中国企画記事 特選
2006年11月29日記

中韓に新たな領土紛争勃発 離於島問題
韓国が暗礁に海洋観測基地を建設
民間で自国領示す準備 中国 / 海難救助や探査が目的 韓国
−中国式手法で人工島化 日中領土問題の隙間突く−
「次は黄海上の日向礁」 中国憂慮

 東シナ海北部海域の水中暗礁・離於島(韓国名イオド=中国名・蘇岩礁)に韓国が海洋探測基地を建設して人工島化している問題が中韓両国の新たな領土問題を引き起こしている。両国が排他的経済水域(EEZ)を主張する水域の暗礁に韓国が一方的に海洋観測基地を建設したことに中国側は警戒を強め、民間団体が同暗礁の中国主権を主張する組織立ち上げを準備。このままでは黄海上の暗礁・日向礁も同様の手法で韓国に占拠されるとの懸念が高まっている。(深川耕治,、06年11月29日記)


 韓国済州道にある同国最南の島、馬羅島(マラド)から西南百四十九キロに位置する水中暗礁の離於島(=中国名・蘇岩礁=地図参照)は水面下四〜五bにあり、暗礁それ自体は国際法上、島とは認められていない。

 だが、韓国海洋研究所は二〇〇一年、約二千二百五十万ドルを投じて離於島にヘリの離着陸場や衛星レーダー、灯台、船着き場を常備した巨大な鉄筋十五階建て相当の建物を暗礁上に建設(図参照)。暗礁を人工島化した離於島は〇二年以降、「韓国離於島総合海洋科学基地」(基地面積一千三百二十平方メートル、総重量三千六百トン=耐久年数五十年)として八人の常駐研究員を交替で派遣し、毎年七億ウォンの維持費を投じながら事実上、韓国が実行支配している状況だ。

 韓国側は海洋基地建設について「海難者の救助や海洋探査が目的」としており、「中国とのEEZ境界が画定されていないが、離於島基地は韓国側EEZに含まれる」(韓国外交通商部)との一貫した立場を崩さない。

 中国外務省の秦剛報道官は九月十四日の記者会見で「蘇岩礁(離於島の中国名)は東シナ海北部の水面下にある岩礁であり、韓国との領土紛争は存在しない。わが国は韓国とEEZ画定をめぐる交渉を進行中であり、韓国が一方的な行動は法的効力はなく、同問題について〇〇年、〇二年の二回にわたって外交交渉を行っている」と述べ、人工島建設に異議を申し立てていることを明らかにしている。

香港の人権団体「中国人権民主化情報センター」によると、同問題は来年の中国全国人民代表大会(国会)で討議テーマとして提出される準備が進められており、中国人民解放軍傘下の星球地図出版社が今年発行した最新中国地図に蘇岩礁が中国領であることを明示して発行したり、中国は最近になって航空機による同水域の監視活動を始め、海軍司令部の印刷物にも蘇岩礁の詳細な海図が販売されて軍事的な関心度を高めている。

 同センターが伝える中国消息筋によると、同問題は日中間の東シナ海での天然油田、ガス田問題協議が継続交渉される中、中国としては韓国に対しても同様の交渉を行う「両面作戦」は行いたくないのが本音で、ここ数年、蘇岩礁問題を政府として積極的には取り合わず、中国国内メディアに対しても関連報道を禁止していたという。

「亜洲週刊」に掲載された王建興氏提供の韓国離於島総合海洋科学基地
 中国はかつてベトナム、中国、台湾が領有権を主張していた南シナ海に浮かぶ西沙諸島(パラセル諸島)を七四年、南ベトナム(当時)の管理下から占拠。同じく南シナ海に浮かぶ南沙諸島(スプラトリー諸島)についても、六カ国が領有権を主張し、実際には中国、台湾、フィリピン、ベトナムの四カ国が実行支配しているが、マレーシアが領有権を主張している島に中国が建物を建設したり、フィリピンが領有権を主張する島に中国が建築物を建てて占拠するなど非難の声が高まった。

 韓国の離於島所有の手法は元来、中国式の領土獲得方法を真似たと見ても仕方がない部分がある。中国が「岩礁であって島ではない」と主張して無断で周辺の海洋探査を続ける沖ノ鳥島(日本最南端の無人島)問題解決の糸口を韓国が離於島の実行支配で模範解答しているとの見方も出ている。

 香港誌「亜洲週刊」最新号は韓国が人工島化した離於島問題を特集。同問題に詳しい中国社会科学院西アジア・アフリカ研究所博士課程研究生の王建興氏とのインタビューで、中国政府が今年八月まで同問題を公開せず、違法建築建設を許したことへの不満が中国国内で広がり、蘇岩礁を中国領として奪還しようと志願する各地の人々が三百人以上集まって専門ウェブサイトや民間団体「保衛蘇岩礁協会」を立ち上げる動きが広がっていることを明らかにした。

 さらには中国大陸だけでなく、香港、台湾、マカオなどの尖閣諸島(中国名・釣魚島)は中国領だと主張する「保釣行動委員会」メンバーらと連携し、「蘇岩礁は中国領」などと刻まれた銅板か石碑を漁船で運び、蘇岩礁上に建立しようとの構想も浮上しているという。

 だが、実際は中国内の尖閣諸島の中国領有を主張する活動家らの間では「新たな民間団体を立ち上げる動きは聞いたことがない」「民間活動が政府を煩わせることには反対」との声(二十六日付中国系香港紙「文匯報」)も多く、昨春の反日運動の暴走を中国当局が一時的にコントロールできなかった苦い教訓から中国当局が反日活動家に圧力を加え、尖閣問題の活動家間でも官営主導の領有権運動以外は行動できないとの不文律がいつの間にか醸成してしまっている。

 蘇岩礁附近には似たような暗礁で鴨礁、虎皮礁(いずれも中国名)があり、「黄海上に浮かぶ暗礁の日向礁にも韓国が類似した海上建造物を建設して黄海の中国領海すら徐々に韓国が管轄。中国の漁業に制約を受けるだけでなく海底石油資源を韓国人に奪い取られることになりかねない」(王建興氏)と中国政府に警鐘を鳴らす専門家の意見がある一方、中国政府は韓国に対して強い非難声明を出せないままでいる。

 高句麗の歴史を「中国の一地方史」に組み込む動きに韓国が反発した高句麗史論争や白頭山(中国名は長白山)の帰属問題などで煮え湯を飲まされた形の韓国は「端午の節句」を韓国発祥の世界無形文化遺産としてユネスコに申請して認可され、韓国は歴史問題でも巻き返しを図っている。中韓関係は歴史問題や食品衛生管理をめぐる「キムチ戦争」、領土問題に至るまで、最近では韓国側や攻勢に転じる一方、中国は防戦が続く。

 六カ国協議の継続や〇八年の北京五輪準備で中国は韓半島の政治的安定に神経をさらに使う必要に迫られ、日中間の東シナ海ガス田問題協議の隙間を突かれる形で韓国の攻勢に当分悩まされそうだ。