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2012年5月18日記


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江沢民派の巻き返しどこまで 今秋の中国共産党大会
胡錦涛派が主流派へ
政治局常務委の増減が鍵

 
香港返還15周年となる7月1日、中国の胡錦涛国家主席が香港での式典に参加し、香港トップの行政長官に就任する梁振英氏の就任式で中央政府の指導力をアピールする見込みだ。秋の党大会で習近平国家副主席をトップとする新指導部が誕生するが、水面下で胡錦涛派と江沢民派、太子党が激しい権力闘争を繰り広げ、江沢民派の凄まじい巻き返しとそれを封じ込める胡錦涛派の調整役となる習近平氏は難しい舵取りを迫られている。(深川耕治=2012年5月18日記、写真も)

周永康氏の去就動向焦点
権力闘争が水面下で激化


2007年7月1日、香港返還10周年記念日に行われた香港と中国の経済貿易緊密化協定(CEPA)の署名式で中国政府代表として薄煕来商務相(当時)が参加した=深川耕治撮影
 胡錦涛国家主席は2007年7月1日、中国返還10周年の香港での式典にも参加し、香港に対する様々な経済支援策を発表したが、今回も香港と中国本土との経済融合を強化する経済支援策を打ち出し、新政権への支持を顕示する見通した。

 奇しくも07年7月1日、香港と中国の経済貿易緊密化協定(CEPA)に中国側代表として署名調印したのが薄煕来中国商務相(当時)だった。

 中国共産党政治局員を解任され、完全失脚を強いられた薄熙来前重慶市党委書記は当時、太子党(党幹部子弟)の中でもポスト胡錦涛世代のニューリーダー候補として期待されたが、昨年11月に英国人実業家ニール・ヘイウッド氏が重慶市内のホテルで不審死した事件をめぐり、薄氏の妻の谷開来容疑者が毒殺による殺人容疑で取り調べを受けていることが明らかになり、状況が一変。ヘイウッド氏や親類縁者を通じて夫婦で海外への巨額の不正蓄財をしていた疑いが強まり、当局が調査に乗り出し、特別調査チームを派遣して香港での不正蓄財も調べ上げた。

 薄氏の兄、李学明(本名・薄煕永)氏は香港の大手金融投資会社・光大国際の副会長を務めていたが、先月25日、辞任を発表。香港で長年、喜多来ホールディングスを通して事業を成功させてきた谷開来容疑者の長姉・谷望江氏や次姉・谷望寧氏も取り調べを受けている。

 香港英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」によると、薄氏一族が香港で蓄財した株、不動産投資は少なくとも1億ドル以上。薄氏が大連市長時代から密接に関わっていた大連実徳集団の徐明会長が香港での蓄財を指南したとされ、「周永康氏(党中央政法委書記)にも捜査の手が伸びるだろう」と報じている。党幹部が香港や海外で親族ルートを駆使しながら巨額の不正蓄財を行うケースは常態化しているが、ここにきて薄氏だけの蓮金塾があぶり出され、断罪化されるのは、今秋の党大会での人事を控え、背後に激しい権力闘争があるからだ。

 中国最高指導部・政治局常務委員会(9人)のメンバーで公安・司法を一手に握る周永康氏(党序列9位)は石油閥で江沢民氏と同郷(江蘇省無錫市生まれ)の江沢民派。軍制服組幹部とも懇意だった薄氏の後ろ盾で盟友関係だった。

 3月に行われた政治局常務委員会の臨時会議で薄氏解任に最後まで反対したのは周氏のみだったとされ、順当に行けば、薄氏は周氏の後任(党中央政法委書記)を狙っていたが、唱紅打黒(文化大革命時代の革命歌を集団で歌いながら暴力団を一掃する運動)」の強権的な手法で保守派の支持を受けながら最高指導部入りを目指していた薄氏が他派閥から「文化大革命の悲劇の再来」と危険視され、排除される結末となった。薄氏は江氏からも一度は庇護を受け入れられた(香港紙「明報」)とされるが、他派閥の強い総反発で周氏の支持だけではかばいきれない状況となり、江沢民派の衰退が浮き彫りになった形だ。

 4月17日、江沢民前国家主席(85)が北京でスターバックスのハワード・シュルツ会長と会談し、健在ぶりを示した。昨年7月、死亡説の誤報が流れ、10月9日、北京の辛亥革命100周年記念行事に出席したことが確認されて以来、消息がなかったが、今秋の党大会を前に「江沢民派の人事昇進に向け、積極的に関与している」(香港紙「明報」)という。

 薄煕来氏が重慶市党委書記や党政治局員を解任されて失脚し、党内の権力闘争が水面下で激化する中での江氏の健在情報は派閥闘争で上海閥の衰退を食い止める政治的シグナルと見られる。とくに次期党総書記への就任が確実視される習近平国家副主席を筆頭とする太子党にとって後ろ盾となっている江氏の存在感の強弱は大きな意味を持つ。

 五年に一度開かれる中国共産党大会は通常、9月か10月に開かれるが、今秋開かれる党大会は薄氏の失脚による激しい権力闘争のため、ロイターの消息筋によると、11月から来年1月までにずれ込む可能性があるという。

 胡錦涛派は最高指導部である政治局常務委員会の人数を現行の9人から7人に減らすことで胡錦涛派が多数派となることを要望し、江沢民派や温家宝首相率いる改革派、太子党など他派閥は自派閥の政治力ができるだけ発揮できるよう11人に増員することを望んでおり、駆け引きが激化している。

 政治局委員(薄氏を除く24人)のうち、政治局常務委員への昇格が有力視されているのは、胡錦涛派では汪洋広東省党委書記、李源潮党中央組織部長、劉延東国務委員などだ。一方、江沢民派で昇格が有力視されているのは、張徳江副首相、王岐山副首相、兪正声上海市党委書記、張高麗天津市党委書記、劉雲山党中央宣伝部長など。

 政治局常務委員会が7人制になった場合、胡錦涛派は必ず3人は入って多数派となるが、11人制に増員されれば劣勢に陥る可能性もあり、政治局常務委員会が何人制になるかは派閥抗争上、極めて重要な意味を持つことになる。江沢民派は11人制への移行を要望し、激しい巻き返しを展開している。

 自派閥を持たない習近平国家副主席は胡錦涛派と江沢民派のせめぎ合いの中で独自色を到底出せないことが憂慮されており、党最高指導部の求心力はケ小平時代に比べ、総書記、中央軍事委員会主席のみに集中せず、緩やかに分散化する傾向になりつつある。




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