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2012年9月3日記


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親中派と民主派が拮抗 香港立法会選挙
国民教育に反発機運 嫌中感情も

 
7月1日に中国返還15周年を迎えた香港では9月9日、香港立法会選挙(議会=定数70議席・任期4年)が投開票される。議席数が60議席から70議席に増員されて選挙制度が変わる中、樹立したばかりの梁振英政権の信任度が反映され、民主派との接戦が展開されている。(深川耕治=2012年9月3日記)


民主派分裂、親政府派に利
尖閣上陸は双方にプラス


急進民主派の人民力量は民主党を批判するパンフレットを配りながら議席増を目指している
 立法会選挙は香港の政局動向を見る上でのリトマス試験紙だ。中国返還後、4度目となる今選挙は、当初、中央政府が間接的に牛耳りやすい親中派、新政府派に有利と見られていた。

 過去8年の動向を見ると、3回目(2004年)の立法会選では、親中国派と親政府派が議席の過半数を制し、民主派の主流であった最大野党・民主党が衰退。4回目(2008年)の立法会(定数60議席)選では民主派が23議席を獲得し、親中派が推進する重要法案を否決できる全体の3分の1をかろうじて確保したものの、残る3分の2は親中派政党などが占め、民主派の衰退傾向は続いている。

 今選挙では、議員定数が70議席となり、地区別直接選挙枠(35議席)、職能別選挙枠に設けられた区議会議員からの直接選挙枠(5議席)、間接選挙の職能別選挙枠(30議席)となっている。とくに直接選挙枠が30議席から40議席になることで民主派有利に働くとの見方が強かったが、民主派の離散集合、急進派と穏健派の対立で民主派の議席増は予想以上に厳しい。

 民主派内での分裂、亀裂は深刻だ。

議席数減が予想される民主派最大の民主党。劉慧卿(エミリー・ラウ)党副主席(左から2番目)が女性議員として健闘するが、大半の民主党候補は厳しい選挙戦となっている 
 「民主党(何俊仁主席)は中連弁(中国政府の駐香港中央連絡弁公室)と結託し、政治改革で香港を売ろうとしている。結果的に民主派を分裂させ、(香港内の)親中国共産党勢力の拡大を助長させている」。

 急進派の民主派政党・人民力量の劉嘉鴻主席は民主派の最大政党である民主党を痛烈に批判。「偽民主派売港(港は香港の意)実録」という民主党批判のパンフレットを20万冊発行し、選挙期間中に配っている。

 支持層の目減りに危機感を募らせているのは民主党だ。

 前回の同選で次点となり、辛酸をなめた民主党の楊森・元党主席は「政治改革と民政問題は別物だ。わが党が2議席前後しか獲得できないような事態に陥れば香港人が理性的に支持できる穏健な政党が失われ、左右の急進派ばかりに支持が偏っていく」と危機感を露わにする。

 8月下旬に行われた香港大学の世論調査によると、民主党候補者の大部分は支持率が低下。現在の7議席から1〜4議席にまで後退し、人民力量の候補者は支持率が向上し、現有の2議席から5議席に増える勢いだ。

香港の活動家による8月15日の尖閣諸島への上陸は親中派と新政府派、民主派の双方にとって選挙で有利な情勢となっている 
 同大が行った8月上旬の世論調査結果でも、地区別の直接選挙枠では35議席のうち新たに増える5議席はすべて親政府派が獲得し、民主派が19議席、親政府派が16議席となる見通し。職能別選挙枠に設けられる区議会議員から直接選挙で選ぶ5議席では民主派が2議席にとどまり、親政府派が3議席となると予想している。民主派は親中派が推進する重要法案を否決できる24議席に達することすら危ぶまれる情勢だ。

 一方、親政府派にとって今選挙は決して追い風が吹いているわけではい。

 懸念されるのは就任してわずか2ヶ月の梁振英行政長官に対する支持率低下だ。8月中旬、香港大学が行った支持率調査によると、梁長官の支持率は36%(就任時は45%)に下落し、就任後最低となっている。

苦戦する民主党は何俊仁主席(右から2番目)と共に陳方安生(アンソン・チャン)元政務官(右から3番目)がかけつけて支持を訴えている
 支持度は49ポイントで、合格ラインと見られる50ポイントを初めて下回り、董建華元行政長官や曾蔭権前行政長官のレームダック化した政権末期と酷似した状況だ。

 7月から8月にかけ、香港高官である陳茂波発展局長の違法改築問題、国民教育反対デモが起こり、政府の評価を失墜させたことが大きい。

 香港の有権者、とくに中間層、無党派層は中国政府の政治介入に敏感だ。香港政府が今月から中国本土の愛国主義教育に似通った国民教育を小中学校で段階的に開始することを計画し、学校の「中国化」を憂慮する教育関係者や民主派だけでなく、カトリック香港教区など宗教団体の多くも反対の立場を取っている。

 7月29日には約9万人(主催者発表)の大規模な反対デモが行われ、「洗脳反対」のプラカードを持ち、学校現場での中国共産党礼賛の刷り込み教育に対して反対の立場が拡大している動きは、梁振英新政権への反発・失望の象徴だ。この問題は今選挙の大きな争点となっている。

 香港の活動家らが沖縄県の尖閣諸島に違法上陸したことは、上陸に向かう船を制止しなかった香港政府、活動家の大半が急進民主派である点から双方に支持を上げさせ、香港は民主派と親中派の両極への支持が高まり、中間派が空洞化する政治情勢に進みつつある。