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2013年2月15日記


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香港人の移民ブーム消失
中国依存、経済安定で冷める

 
世界最大の“移民輸出大国”である中国はアジア、欧米、オセアニア、中南米、アフリカの順で移民数が多い。その一方、1997年7月に英国から中国に返還された一国二制度下の香港では返還前、中国の影響力を憂慮した香港人が北米や欧州などに大量移民する移民ブームだったが、現在は中国依存による経済安定で移民ブームは消失している。(深川耕治=2012年2月15日記)


豪州人気、米国志向減る
中国人の海外移民は世界一


中国の春節期間、帰省ラッシュで車窓から乗り込む人々
 中国では春節(旧正月=今年は2月10日)前後の帰省ラッシュ期間である春運期間(1月後半から3月前半の約40日間)、鉄道、道路、航空機などで様々な交通手段で移動する延べ人数は、今年は34億人と予想されている。海外の華僑、華人の帰省数は含まれておらず、原籍、故郷への帰属意識が強い中華民族にとってさらに多くの民族大移動が行われている。

 香港出入境管理局の予測では香港でも2月8~17日の10日間に陸海空の各ルートで出入境する人は前年の旧正月シーズンに比べ11%増の818万人。だた、その一方で香港住民の場合、中国返還前にブームとなった海外移民は激減している。

 香港保安局の発表によると、昨年は香港人約7300人(前年比12%減)が海外へ移民。人気トップは米国で2600人(前年比35%減)、二位が豪州で2200人(29.4%増)、三位がカナダで600人(14.3%減)となっている。

 香港が中国に返還された97年は三万九百人だったのに対し、01年から毎年1万人前後まで減り、06年は一万三百人で十年前の約三分の一になった。94年に250社あった移民仲介業者は今ではわずか4社だ。

 香港の移民事務手続き業顧問、関景鴻氏は「中国系の移民は『二等公民』との差別を受けやすいため、香港人の海外移民を希望する心理は極めて少なくなった」「香港では中国国民化教育をめぐる政治的な動きで海外留学熱は高まっているが、中国本土との政治矛盾が移民を誘発するようなことはない」と分析。返還直前である1997年の移民数は95年、96年の2年間に移民申請したケースの反映であり、「当時は、香港返還後の将来を不安視する動きが高まって3万人を超えたが、投資移民や技術移民はすでに資格がある人は申請を終えており、現在は家族と同居するための移民が多いだけ」と見ている。

 近年、香港人が海外移民するケースが激減した要因は、市民が香港への信頼度を回復したことに加え、中国本土への経済依存がさらに高まり、経済的な安定が続く中、不景気を動機とする移民が少なくなったためだ。その一方、昨年は前年比1.3倍の1274人が中国国籍を取得し、中国回帰が進んでいる。

 中国返還前、香港の海外移民ブームは2度あった。一度目は文化大革命が起こった1960年代で上海や福建省から大量の政治難民の形で移民した。二度目は1989年の天安門事件直後。1990年は香港人の海外移民数は約6万2千人に達したが、香港返還後は移民熱は下降し始め、海外移民が再び香港に戻る現象が起きている。

 2011年9月に発表された「華僑華人研究リポート2011」(華僑大学・社会科学文献出版)によると、2009年までの中国の海外移民総数は約450万人で全世界の華僑華人総数は4543万人。移民総数では各国別で世界第一となっている。

 中国では1970年代末期、1990年代初期に次ぎ、2010年から第三次移民ブームだ。欧米への移民は条件を満たしやすい富裕層が多く、人気移民地は米国(年間約6万5千人=2009年)、カナダ(約2万5千人=2009年)、オーストラリア(約1万6千人=2008年)で香港やシンガポールも増え、投資移民や技術移民が増えている。頭脳流出を憂慮する中国社会科学院は「グローバル政治と安全」リポートで「中国は世界最大の移民輸出国であると同時に技術エリート流出大国でもある」と批評しているほどだ。

 香港政府は有能な中国本土の人材を受け入れるために「輸入内地専業人才計画」など高技術者移民計画を積極的に推進し、審査に合格すれば、7年間の香港での就労後、永住権が取得できる政策を打ち出している。

 しかし、香港に移民する「新新移民」と呼ばれる中国からの有能な人材も「港狗」「港漂」と蔑まれる事件が発生し、「優遇されても居心地は決して良くない」(北京出身の香港大学修士課程研究生)など、中国本土と香港の政治的な温度差が大きな課題として立ちはだかっている。

 「アジアの金融センター」である香港の移民動向は中国の世界的な評価を背負う中国移民動向と共に華僑華人のネットワーク動向を見ていく上でさらに注目を集めそうだ。