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2013年8月30日記


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控訴で裁判闘争第二幕へ 薄元書記公判
罪状否認、酌量なし覚悟
懲役20年前後の重刑か
 収賄、横領、職権乱用の罪に問われた薄熙来・元重慶市党委員会書記(64)に対する公判が8月26日、山東省済南市中級人民法院(地裁に相当)で結審した。今後は判決次第で控訴し、罪状を否認した薄被告が重刑に処せられても貧富の格差是正を望む“庶民の英雄”として影響力を持つのか、法廷闘争の攻防が続く。(深川耕治=2013年8月30日記)


党の正当性、公開し演出 中国当局
「庶民の英雄」なお影響力も


起訴内容を全面否認した薄煕来被告
 8月26日、検察側は最終陳述で「罪は極めて重大。情状酌量の余地はない」と厳罰を要求、薄被告は検察の起訴を「非常に一方的、独断的だ」と批判し全面対決する姿勢を鮮明にして結審した。

 中国で「世紀の大審判」と称された薄煕来被告の公判が終わり、翌27日、習近平総書記(国家主席)は政治局会議を開き、「(公判は)充分に震懾力(しんしょうりょく=震撼させる力)を発揮した」(香港紙「星島日報」8月28日付)と述べ、「虎もハエも一網打尽にする」と強調する習氏が反腐敗闘争をさらに推進する決意を強調した。

 新華社電によると、同会議では、11月に北京で党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)を開催することを発表、薄被告の判決は3中総会の開催前までには行われる可能性が濃厚だ。

 習国家主席は28日、薄被告が市トップを務めて地元民から今なお高い評価を集めている大連市を訪れ、船舶重工業団公司を視察。

薄煕来被告(左)と妻・谷開来受刑者、その長男・薄瓜瓜
 薄被告の5日目の公判で被告本人が「現在着用しているジャケット、クローゼットに置いているスーツは大連市新金県の郷鎮企業が製造したものだ」と話したため、同企業「大楊創世」の株価が急騰してストップ高となるほどの人気となり、薄被告がトップを歴任した大連、重慶での地元民の根強い支持が全国的に拡大しないよう、党指導部は神経を尖らせなければならない状況だ。

 庶民に根強い人気がある薄被告が26日に法廷で行った最終陳述書については、当局に一部削除される前の完全版が29日、ニュースサイト「多維新聞網」に発表された。

 「首相になる野心があると言う人もいるが事実無根。十七回党大会以降、人事は確定し、李克強同志が首相になることは確定されていた」「中国のプーチンになろうとしていると言う人がいるが事実無根」「三十年来、大連、商務省、重慶をめぐり、深く人民を愛している。人民を裏切っていないし汚職分子ではない」と支持者に向けて訴えている内容が盛り込まれ、罪状を否認。貧富の格差拡大や腐敗蔓延に対する民衆の不満を糾合し、悲劇の英雄として、毛沢東の再来を願う保守派のカリスマとしての威厳を保つ道を選んだ。

遼寧省大連市トップ時代の薄煕来被告は地元で熱烈な支持を受けていた
 薄被告は結審した当日、北京に戻され、同市昌平区にある秦城監獄に収監され、判決を待つ。過去の前例としては上海市トップだった陳良宇元上海市党委書記の場合、収賄罪や職権乱用罪で07年8月に逮捕された後、08年3月、天津市で罪状を全面的に受け入れた公判後、秦城監獄に収監され、翌4月には懲役18年、財産没収30万元(1元=15円)の一審判決が下されている。

 中国の刑事訴訟法の場合、判決は結審後、一ヶ月以内、遅くとも一ヶ月半以内で出す規定になっており、特殊な事情の場合、さらに一ヶ月延長が許される。薄被告の裁判の場合、最長でも二ヶ月半後の11月上旬までには一審判決が下されることになる。

 長年、中国で刑事事件の裁判を担当している弁護士の楊学林氏や劉暁原氏は「懲役二十年前後となるだろう」と予想し、「被告が重刑でありながら罪状を認めない場合、被告に不利」と分析している。
 薄被告は最後まで罪状を否認したことで、判決を不服として控訴する可能性が濃厚だ。11月上旬までには判決が下された後、控訴すれば、公判の第二幕で裁判の関心度はさらに国内外で高まることが予想される。

 注目すべき動向は、王立軍受刑者が米総領事館に駆け込んだ際、病気治療中だとの虚偽発表があった問題で26日、中国版ツイッターの微博(ウェイボ)で公開された「薄熙来が上の指示に従ったと再び強調した」と検察側が説明した部分が削除された点だ。

劉西堯元教育相(第二機械工業相)の告別式に江沢民元国家主席や胡錦涛前国家主席らと共に花輪を贈った周永康氏=湖北衛視台のテレビ画像より
 当時、党政治局員だった薄被告の「上」には当時は9人の政治局常務委員がいて、その中でも、江沢民派の周永康氏(当時、党序列9位)を意味すると香港各紙は報じている。

 周氏は薄被告が重慶市党委書記時代、重慶を視察して薄氏が行った打黒(暴力団排除)運動を支持し、昨年3月の全人代、政治協商会議でも政治局常務委員の中で一人だけ、重慶代表団と接見し、薄被告との密接な関係を示唆していた。23日付の中国語ニュースサイト「博訊新聞網」は薄被告の事件に関与して近く逮捕される動きがあると報じており、薄被告とは権力闘争で非常に近い関係だった周氏に対する当局の動きが注目されている。

 8月29日、周氏は武漢で行われた劉西堯元教育相(第二機械工業相)の告別式に江沢民元国家主席や胡錦涛前国家主席らと共に花輪を贈ったことが湖北衛星テレビの報道で確認されたが、前途は不透明だ。

 昨年11月の党大会以来、かつて四川省トップだった周氏の息のかかった同省幹部ら(周氏の秘書を十年以上務めた郭永祥元四川省副省長を含む)が汚職事件で取り調べを受けている。また、石油などエネルギー系国有企業に絶大な影響力を誇った周氏だが、中国石油天然ガス集団(CNPC)や子会社のペトロチャイナの汚職が明らかになり、本人にも捜査の手が回るのは時間の問題との見方も出てきており、習政権が本当に「虎もハエも一網打尽にする」ことができるか真価が問われている。