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2012年2月26日記


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薄煕来氏失速で団派に勢い 中国
今秋の指導部人事めぐり政争
保守回帰は頓挫、改革進まず


 
中国・重慶市トップの薄煕来党委書記(政治局員)が側近の王立軍重慶市副市長の汚職問題で今秋の党大会での政治局常務委入りが阻まれ、追い詰められている。打黒唱紅(暴力団追放と毛沢東時代の革命歌を歌う)の政治キャンペーンで大衆の支持を集めながら党指導部入りをもくろんでいた薄氏の保守回帰が頓挫し、胡錦濤総書記率いる共産主義青年団派(団派)が盛り返し、上海閥と手を組みながら権力闘争を有利に展開しようとしている。(深川耕治=2012年2月26日記)

 薄煕来氏(右)と長男・薄瓜瓜氏の記念写真。背後に写っている写真が薄煕来氏の父である故・薄一波元副首相=中国のネット画像より

 中国は次期最高指導者・習近平国家副主席が公式訪米を終え、今秋の党大会での党指導部人事を控え、政治の季節を迎えている。

 香港の人権団体、中国人権民主化運動情報センターによると、20日、北京で開かれた党中央政治局会議では薄氏が王立軍副市長の汚職事件の責任を取る形で辞任を申し入れ、会議で批准するか検討段階に入っているという。

 「請辞自保(辞職を願い、自分の政治生命を最低限保つ)」の形で完全失脚は免れたいとする動きだが、かねて太子党(党幹部子弟)の風雲児的な存在だった薄氏に対しては党幹部でも「保守回帰が極端過ぎる」と敬遠する意見も多く、側近の汚職がマークされることで次期指導部入りは土壇場で完全に阻まれた。

 2月5日、重慶市副市長の身分で教育機構の視察をする王立軍氏(前段右)=重慶のテレビ画像より

 この動きが急浮上したのは2日、薄煕来氏の右腕だった王立軍副市長が、兼務していた事実上ナンバー2の権力を持つ公安局長ポストを突然解任され、全く畑違いの教育・科学技術を統括する副市長に異動した時点からだ。重慶市政府も8日、「(王氏が)長期の激務で体調が悪いため休暇を取り、治療を受けている」と発表。

 香港メディアの情報を総合すると、その後、薄氏がかばい切れずに見捨てたと判断して激怒した王氏は、薄氏の親族ぐるみの汚職情報をちらつかせながら成都の米総領事館に亡命を求めたが拒絶され、党中央規律検査委員会に拘束された後、北京に移送されて取り調べを受けている。

 王氏は高校卒業後、遼寧省で警察公安畑を歩み、同省党委副書記を務めた薄氏に引き抜かれる形で2008年、重慶市公安局党委副書記に就任。09年以降、薄氏の指導下で「打黒(黒社会一掃)」運動を主導し、5700人以上を摘発して「打黒英雄」の異名を誇る存在となった。昨年5月、公安出身者としては異例の副市長に抜擢(ばってき)・昇格。重慶市内では絶大な権力を誇るようになった。

 しかし、03年、遼寧省錦州市の公安局長時代、後継として同ポストに着任した谷鳳傑氏が汚職で懲役12年の実刑判決を受けており、香港有力紙「明報」によると、同事件に関与した疑いで取り調べを受けているという。

重慶市副秘書長に就任した江沢民前国家主席の甥(江沢民氏の妹の息子)、●(台にオオザト)展氏

 王氏失脚で重慶市公安局党委書記に新任されたのは団派の関林祥氏。そして、重慶市副秘書長には江沢民前国家主席のおい(江沢民氏の妹の息子)、●(=台にオオザト)展氏が就任した。薄煕来氏の重慶市党委書記の任期も切れるため、次期重慶市党委書記には同じ団派のホープで第6革命世代のリーダー候補の呼び声が高い周強氏(湖南省党委書記)の名前が挙がっており、薄氏に代わって政治局入りする可能性も取り沙汰されている。

 いずれにしても、薄氏の昇進が阻まれる中で胡錦濤国家主席が率いる団派の政治力が強まり、江沢民前国家主席を頂点とする上海閥が勢力を維持し、両者が連携しながら政治権力のバランスが取られていく見通しだ。

 中国では、5年に1度の党大会で指導部人事が決定される前、指導部人事をめぐり政争が繰り返されてきた。

 1995年、政治局常務委入りが有力視されていた江沢民氏の腹心、陳希同北京市党委書記(当時)が北京市副市長の自殺を機に汚職容疑で失脚。2006年には政治局常務委入りが濃厚だった上海閥の陳良宇上海市党委書記が汚職容疑で検挙され、政治生命を失った。

 その背後には各派閥の水面下での激しい権力闘争があり、今回の王立軍事件も同様の複雑な政争が背景にある。

 2月23日付の中国共産党機関紙「人民日報」は「本紙評論部」の署名入り記事で「改革にはリスクがあるが、改革なくして党に危険は残る」と論評。重慶モデルの頓挫で保守回帰が失敗し、いかに改革しながら現体制を保持していくかに焦点が移りつつあることを強調している。