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2012年9月21日記


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反日デモに右派の影 中国
胡氏の軍事委留任濃厚に

 
中国各地で続いた一部暴徒化した反日デモは、柳条湖事件を記念する9月18日を過ぎて当局の指示で収束したが、中国政府は外交、経済、文化、教育、スポーツ、海上示威活動などを制裁手段に使い、対日攻勢の第二幕に入った。来月にも開かれる第18回党大会を控え、次期最高指導者に内定している習近平国家副主席の動向や派閥抗争が激化する指導部人事に注目が集まっている。(深川耕治=2012年9月21日記)

習氏の健康不安払しょくへ 新中香港要人の董建華氏
デモの背後に周永康氏か

 9月11日から始まった反日デモは15日以降、中国内の百二十カ都市以上に拡大。暴徒化したデモ参加者は瀋陽や北京、広州、上海の日本総領事館前を荒らしただけでなく、長沙、西安、青島などの日系企業やホテル、商店、車輌を襲撃し、放火や破壊、略奪行為を繰り返した。

 デモは当局への不満へ矛先を変える反政府デモに転化し始め、陝西省人民代表大会の所在地、深セン(土ヘンに川)市党委員会の建物も襲撃され、エスカレート。日中友好に尽力した代表格であるパナソニックやイオンの工場さえも焼き討ちに遭い、日中国交正常化40周年を目前に控え、泥を塗った形だ。

 とくに各地のデモで共通するのは、多数の毛沢東肖像画が掲げられ、妻による英国人殺人罪で失脚した薄煕来前重慶市党委書記を支持する標語が散見されるなど、貧富の格差拡大に不満を抱く毛沢東礼賛・薄煕来支持の右派勢力が薄氏の再評価を求めて胡錦涛政権を暗に批判、次期最高指導者となる習近平国家副主席を突き上げ、習氏の立場が不利になったことだ。

 
水泳時にプールサイドで転倒して背中を負傷したとされる習近平国家副主席
 背景としては、反日デモに乗じ、薄氏擁護を主張してきた江沢民派で公安トップを取り仕切る周永康政治局常務委員による胡錦涛派への最後の反撃との見方も出ている。

 先月、党幹部や長老が集う非公式会議の北戴河会議では政治局常務委員会メンバーを現行の9人から7人に削減する案が内定したとされ、胡錦涛派にとって有利、江沢民派や習近平派にとって不利な新人事案となっている。

 習近平国家副主席は9月1日に共産党の幹部養成機関、中央党校で演説して以来、消息が途絶え、健康不安説が浮上。9月15日、北京の中国農業大学で行われたイベントに出席し、約2週間ぶりに公の場に姿を見せ、同19日、パネッタ米国防長官と会談して健在である姿を中国国営メディアがこぞって伝えた。

 消息が途絶えた二週間、習氏に何があったのか。米CNNテレビは9月18日、元香港行政長官で中国の人民政治協商会議(政協=国政助言機関)副主席を務める董建華氏とのインタビューを報道し、董氏は「(習近平氏は)水泳で背中を痛めていたが、既に回復した」と答えた。香港メディアの情報を総合すると、今月4日、習氏は水泳をした際、プールサイドで滑って転倒し、背中を痛めたという。

 親中派香港要人が中国指導者の健康状態について答えるのは極めて異例だ。

 9月18日、CNNとのインタビューに答える董建華元香港行政長官(右)=CNNのテレビ画像より
 さらに董氏は「従来の慣例通り、胡錦涛氏はしばらくの期間、軍事委主席の座に留任するだろう」と述べ、胡錦濤国家主席は江沢民前主席と同様、今秋の第18回党大会などで共産党総書記と国家主席を辞めた後も中央軍事委員会主席に留任する可能性が高いことを説明した。

 江氏は02年秋に党総書記、03年春に国家主席を退任したが、その後も2年間は軍トップである中央軍事委主席に留まったことから胡氏も今秋の党大会で総書記退任後、約2年間は軍事委主席に留まることを示唆している。これは江氏から胡氏への権力委譲の手法が今後、慣例となることでもある。
 実は、習氏の健康問題まで発言した董氏と習氏の関係は密接だ。

 董氏は2005年に任期途中で行政長官を辞任し、政協副主席に就任。2008年には中米交流基金会を創設し、対米民間交流を行う中国側の代表的人物の一人となり、米国内各地で講演したり、習近平国家副主席が今年初めて訪米した際は全行程を同行した。

 香港返還直後、習氏は福建省長となり、2001年、香港行政長官だった董氏とは香港へ経済貿易代表団の一人として香港でハイレベルの接待を受け、懇意になった。翌年、董氏は夫人を同伴して福建省を訪れて休暇を過ごし、2005年1月には習氏が浙江省党委書記として香港入りし、会談。同年3月には行政長官を辞任している。

 昨年8月、バイデン米副大統領が北京を公式訪問した際には中国側の受け入れ要人として活躍し、今年2月、習氏が初訪米した際は中国側代表団の一人として参加。今年3月の香港行政長官選挙では江沢民派が唐英年氏を支持したのに対し、董氏は梁振英氏を支持。習氏と政治的に足下を合わせたスタンスだ。かつて江沢民派として初代の香港行政長官となった董氏はいまや米国とのチャンネルを持つ習近平派の代表的な香港要人となって尖閣諸島の領有権をめぐり、日米安保分断による対米工作に腐心している。

 中国は反日デモで振り上げた拳を下げられないまま、日中国交正常化40周年の式典を行う構えで、10月1日の国慶節、党大会開幕という政治の季節を本格的に迎える。