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2013年1月4日記


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行政長官辞任求め元旦デモ 香港
違法建築疑惑に不満渦巻く
支持率低迷続く梁行政長官


 
1月1日、香港の中心部で大規模な反政府デモが展開され、昨年7月に香港政府のトップに就任したばかりの梁振英(C・Y・リョン)行政長官の辞任を求めて約13万人(主催の民間人権陣線発表)が参加した。一方、親政府派も同日、梁氏支持を訴えるデモを行い、主催団体によると約6万人が参加。香港は新政権発足からわずか半年で中国政府の露骨な干渉に反発する民主派と親中派のせめぎ合いが激しさを増している。(深川耕治=13年1月4日記)


親政府派も対抗デモ
普通選挙早期実現が鍵
施政報告なお不信続く
中央はレームダック化を懸念

1月1日、香港島中心部のセントラル(中環)に向けて梁振英行政長官の辞任と普通選挙の早期実現を求める大規模デモが行われた 
 「梁振英は即時辞任せよ」「長官に騙された」「普通選挙の完全実施を」。若者から老人まで幅広い層が黒っぽいジャンパーやコートを着てシュプレヒコールをあげながらデモ行進した。香港での元旦は、例年、新年のカウントダウンや花火大会で賑わうほかは主要道路は混み合うことはないが、今回は寒空の中、7月1日恒例の民主派デモと似た盛り上がりを見せた。

 一国二制度の香港では、1997年の中国返還以降、トップを決める行政長官選挙は中国政府の意向を色濃く反映できる間接選挙が続いており、民意を示す方法としてデモは最大の手段の一つ。参加者は梁長官の不誠実さを風刺するイラストや「地下共産党員は大陸へ返れ」「うそつきには騙されない」などのプラカードを掲げて香港島中心部を行進した。

 2003年の新型肺炎(SARS)騒ぎの際、同じ主催者の民間人権陣線が民主化デモを行い、翌年のデモは参加者53万人に達し、董建華行政長官(当時)を辞任に追い込んだ経緯があるため、反政府デモは規模が拡大すれば政権の命取りになりかねない。今回のデモ参加者は主催者発表で約13万人(警察発表は約2万6千人)で現政権に一定の圧力となっていることは間違いない。

 今回の元旦デモの発端は昨年3月、香港行政長官選挙で梁振英氏が当選した経緯にある。
 行政長官選挙の期間、江沢民前中国国家主席に近くて本来は本命候補と言われていた対立候補の唐英年(ヘンリー・タン)元政務官の自宅違法建築問題が浮上し、梁氏はこの問題を徹底攻撃して形勢逆転し、当選を果たした。

 
昨年6月に浮上した梁振英行政長官の邸宅の違法建築問題。ビクトリアピークの超高級住宅には香港メディアがクレーン車を使って撮影に殺到した
 しかし、昨年6月、今度は梁氏自宅の違法建築問題が浮上し、行政長官就任直前から市民の不信が高まった。当時、ビクトリアピークとレパルスベイの超高級住宅が違法改築されて長期間、野放し状態だった事実が香港メディアによって次々と発覚し、梁氏は行政長官就任後、不明確な釈明に終始し、香港市民の強い不信と反発を招いて今回のデモの発展した。

 昨年3月の行政長官選挙で違法建築問題を梁振英氏から責め立てられて敗北した唐英年氏は1月3日の地元ラジオ番組で「建築問題の違法性は十ヶ月たっても調査段階のまま初期の結論すら出ていない。香港人は一人ひとりが犯した間違いを受け入れるが、間違った後、速やかに誠実な態度を取ることが求められる」と述べ、自分に対する当局の冷遇と梁行政長官の不誠実さを批判した。香港各メディアによると、唐英年氏は敗北後も行政長官ポストを狙っており、梁行政長官は5年間の任期を全うできずに辞任するような事態に陥れば、再び中央政府の意向に沿えば出馬する可能性を虎視眈々と狙っている。

 一方、危機感を抱く親中派も同日、梁行政長官を支持するデモを行い、参加者は主催者発表で6万人(警察発表は8千人)だった。3日の香港各紙では、この親政府デモで主催者側が参加者一人当たり250香港ドル(1香港ドル=12円)~300香港ドルを報酬として支払った疑惑が現場写真と共に報じられており、やらせの“半官営デモ”との批判が強まっている。

1月1日の親政府派の梁振英行政長官(中央)支持デモは新界総商会が組織。昨年7月、同総会で梁行政長官はあいさつしていた
 香港返還時、「香港の良心」と欧米メディアから評された陳方安生(アンソン・チャン)元香港政務官は1月3日、「(董建華初代行政長官や曾蔭権前行政長官に比べて梁振英行政長官は)だんだんと状況が悪くなってきている。即時辞任は現実的ではないが、今後一、二年内に改善が見込めなければ再び辞任要求気運が高まる」と警鐘を鳴らし、1月16日に発表される梁行政長官の施政報告が「支持率挽回のチャンス」と見通す。

 中央政府は香港の選挙改革問題について、すでに2017年の行政長官選挙を普通選挙で実施し、遅くとも2016年までに香港立法会(議会)選挙も完全普通選挙にすることを了承しているが、行政長官の政治改革案が立法会で3分の2以上の賛成多数でしか通過しないため、難航が予想され、改革のスピード次第では香港市民の不満はさらに増していきそうだ。

 梁行政長官の支持率は昨年7月の就任以降、下落し続けている。香港中文大学が12月下旬に行った最新世論調査結果によると、梁行政長官の16日に行う施政報告に対して「期待が持てる」と答えた人は50.7%、「大変期待が持てる」が13.5%で「何の期待も持てない」が33.8%だった。

 新政権発足後、わずか半年で「何の期待も持てない」が全体の3分の1を占める状況は世論としては厳しい船出であり、中央政府は早くもレームダック化を懸念。社会保障など民生問題で挽回できる措置が打ち出せなければ、行政長官の辞任要求デモはさらに勢いを増す火種を残している。