香港特集企画記事

2004年2月10日記


中国政府、香港政策の引き締め強化
選挙改革で議論沸騰


 二〇〇七年以降の香港行政長官と立法会議員の全面的な直接選挙実現に関する議論がさらなる盛り上がりを見せている。民主化要求が高まる香港政局の複雑化に対応し、中国中央政府は香港駐在出先機関の人事異動や香港情勢の研究を拡充するなど対香港政策の強化を図っている。三月に行われる全国人民代表大会(全人代=国会に相当)でこの問題が取り上げられる可能性もあり、事態は国家レベルの問題に発展しているもようだ。(深川耕治=2004年2月10日記)


 香港の選挙制度改革の問題が三月に北京で行われる全人代と中国人民政治協商会議(全国政協)の両会議の議題に盛り込まれる可能性がある。これは二月四日付の香港紙「星島日報」で、ある全国政協常務委員が明らかにしたもので、中国中央政府が今後さらに香港問題に注視するため「これまでの寛容的な態度から一転して、厳格に基本法に基づいて事を行うようになる。つまり香港政策は引き締められるだろう」との見通しを示している。

 中国中央政府の香港駐在出先機関である中央人民政府駐香港特別行政区連絡弁公室(中連弁)では、対香港政策をや強化するため昨年九月から幹部の人事異動が行われている。昨年末までに中央から四人の新たな副主任が派遣され、副主任は八人の陣容となった。今後も大幅な変動が控えているもようで、一月十九日付香港紙「香港経済日報」によると、現職の高祀仁・主任に代わって先に香港入りした彰清華副主任が主任に昇格する見込みだ。彰副主任は曽慶紅・国家副主席に近い人物だという。また、国務院の機構改革で縮小傾向にあった香港マカオ弁公室も、人員を約一割増やす見通しが報じられている。

 中国中央政府はまた、香港問題の学術研究にも力を入れ始めた。香港の返還後、はば停止していた香港情勢に関する研究を昨年七月の大規模デモの後に強化したと二月二日付香港紙「明報」が報じている。

 同紙によると、中央政府の主要シンクタンクの一つである上海東亜研究所の章念馳・所長が「一九九七年以前は本土の学者は香港問題に関する研究を非常に重視していたが、返還によって問題は解決したとみなしている。それは大変浅はかで、間違いであったことが分かった」と語り、同シンクタンクが昨年七月以降に香港間題の研究を強化したことを明らかにした。

 九五年に民間組織として設立された同シンクタンクは、台湾、香港、マカオの問題から中国と米国、日本との関係に関する研究を行っている。

 だが、香港・マカオに関する専門家は返還後はとんど研究所を去り、同シンクタンクは台湾問題を主に研究する機関として認識されてきた。章所長自身も台湾との交流窓口である海峡両岸関係協会の汪道涵会長の重要なブレーンとして知られている。

 だが、章所長は香港誌「中国評論」の学術顧問でもあり、香港各界とも頻繁に交流している第一線の香港ウオッチャーである。

 昨年七月四日には同シンクタンクの沈銘遠・副所長が北京に赴き、中国中央政府に対して昨年七月一日の五十万人デモに関する報告を行った。八月にも同シンクタンクが中国共産党上海市委員会に香港問題に関する報告を行っているほか、董建華行政長官の特別顧問を務めていた葉国華氏を招き、区議会選挙に関する懇談会を行っている。

 大学での香港・マカオ問題研究機関として知られる広州市の中山大学香港マカオ研究センターも、経費不足から廃止の危機に直面したこともあったが、昨年七月以降、広東省政府や中国中央政府から重視され始め、センターの学者は政府幹部から香港政策に関する意見を求められるようになった。今月初めには同センターの学者が中央政府のサポートを受け、香港問題研究のために香港中文大学、香港大学への派遣が決まったほどだ。

中国本土から基本法専門家が香港入り(04年2月10日記)

 香港基本法では、第四五条と付件一で行政長官の選出方法について規定している。それには「香港の実情に応じて段階的に改革することを原則とし、最終的に直接選挙実現の目的を達成する」との旨が記されている。二〇〇七年以降の行政長官の選出方法については、「改定するには立法会議員の三分の二以上の賛成を要し、行政長官の同意を経て全人代常務委員会の承認を得なければならない」となっている。立法会議員の選出方法についても第六八条と付件二ではば同様に規定されている。民主派政党・政治団体はこれを根拠に二〇〇七、〇八年に行われる行政長官選挙、立法会議員選挙での全面的な直接選挙導入を訴え、デモ活動などを展開している。

 昨年十二月には、香港基本法の起草などに携わった中国本土の法律専門家四人が選挙制度改革における原則として「香港市民だけで決定できることではない」などの見解を示した。

 董建華行政長官は一月七日に発表した施政報告で、市民の民主化要求への対応として曽蔭権(ドナルド・ツァン)政務官を筆頭とするタスクフォースを設置し、中央政府から意見を聴取して選挙制度改革を検討すると述べた。

 シンクタンクの一国両制研究センターは十九日、選挙制度改革に関する円卓会議を開催。先に選挙制度改革の原則を示した本土の法律専門家四人のうち、基本法起草委員と特区準備委員会委員を務めた蕭蔚雲氏(北京大学教授)と全人代常務委員会基本法委員会委員の夏勇氏(中国社会科学院法学研究所所長)の二人が香港入りし、香港の法律専門家八人を合わせた計十人で議論が交わされた。会議では特に基本法で示されている「段階的に改革する」や「香港の実情に応じて」などの概念について各氏の見解が分かれ、蕭氏は香港基本法起草時は二〇〇七年という早い時期に行政長官の直接選挙を実現するなど念頭になかったことを指摘した。

 香港中文大学の世論調査では、中国本土の法律専門家が選挙制度改革に対する見解を発表して以来、それまで上向きだった香港市民の中央政府に対する満足度に低下が見られた。