台湾関連情報

2011年1月10日記


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対中政策が台湾総統選の要に
馬政権との違いどこまで 野党・民進党
勝敗決する蔡党主席の手腕
 
2012年春の台湾総統選挙に向け、中国との経済協力強化を推進する馬英九政権に対し、野党・民進党が無党派層まで引き込める独自の対中政策を打ち出せるかが、勝敗の重要な鍵を握る。李登輝、陳水扁の各政権で対中政策の最重要ブレーンだった民進党の蔡英文党主席が台湾を浮揚する対中新戦略を打ち出すため、水面下でのせめぎ合いが続いている。(深川耕治、写真も=2011年1月10日記)


中国と対等交渉、現実路線へ
無党派取り込み、奪還目指す


両岸(中台)関係について与党・国民党の融和策を批判する野党・民進党の蔡英文党主席。2012年春の総統選で民進党の総統候補最有力として対中政策の立案を練り上げて準備中だ=深川耕治撮影
 2010年11月27日、次期総統選の前哨戦とされる5大都市市長選の投開票が行われ、与党・国民党が野党・民進党の追い上げを振り切って台北、新北、台中の3市を制し、勝敗ラインの3ポストを獲得して辛勝。一方、約377万票を獲得した民進党は得票総数で国民党(約337万票)を上回り、大敗した08年総統選からの大幅な党勢回復を成し遂げた。

 同選挙期間、台湾問題を扱う中国政府関係者が台北花博の参観名目で選挙情勢を視察し、「投票日前日に新北市で起きた連勝文(連戦国民党名誉主席の長男)銃撃事件は国民党の深刻な危機を回避しても決して良いことではない。12年の総統選で馬英九氏が再選するのに大して問題はないが、憂慮しているのは2016年の総統選での国民党の戦略が充分に練り上げられていないことだ」(香港誌「亜洲週刊」1月2日号)と分析している。

 五大都市市長選で新北市長選に立候補し、若者など中間層を捉える戦略で予想以上に票を伸ばして善戦した蔡党主席は党内での求心力が増しており、次期総統候補の最有力と見て間違いない。同選挙後、蔡氏は政策綱領「十年政綱」を具体的に打ち出し、対中政策を民進党の主軸にすることで台湾本土派の再結集を目指し、主導権を握る腹づもりだ。

 08年の馬政権樹立後、前政権で緊張が続いた中台関係が大きく改善。ただし、中台が互いに正統政権と認めない特殊な関係のため、政府間直接交流は困難が多い一方、中国の地方政府による訪台が急増し、昨年4月以降、韓正上海市長や羅清泉湖北省党委書記、劉奇葆四川省党委書記、呂祖善浙江省省長らが相次いで台湾を訪問。地方政府攻勢に出ている。

 馬政権が経済浮揚を目指し、2010年6月末、中台自由貿易協定に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)に調印すると、統一工作に警戒感の強い台湾南部に黄華華広東省長率いる代表団が同胞意識を強調しながら約70億ドル分の台湾産品を買い付けるなど、経済的恩恵を台湾側に与えることで警戒感を和らげる「以経促統」(経済により統一を促進)の懐柔策に中国政府は自信を深めつつある。

 さらに中国の対台湾窓口機関・海峡両岸関係協会の陳雲林会長は12月20日、3度の訪台を果たし、中国の対台湾窓口機関・海峡両岸関係協会の江丙坤理事長と6回目の会談を行って医薬品や衛生問題を協議。今年上半期は中国大陸から一日あたり4000人の観光客を訪台させることで合意し、中台緊密化を図っている。

 しかし、中国のこのような懐柔策が奏功しているとはいえない。国民党系の台湾紙「聯合報」が昨年9月に実施した世論調査によると、対中関係について統一、独立をめぐり、「永遠に現状維持を支持」が51%、「すぐに独立」が16%、「現状維持の後、独立」が15%で10年前の前回調査結果より統一志向は減少し、独立志向が微増している。中国の姿勢を「非友好的」と見る人は47.5%で「友好的」(34%)を上回っていて警戒感は依然根強い。

 与党・国民党が対中融和政策を次々と打ち出す一方、野党・民進党は党内のシンクタンク以外に海外シンクタンク、台湾産経建研社、新台湾国策智庫、天安門事件の学生指導者だった王丹氏が結成した両岸民主文化研究室などと協力し、新たな対中政策を練り上げている。

 蔡党主席が理事長を兼務する新境界文教基金会では近く、民進党の呉乃仁・前秘書長が代表となる民進党の対中国政策の新たなシンクタンクを設立。対中対話の窓口を設け、対中対話を強化するためだ。

 1988年、李登輝総統の指示で「二国論」を起草した蔡氏だけに民進党の命運を決する対中政策の目玉としてどのような内容を提示するか、注目が集まっている。過去半年、師弟関係にある李元総統と蔡氏はECFA反対を通して急接近。「馬政権は『一つの中国』市場を形成して台湾を呑み込もうとする中国の術中にはまっている」と国民党政権の批判を強める李氏や台湾本土派、独立派の意向をどこまで対中政策に入れるか、バランス感覚も問われる。

 台湾の対中民間窓口機関・海峡交流基金会の理事長(2007年6月29日〜08年5月20日)を務めた洪奇昌台湾産経建研社理事長(民進党元立法委員)が昨年、北京で中国当局者と非公開会談を行った際、中国当局者が民進党に対して「一つの中国を前提に」という従来の原則を使わず、「一つの中国を目標に」とハードルを下げた異変も政権交代の可能性を見越した民進党との独自交流モデルとして浮上し始めた。

 台湾世論の動向を踏まえ、「両岸(中台)関係の安定こそ最重要」と新路線を主導する蔡氏は、国民党の対中緊密化路線を台湾併呑(へいどん)になるとの危機鼓舞を一方的に煽るのではなく、いかに対等な形での直接対話を行えるか、より現実を直視した台湾優先の柔軟路線転換を通じ、中台関係の安定と現状維持を望む無党派層取り込みに深化と説得力を増す対中戦略になりそうだ。