家らの外出を制限したり、身柄を拘束するなどしている。国営新華社通信によると、胡錦濤国家主席は19日、「ネット管理を強化し、ネット世論を指導する態勢を整えよ」と指示したばかりだった。

 北京の繁華街・王府井にある集会予定場所には、20日午後2時、1000人以上が周辺に集まり、私服警官を含む警官隊約300人が巡回。上海の人民広場では、若者2人がエジプト政変やチュニジア革命を紹介しながら「中国でも不満を表明しよう」と演説し始めると、警官が拘束。周囲にいる人々は警察の強硬姿勢に不満の声が渦巻いた。

 北京や上海以外の集会予定場所の周辺では、警察車両を配置して休日返上の武装警察隊が厳重な警戒態勢を続け、治安部隊が人の往来を厳しくチェック。集まった人々を解散させ、集会を封じ込めた。携帯電話のショートメールでも「茉莉花」「集会」の単語が入った内容は当局の検閲で自動削除される処理もされたという。

3月5日、北京の繁華街・王府井で翌日のデモ予定場所を見ようとする人たちを排除する警官たち=香港紙「蘋果日報」より
 しかし、香港紙「明報」(2月21日付)によると、北京の王府井の現場にいた人は「今回は王府井で茉莉花、次回は西単広場でバラというように月に1回の割合で実行すべきだ。目的性を持たず、散歩式の方法でやればよい」とし、場所と時間を指定することで当局の裏をかくデモの方法を提案。浙江省杭州でリニアモーターカーの建設場所をめぐる反対運動が成功して以来、全国に拡大している「散歩式デモ」(掛け声を掛けず、黙々と歩きながら抗議する新型デモ)が応用されて当局の動きを攪乱する可能性を示唆した。

 実際、その後のデモでは主催者側が散歩式デモを指示し、当局の事前封殺を防ぐよう揺さぶりをかける動きが広がっている。

 天安門事件の学生リーダーだった米国在住の王丹氏は「今回の行動は大変な成功。中国人民のパワーを結集し、訓練を重ねる時だ」と評価。香港の評論家、林和立(ウィリー・ラム)氏は「外から見ると、中国政府が過敏な対応を取っているように見えるが、実際は不安定要因の芽を完全除去しようとしている」と見る。

 一方、中国政府の駐香港中央連絡弁公室(中連弁)の●鉄川宣伝文体部長は「中国指導者は任期制度を実行し、中国経済を発展させて社会問題を重視しているので民衆の政府支持は高い」と徹底封じ込めを示唆している。

 最初の「中国ジャスミン革命」集会は当局の厳しい情報監視・言論統制で周到に予防して不発に終わったが、貧富の格差や官僚の不正・汚職や不平等感に根強い不満が一部にくすぶっていることを示している。中国ではエジプトのようにネット上でフェイスブックやツイッターを通して富裕知識人層が政変の原動力になったような動きはフェイスブックやツイッターを禁止していることから見ても民主化の拡大に直接つながらない部分はある。

3月6日、中国政府の駐香港中央連絡弁公室(中連弁)前で「中国ジャスミン革命 中国共産党打倒」と書いた紙をバナナにくくりつけて投げつける急進民主派「社民連」メンバー
 だが、4億5千万人以上のネットユーザーがいる中国では厳しい情報統制があってもインターネットや携帯メールを通じて中国外の反体制派と連携して新型デモが起こる多様性も残されており、中東の政変が中国民主化の地殻変動を促すきっかけになったことは間違いない。

 3月5日、全人代の政治活動報告をした温家宝首相は同報告の中で「大衆の不満解決を急がなければならない」と読み上げた。昨年、「政治体制改革なくして経済体制改革の成功はない」「国民の選挙権、知る権利、監督権を保障しなければならない」と党指導部の中で唯一、政治改革の推進を初めて訴えた温首相だが、今年の同報告では「インターネットの利用と管理を強化する」と述べ、昨年の言動との温度差が歴然としている。

 世界2位の経済大国に躍進した中国は一歩、国内に目を転じてみれば、所得格差拡大による不満増大やインフレ、違法な土地収用、環境汚染、官僚腐敗は深刻化し続けており、大衆の不満は増大するばかりだ。民主化デモの動きはその延長線上に必然的に起こっている。

 中国当局の民主化運動弾圧は今回に始まったことではない。1989年6月、軍が学生や市民らの抗議集会を武力鎮圧し、多数の死傷者が出た天安門事件をはじめ、最近では2008年3月、チベット自治区で分離独立を唱えるチベット仏教僧らを北京五輪破壊を扇動しているとして弾圧。09年7月、少数民族政策に不満が渦巻く新疆ウイグル自治区の暴動でも多くの犠牲者が出ている。

 だが、半世紀以上にわたる一党独裁や圧政に終焉(しゅうえん)を求める民主化抗議になりふり構わず蓋(ふた)をすることは国際社会が黙殺しない。経済格差と圧政の閉塞感への怒りの噴出だったチュニジア、エジプト政変を「鏡」として共有した不満を持つ中国の若者がドミノ化して反応したデモ集会のうねりを中国当局は真摯に受け止めるべきだろう。

●=赤にこざと