台湾関連情報

2013年9月20日記


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台湾与党、議長解任劇で混乱
次期総統選の主導権争い
支持率低迷、党内不満も

 
台湾の馬英九総統(与党・国民党主席)と国民党重鎮で競合関係にある王金平立法院長(国会議長)の対立が党内外に亀裂を生じさせ、来年の首長選や2016年の総統選に影響を与えかねない。馬氏は王氏の司法介入を理由に議席はく奪に動き、王氏は地位保全を求めて抗議。党内外から馬氏批判が高まり、馬総統の支持率は過去最低まで低迷、議会の審議も混乱している。(深川耕治=2013年9月20日記)


司法判断待つ両者
分裂なら選挙戦に与党不利
馬政権、レームダック化


 馬氏と王氏の背反の原因は、最大野党・民進党の柯建銘立法委員(国会議員)が6月、会計法違反などの罪に問われた事件に遡る。

 王氏が立法院長の立場にありながら曽勇夫法務部長(法相=当時)らに「検察側の上訴断念を違法に働き掛けた疑惑がある」として、9月6日、最高検の特別偵査組(特捜部)が盗聴を使った捜査結果を発表。これを受け、国民党主席を兼務する馬総統は「失望した。立法院長に不適任」と述べ、11日、与党・国民党の会議で「党の名誉を傷つけた」として王氏の党籍剥(はく)奪処分を決定した。

 王氏は次女・王声淳さんの婚礼のためにマレーシアを訪問中に不意打ちに遭ったように最高検の発表を知り、9月10日夜に急遽(きゅうきょ)帰台。疑惑を完全否定して「特捜部の捜査は越権違法行為。辞任や離党の意思がない」と最高検の捜査手法を批判した。

 王氏は国民党比例代表の立法委員という職責上、党籍を喪失すれば自動的に議席を失い、立法院長ポストを失職してしまう。党の党籍剥奪処分を受け、王氏は台北地方法院(地裁に相当)に地位保全の仮処分を申請し、9月13日、同院は王氏の地位保全を求める仮処分申請を認めた。

 これで王氏の党籍は当分の間、留保されるが、馬総統率いる国民党主流派は不服として抗告する準備を進め、法廷闘争の様相となってきている。

 同問題の背景には馬氏率いる外省系の党内主流派と王氏ら本省系の本土派との党内派閥抗争がある。2005年の党主席選で「台湾国民党」への転換を提起していた王氏が「中国国民党」を堅持しようとする馬氏に惨敗して以来、台湾南部で支持層の厚い本省人(戦前から台湾に住んでいた人々)である王氏と外省人(戦後、台湾に移り住んできた人)である馬氏との確執があり、李登輝元総統とも良好な関係を保つ王氏は対中依存を強める馬氏への警戒感を抱いていた。

 中国側の専門家は今回の国民党の内紛について2016年の次期台湾総統選に王氏が出馬を狙っていると判断したことで馬総統がその芽を封じる挙に出たと判断。福建社会科学院現代台湾研究所の郭健青副所長は「馬氏が8月中旬、パラグアイなど中南米5カ国を訪問するため、経由地のニューヨークに立ち寄った際、腹心の金溥聰駐米代表と次期総統選での王氏出馬対策を協議し、党籍はく奪につながった」とした上で「王氏が解任されれば立法院と行政院の矛盾、対立は避けられない。国民党は来年の五大首長選の際、湾南部で混乱、崩壊する可能性がある」と分析している。

 与党・中国国民党は李登輝政権時代、党内主流派は李氏率いる本省人による本土派だったが、野党に下野後、連戦氏、馬氏が党主席に就任していくことで党指導部の勢力図が一変。05年の党主席選で馬氏が勝利してからは馬氏率いる外省人系が主流派となり、本土派は非主流派に転落してしまっている。

 非主流派とはいえ、王氏は14年間、立法院長を務め、党実務派として台湾中南部での支持が厚いだけでなく、野党・民進党や親民党との関係も良好で超党派による根回しを得意とし、「馬氏に盟友なし、王氏に敵なし」(朱高正元立法委員)と評されるほどバランス感覚に長けている。

 馬政権は6月、中国とのサービス貿易協定を締結し、両岸の経済一体化を促進しようとしているが、与党内でも本土派は急速な対中依存で台湾が中国に呑み込まれることを強く警戒。王立法院長が取り仕切る議会では野党から反対論が噴出し、審議が遅々として進んでいない。

 原発建設継続でも議会が膠着(こうちゃく)し、野党に配慮する王院長に対して馬総統は警察権力を入れて議事を強行に進めさせようとして王氏が拒否したことにいらだちを募らせていたとされ、王氏の党籍はく奪で立法院長ポストを外省系で女性の洪秀柱副立法院長に横すべりさせる見通しだ。

 しかし、王氏の党籍はく奪問題では民進党も反発して10万人規模の反対デモも計画されており、党内外で王氏に同情的な声が広がり、馬氏にはかえって不利な状況に変わってきている。

 台湾の最新世論調査結果(「年代新聞民調センター」13、14日電話調査)によると、馬総統の支持率は昨年の再選以来、過去最低の9.2%まで下落。再任1年半の政権運営について「不満」と答えた人は80.5%で国民党支持者の間でも「不満」が66.7%に達し、「満足」と答えた人は9.2%(8月末の13%から3.8ポイント減)まで落ち込んでいる。

 来年の五大首長(台北、新北、台中、台南、高雄の各市長)選挙や地方議会選挙が16年春の台湾総統選前哨戦になるため、馬総統としては党内の混乱を最小限に食い止めたいのが本音だが、党内には支持率が低迷する馬主席で五大首長選や議会選を戦うことをすでに不安視する空気が流れている。

 中国の台湾問題専門家である清華大学台湾研究所の殷存毅副所長は「王氏が従来通り、党内に留まって連戦氏の一派として継続すれば両岸統一問題に影響は少ない。ただし、国民党を飛び出し、自派を形成するようなことになれば影響が大きい」として王氏の今後の政治動向を注視している。

 王氏が地位保全の裁判で敗北する事態になれば、台湾中南部の王氏を支持する国民党議員の離反も噴出しかねず、馬総統が残り任期二年半を待たずにレームダック化すれば、党内が一枚岩になれず、次期総統選の各派閥の主導権争いにも深刻な影響を与えるとの危機感が募っている。