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2007年11月20日記 最新中国株情報 WINTRADE


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元高官の巨額汚職で揺れるマカオ
カジノ、公共投資で賄賂120億円
裁判継続、異例の一審判決へ

台湾離島のカジノ構想、再考必要
「総統選後」狙い準備着々


 一九九九年十二月の中国返還後、カジノ経営権の開放で米ラスベガスや香港の巨大資本が投じられて目覚ましい経済復興を続けるマカオ。順風満帆に見えるカジノ投資の裏で、最近、公共インフラやカジノ建設の入札操作をめぐる元政府高官の汚職事件が発覚し、内外を震撼させている。マカオを手本とばかりに台湾の離島でもカジノ構想が具体化し、総統選後の国民党政権奪還を見込んで県レベルで着々と準備を進めているが、巨大カジノのもたらす「負の遺産」はマカオ市民の不満を増大させ、中国式「一国二制度」の恥部になりかねない。(マカオ・深川耕治、写真も=07年11月20日記)


マカオのリズボアホテル(右)とグランドリズボアホテル(右)
 カジノ・バブル景気が好調なマカオは表面的には急速な経済成長が続く。好景気を象徴するのは、域内総生産(GDP)が昨年、前年比24.1%増、今年もGDP成長率が30%を超えると予想される急成長ぶりとそれを裏付ける相次ぐ大規模プロジェクトの施工だ。

 マカオがポルトガル領から中国に返還(1999年12月)されるまで一社独占だったカジノ経営権は、2001年、何厚●(金ヘンに華)マカオ行政長官の決断で開放され、04年に米ラスベガス・サンズが経営する金沙娯楽場(ゴールデン・サンズ)、香港系の銀河娯楽場(ギャラクシーカジノ)などが次々と進出。

07年8月、開業したベネチアン・マカオ・リゾート
 昨年は米系のウイン・リゾート(永利リゾート)が経営するウィン・マカオがオープンし、今年8月28日にはラスベガス・サンズが24億ドルを投じたアジア最大級のカジノ付きリゾート施設、ベネチアン・マカオ・リゾートが開業した。ベネチアン・マカオは米資本のベネチアン・サンズがマカオ政府から借り受けた広さ4万平方メートルあるタイパ島の湾岸埋め立て地・コタイ地区にオープンさせた最初の巨大リゾート。

ベネチアン・マカオ・リゾート内のカジノは規模が世界一
 吹き抜けになった870台のカジノ用カードテーブル、3400台のスロットマシーンがあり、宴会場は柱のない設計で1万5千人の着席が可能だ。香港コンベンションセンターの二倍以上を誇る会議・展示会場もあり、これまで香港で開かれていた国際見本市が徐々に移行する動きを見せており、香港にとって脅威となる。今後、10年間でカジノのほか、人造運河一帯に会議室、展示会場、アリーナ、劇場が建設され、ショッピング街やフォーシーズンズ、シャングリラなど客室総数2万室を有する高級ホテル群が出現する。

 マカオのカジノ売上高は今年1〜9月で前年同期比47%増の583億パタカ(約8380億円)、域外渡航者数も今年1〜5月期で約1072万人(前年同期比21.5%増)と驚異的な伸びを続け、同期比の香港(約1100万人=同6.7%増)を追い抜きそうな勢いだ。

 マカオのカジノ売上高は今年1〜9月で前年同期比47%増の583億パタカ(約8380億円)、域外渡航者数も今年1〜5月期で約1072万人(前年同期比21.5%増)と驚異的な伸びを続け、同期比の香港(約1100万人=同6.7%増)を追い抜きそうな勢いだ。

 マカオ政府統計調査局の最新指標によると、マカオは2006年に129.6億パタカ(1パタカ=15円)の海外直接投資を引き入れ、前年比で30.2億パタカ増加。地域別の投資者を見ると、資金の流入元と流入額は香港54.7億パタカ米国31.6億パタカ、中国7.5億パタカ。台湾は香港や中国、別地域からの間接投資の形をとっており、明確な数字は上がっていない。

マカオ・タイパ大橋はラッシュ時に大混雑する。モノレール実現は急務だ
 だが、一方で鉄道のないマカオは、バスやタクシー、バイクしか交通手段がなく、マカオ半島、タイパ島、コロアン島を結ぶ橋は朝晩の慢性的な交通渋滞を深刻化させ、カジノやホテル勤務者の住居確保も飽和状態。

 十月一日から道路交通法が改正され、バイクやスクーターの歩道乗り入れ禁止(違反者は罰金刑)になったことで、九月三十日、市民約四千人がスクーターや自家用車に乗ってデモ行進。庶民の足となっているスクーターが約八万八千台あるマカオでは歩道乗り入れすら禁止される市民感覚から程遠い政府の法改正に怒りが高まった。

