香港企画記事速報
2007年9月18日記

民主派大連立の動き急−香港
元政務官 立法会補選に出馬へ


 香港ナンバー2の政務官を二〇〇一年まで務めた「香港の良心」と欧米メディアから評される陳方安生(アンソン・チャン)氏が、十二月二日投開票の立法会(議会に相当)補欠選挙に出馬することを表明した。親中派は葉劉淑儀(レジーナ・イップ)元保安局長の擁立を検討しており、民主化に向けての激しい選挙戦が展開される様相となってきた。(深川耕治=07年9月18日記)


 中国返還十周年を七月一日に終えた香港は、十一月の区議会選挙を控えて政局が大きく変わりつつある。五月中旬、天安門事件をめぐり「中国共産党による虐殺はなかった」と発言して民主派の猛反発を招いた親中派政党・民主建港連盟(民建連)の馬力主席(立法会議員)が八月八日、結腸ガンのため死去。これに伴い、立法会補欠選挙(香港島区)の十二月実施が決まり、今月十一日、チャン氏は出馬表明した。

 チャン氏は会見で「個人的立場で香港の民主促進に何ができるか、熟慮した末、結論を出した。当選すれば普通選挙の早期実現のために全力を注ぎたい」と抱負を述べた。チャン氏は昨年七月一日、民主化デモに参加し、今年七月一日も参加して普通選挙の早期実現に取り組む姿勢を示し、政界復帰が取りざたされていた。

 当初、香港行政長官選挙への出馬も民主派から期待されたが、世論調査での支持率は曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官が優位で、出馬の意思がないことを表明。今回の補選では支持率低迷にあえぐ民主派各党は独自候補擁立を見送り、無所属で出馬するチャン氏支援を決め、起死回生を目指す。

 一方、親中派は、二〇〇三年の五十万人を超える大規模民主化デモの元凶となった国家保安条例問題で政府の実務担当者だった葉劉淑儀・元保安局長が立候補の意欲を示し、出馬は時間の問題とみられている。補選が行われる香港島区では固い地盤の親中派と民主派票が拮抗(きっこう)しており、大接戦が予想されている。

 チャン氏出馬の背景には民主派政党である公民党と民主党の合併による民主派大連立を模索してきた香港最大財閥である「長江グループ」、李嘉誠会長の次男である李澤楷(リチャード・リー)電訊盈科有限公司総裁が両党統合のために財政援助を約束し、チャン氏とも会談して支援を約束したことが大きい。

 最新世論調査では政党別支持率のトップは香港工会連合会(工連会)、二位が民建連でいずれも親中派。民主派の民主党は近年、スキャンダルが続き、低迷している。民主派政党である公民党、民主党は合併統合に前向きである一方、新党成立後の求心力となる党の顔としてチャン氏が就任できるかどうかを懸念していた。チャン氏が補欠選挙出馬を表明したことで、両党合併は現実味を帯び始めている。

 現在、立法会(六十議席)で第一党の民建連は十二議席。民主党九議席、公民党六議席なので、合併すれば十五議席となり、第一党に躍り出ることになる。区議会では民建連が八十四議席、民主党が七十四議席、公民党が五議席で合併しても民建連を超えられないが、十一月の区議会選に向け、チャン氏出馬が追い風となり、民主派大連立の足場固めになるとの見方も強まっている。来年には立法会選挙を控えており、チャン氏出馬が民主派大連立による政界再編への一歩となるか、中央政府としては警戒感を強めている。