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2012年7月1日記


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民主化弾圧への怒り、デモ再燃 香港返還15周年
胡国家主席迎え祝賀一色ならず
 香港返還15周年となる7月1日、中国の胡錦涛国家主席が香港での式典に参加し、香港トップの行政長官に就任する梁振英氏の就任式で中央政府の指導力をアピールする。だが、梁氏の住宅違法増改築問題が発覚し、就任直前から支持率が下落。湖南省の民主運動家・李旺陽氏の死亡事件に対する真相究明や梁氏への糾弾を求めるデモが同日準備され、祝賀ムードとは裏腹の多難な船出となっている。(深川耕治=2012年7月1日記)

新行政長官の手腕に疑問の声
進む本土との経済依存


 6月27日、北京を訪れた曾蔭権(ドナルド・ツァン)香港行政長官(当時)と梁振英次期香港行政長官に談笑する習近平中国国家副主席(左端)
 節目となる香港返還日、恒例となった中国返還を祝賀する親中派と中国本土への政経依存を警戒する民主派のせめぎ合いが各種イベントやデモで展開される。香港返還10周年だった5年前に比べ、中央政府や香港政府への不満材料が増え、2003年や04年の新型肺炎(SARS)や国家安全条例案反対をめぐる50万人超が参加する民主化デモほどではないにしても、中央政府への不満が渦巻く不穏な空気が広がっている。

 胡錦涛国家主席は07年7月1日、中国返還10周年の香港での式典にも参加し、香港に対する様々な経済支援策を発表したが、今回も香港と中国本土との経済融合を強化するさらなる経済支援策を打ち出し、新政権への支持を顕示する見通しだ。

 
中国の胡錦濤国家主席が出席する夕食会会場周辺で、警察官からスプレーを吹き付けられる香港市民愛国民主運動支援連合会(支連会)のデモ参加者たち=6月30日、香港・湾仔の中環広場で
 だが、29日に香港入りした胡主席の警備は5年前を上回る厳戒体制。一部行程は機密となっており、温家宝首相のような「親民」路線とは程遠く、民主化デモによる動乱、中国要人の安全確保に神経過敏なほど躍起となっている。

 神経過敏になる理由の一つは香港トップ、新行政長官の梁振英氏をめぐる香港人の不満。もう一つは不審死しながら自殺処理された湖南省の民主運動家・李旺陽氏の死亡真相が闇に葬られたことへの怒りと不満が渦巻いていることだ。

 民主派からたびたび「中国共産党の秘密党員」疑惑を浴びせられている梁振英氏は香港行政長官に就任する直前の22日、香港紙「明報」が梁氏の香港島・ビクトリアピークにある自宅のガラス張り増築部分の違法性を報道。梁氏はその指摘を受けて違法増築部分を完全撤去し、謝罪した。その後も数カ所の違法増改築疑惑が指摘されて、早くも信用が失墜し始めている。

 これは香港行政長官候補だった唐英年(ヘンリー・タン)前政務官が自宅の違法建築を同紙から報道されて落選の憂き目に遭った状況に酷似しており、中央政府のお墨付きを得た行政長官候補者に対するスキャンダル報道は間接選挙である香港行政長官選挙が実質的には中央政府の支持を仰いだ人物が絶対的に有利とされる有名無実化した一国二制度システムへの不満の裏返しでもある。

 香港大学の最新世論調査(6月19〜25日調査)によると、梁氏の支持率は51.3%で前回6月初め調査より2.8ポイント下落し、とくに違法増築が発覚した22日調査では39%に急落。支持率50%が合格ラインと言われる中、曾蔭権(ドナルド・ツァン)前行政長官ですら就任時は70%を超える支持率だったことから比較しても就任直前から支持率50%を割る異常事態だ。

 03年から始まった7月1日の民主化デモ(主催・民間人権陣線)は今回、政府と財閥の癒着や香港への共産主義統治推進に抗議するスローガンを掲げ、5万人の参加見通しを発表。だだし、台風6号の影響で暴風雨になった場合、2日にデモを延期することになっている。香港政府や親中派は天候悪化で民主派デモの勢いを抑制できる可能が残されている。

 民主化組織の人民力量も6月30日、胡主席が宿泊する湾仔(ワンチャイ)周辺でで李旺陽氏死亡の真相究明を胡主席に求めるキャンドル集会を開催。厳戒すぎる胡主席の警備について天安門事件の再評価を中国政府に求めている香港市民愛国民主運動支援連合会(支連会)は「警察当局は反テロの大義名分で一般市民の意見表明の権利に圧力をかけている」と批判している。

 一方、香港は主力産業である観光業は中国本土からの観光客急増で順調だ。6月14〜16日、湾仔で香港国際観光展が行われ、日本を含め54の国と地域が出展。韓国、台湾、日本のブースよりも中国本土からの出展ブースのスペースが広い。香港観光局の観光統計によると、今年5月の香港への観光客数は前年同月比12.7%増の約363万9千人。うち中国本土からの観光客数は前年度月比19.4%増の252万5600人。全体の69.4%を占めている。

 今回も中央政府の手厚い保護政策で香港と中国本土、とくに広東省との経済・貿易連携は密接に強化され、中国本土への経済依存はさらに加速することになりそうだ。