 そこで、マカオ政府は域内20キロを23駅で結ぶモノレール(LRT=軽軌道交通システム)建設計画を具体化し、来年、国際入札で日系など四社が争う形となりそうだ。完成すれば、ラッシュ時には3分間隔で発車し、一時間に8000人が移動できる公算。2011年末の運行開始を目指す。

ベネチアン・マカオ・リゾート内のマーケット。天井は青空を模してある
 ここに来てカジノ投資による「闇」の部分が浮き彫りにされ、マカオ市民の怒りを買っているのがマカオ高官による汚職事件だ。欧文龍・前運輸公共事業長官(50)が公共インフラやカジノ建設の入札を操作し、落札業者から総額8億パタカ(約120億円)のリベートを受け取ったとして逮捕され、マカオ史上最大の汚職事件に発展してマカオ政府を震撼させている。

 欧被告はドームスタジアムやベネチアン・リゾート、マカオ半島とタイパ島を結ぶ大橋の建設など過去5年間の許認可にすべて関与し、利益供与には妻や実兄、実姉などが深く関わっていたとされ、家族ぐるみの汚職として裁判で審議中だ。

 マカオトップの何厚●(金ヘンに華)行政長官は11月13日、施政方針演説を行い、汚職取り締まり法整備強化や雇用問題に取り組むことを強調。相次ぐ汚職、インフレ、雇用危機などで市民の怒りは高まり、就任8年目の何行政長官を取り巻く環境は厳しさを増している。

 社会を不安定化している原因は労働問題。カジノブームで好景気に沸いているといっても、若年就業者はカジノやホテル業界に奪われ、既存の産業は空洞化。旧市街は労働者不足で小売業も低迷し、カジノ好景気とは裏腹に一般労働者に還元されているどころか、仕事を不法就労の外国人に奪われ、失業の憂き目に遭っているのが実情だ。5月のメーデーではマカオの労働者らが悪化するマカオの現状に抗議してデモを行い、一部が暴徒化。10月の国慶節(中国の建国記念日)にも度重なる官僚の汚職に対する市民の怒りが爆発している。

 何行政長官は施政方針演説で外国人労働者の過度な流入を防ぎ、不法就労者を取り締まることを約束。格差拡大の現状を改善するため総額11億パタカ(約165億円)の減税対策を発表して、汚職事件や労働問題への市民の不満沈静化に四苦八苦の状況が続いている。

 汚職事件や産業空洞化を引き起こしながも、マカオのカジノ・バブル経済を羨望の眼差しなのが、景気低迷にあえぐ台湾だ。

 台湾の林炳坤立法委員(国会議員)は十九日、マカオの記者団と会見し、「澎湖島は観光客が年間五十万人。来月、立法院(国会)でカジノ法案が可決されれば、澎湖島のカジノ解禁が決定する」と楽観的に見通す。台湾本島の西五〇キロに浮かぶ離島区・澎湖諸島の立法委員である林氏は国民党本土派に所属していたが、〇一年に離党。現在は無所属で、来年一月の立法委員選に向け、同島の復興策としてカジノ解禁を心待ちにしている一人だ。

 澎湖島は中国大陸からの観光客受け入れを決め、カジノ解禁に向け、マカオでカジノ経営権を取得できなかった英米二社と交渉しながらカジノ建設の下準備を進めている。台湾では中国と同様、カジノは法的に禁止されているが、プロ野球賭博など地下の違法賭博はなくならない。

 違法賭博防止を含め、地域限定の合法カジノ解禁論は、台湾では十年ほど前から金門島、澎湖島、台湾本島の一部の県などを候補地として浮上しては消える繰り返しだった。だが、〇六年二月にシンガポールがカジノを合法化したことや来年一月の立法委員選、三月の総統選に向け、経済効果に有権者の関心を高めるため与野党ともにカジノ解禁に前向きで法案策定も具体化し始めている。

 とくに野党・国民党は馬英九総統候補が中台統一への経済推進論に積極的なため、総統選後のカジノ解禁が一気に加速するとの期待が高まっている一方、「中国大陸の観光客目当てでカジノを解禁すれば、小さな島国の台湾は大陸に飲み込まれる」(澎湖島出身の黄天麟元総統府国策顧問)との反対論も根強い。

 カジノ・バブルとも言えるカジノ一辺倒の経済復興は、マカオに光と影をもたらし、取り返しのつかない歴然たる歪みと格差を助長している。観光産業の復興打開策としてカジノ解禁を模索する台湾は、マカオの「光」の部分に羨望してカジノ構想が具体化しつつあっても、「影」の部分による“負の遺産”がはるかに大きいことを肝に銘ずる必要があるだろう。

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