中国企画記事 特選

2004年11月18日記

ブッシュ再選で変わる米中台関係
米の武器供与案受理が先決 台湾
与党過半数奪取が生命線 台湾立法院選

新憲法に難色示す米国 台湾の対米外交、限界に直面も

独立反対の米国に台湾外交通じず

 ブッシュ米政権二期目の新人事が明らかになるにつれ、今後の米中台関係が微妙に変化することが懸念されている。台湾独立を支持しない一方、台湾への武器供与は続けるという従来の米国の政策が変化し、台湾独立阻止のカラーが色濃くなる可能性が出ている。台湾にとっては十二月十一日の立法委員選挙(国会議員に相当、定数二二五)で与党が過半数奪取することが最悪の事態を阻止する最大の山場となりそうだ。(04年11月18日記、深川耕治)


 ローレス米国防副次官補(東アジア・太平洋担当)は十月、米国で行われた米台商業協会の非公開での会議の席上、「台湾立法院で米国から購入する軍事兵器特別予算が通過させなければ、台湾内の政争が国防など切迫した議題より優先していると見なされる」と台湾側に迫った。

 台湾の中央通信社が内幕を報じたもので、ローレス米国防副次官補は会議に出席した米台双方の出席者に対して台湾への武器供与の異常すぎる高負担率に警告を発したという。十月四日、ローレス米国防副次官補は「米国から武器給与する特別軍事予算が台湾で通過するかどうかは台湾が自力で防衛することを承諾するかどうかのテストだ」と話し、同予算案が台湾野党各党の反発に直面し、立法院でなかなか通過しないことへの不快感を示した形だ。

 台湾の陳水扁政権は、中国軍が福建省沿岸などで台湾に向けた弾道ミサイル増強配備を続ける武力統一の動きに対抗し、米国から最新鋭地対空誘導弾パトリオット(PAC3)発射装置などを調達する六千百八億台湾元(約二兆円)の特別予算案を提出。米ブッシュ政権も同武器売却を原則として承認していた。

 だが、台湾二大野党の国民党や親民党は「通常価格より高額で兵器を売り込む米国から購入するぐらいなら、別の方法を選択すべきだ。このままでは中国を刺激して戦争機運が高まるばかり」と軍拡路線に猛反発しており、野党が過半数の議席数を占める立法院での「武器調達特別予算案」通過は困難な状況だ。

 同予算案は十二月十一日に行われる立法委員選挙の最大争点の一つとなっており、与党側が議席の過半数を奪取できれば、予算案通過は実現可能となる。予算案を早期に通過させることで米国の不快感・不信感を払しょくし、台湾自立化のための新憲法制定や陳総統が最近になって突然打ち出した「台湾」の国名での国連加盟申請運動などに米国側の理解を得るためには立法委員選挙で与党側が過半数を獲得できるかどうかが、いわば、台湾の命運を決する“天王山の戦い”となっている。

 台湾立法院(国会に相当)の党派別議席数の現状は陳総統が党主席を兼任する与党・民進党が八十、李登輝前総統が精神的指導を行う連立与党の台湾団結連盟(台連)が十二で与党側が合計九十二議席。一方、野党側は第一野党の国民党(連戦主席)六十六議席、親民党(宋楚瑜主席)四十四議席、新党一議席で計百十一議席となっており、野党の過半数支配が続いている(無所属など十四、欠員八)。

 少数与党として苦しい議会工作が続く立法院は、野党・国民党の隠然たる議会工作で陳政権の政策法案が通過しにくい“ねじれ現象”が、政権の打ち出す独自政策法案を議会で野党側がつぶしにかかる混乱や法案先送りという形で表れ、与党の独自カラーが骨抜きにされてしまう状況を繰り返してきた。

 だが、今回の立法委員選挙は、国民党の連戦主席ら野党陣営が台湾高等法院(高裁)で総統選挙の当選無効裁判を起こして敗訴し、新憲法制定への機運が盛り上がるなど、与党側に追い風が吹いている。選挙戦の強さで定評のある与党・民進党は十五議席増の九十五議席、新憲法制定の強い後押しを続けて台湾本土派の票掘り起こしが拡大する台連は九議席増の二十議席獲得で過半数の百十五議席をめざし、ほぼ、目標の射程圏内に入りつつある。

 今後は二大野党の国民党、親民党が勢力を衰退させ、議会運営は与党主導で安定した議会運営に変わっていくことが予想されるが、最大の難題はすでに内政から外交へ移っている。台湾の新憲法制定を独立志向と受け取って難色を示す米国への外交交渉は、辞任表明前の十月に訪中したパウエル米国務長官に「現在が米中関係で最良の時期」と言わしめる老練な中国外交に比べて微力でしかない。

 陳総統は石原慎太郎東京都知事や韓国の金泳三元大統領と台北で相次いで会談し、日本や韓国の親台湾派との親交を深めて新憲法制定による台湾自立化路線への理解を周辺国に広げようとしているが、親中国派が多数を占める日韓では米国への影響力行使は不可能に近い。

 二期目のブッシュ米政権は、パウエル国務長官の辞任とライス補佐官の国務長官就任、アーミテージ国防副長官の辞任などで台湾の独立志向への反対が鮮明になる可能性が出てきており、新憲法制定に関しても同草案に対する米側の細かい検閲などが水面下で加速しそうだ。

 台湾関係法を通して米から武器を高額な武器を購入する以外に米側への独自交渉ができない民進党政権下の対米外交は、限界に直面しており、新たな対米交渉戦略の転換に迫られている。