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2009年2月9日記 最新中国株情報 WINTRADE


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農民暴動に危機感募る中国
干ばつ直撃、出稼ぎで職なく

内需主導、手厚い保護対策へ 政府

 中国で干ばつ被害が深刻化し、金融危機による農民工(出稼ぎ農民)の大量失業と重なって農民暴動へつながりかねない社会不安が増している。事態を重く見た胡錦濤指導部は緊急対策を打ち出し、灌漑(かんがい)設備強化や大型景気刺激策、農村限定の優遇策で不満軽減を図るが、不況と自然災害のダブルパンチは総人口の7割を占める農民の生活を急速に逼迫(ひっぱく)させている。(深川耕治=09年2月9日記)

沿海部、内陸部も不安定化

干ばつが深刻化する河南省鄭州。伝説上、中国を最初に統治したとされる巨大な黄帝と炎帝像が建つ市郊外の黄河クルーズ乗り場=深川耕治撮影
 干ばつ被害は北部、中部の少なくとも17省に広がり、50年に1度と言われる大干ばつとなった。とくに深刻なのは河南省をはじめ、河北、山西、安徽、山東など黄河流域の八省。夏に収穫する冬小麦の産地だ。中国は世界最大の小麦生産国だが、昨年11月以降ほとんど雨が降っておらず、河南、安徽両省では6割以上の畑が被害を受けた。国内全体では2月5日時点で住民約429万人の飲料水や大型家畜約207万頭の水が不足する事態に陥っている。

 社会不安に直結する事態と見た胡錦涛政権は、建国以来初となる「第1級」(最高レベル警報)の緊急干ばつ対策を打ち出し、4億元(約62億円)の緊急支出や給水活動目的の軍の出動、人工降雨の実施で現地支援に全力を尽くしている。2月7日、温家宝首相は国内小麦生産の4分の1を占める河南省を視察。「必ず対策の効果は上がる。後はわれわれのがんばり方次第」と激励し、現地農民と握手を交わしながら不安払しょくに躍起だ。

 干ばつがさらに長期化すれば凶作による農家の収入減は確実。昨年の雪害被害額を上回るとの見通しも出ており、食糧需給にも打撃を与え、輸入増大で国際価格上昇につながりかねない。ネット上では「干ばつ用の肥料が5割値上がりした」「地元政府の推薦した小麦品種は干ばつに弱く枯れ果てた」と不満が渦巻いており、政府への不満増大は農村部の暴動など社会不安につながる恐れが高まっている。

広東省東莞市内の香港系工場では経営者が逃亡して給料を支払えず、市政府が給与の肩代わりをして支払っている
 都市部も深刻だ。北京、上海、広州など大都市部では2月7日、春節(旧正月=今年は1月26日)後の就職説明会が開かれ、失業した農民工や大卒予定者など職を求める人々でごった返した。各地の就職説明会の参加者は例年、大卒予定者も多いが、今年は20代の農民工が大半で大卒予定者の割合が少ないのが特徴。政府発表では世界経済の悪化で中国は農民工約2000万人が失業したと推計され、再就職難の深刻度を著している。

 米国への輸出型製造業、とくに外資系中小企業などに勤務していた農民工は大量失業し、大半が春節前に帰郷した。広東省政府の発表では、春節後に地方から同省に戻る農民工は約970万人でそのうち約260万人が失業状態と推計されている。とくに製造業での再就職先は低賃金で狭き門。広州では「製造業の募集は激減して厳しいが、宿泊サービス業、飲食、物流関係の募集枠は製造業と比較して減り方が緩やかで穴場だ」(広東省就業服務管理局)として製造業以外の転業再就職を奨励している。

 2月7日、広州市で開かれた就職説明会では昨年より1割以上減の約200社が参加。業種別では営業・貿易関係が全体の24.4%で1位、運輸・物流業が2位、昨年まで断然トップだった製造業は3位で影を潜める。広州紙「新快報」(2月7日付)によると、今年の就職希望者の最低給与希望額は昨年より2割減少し、月給1500元(約2万円)以下の条件が大半。農民工にとってぎりぎりの給与基準だ。大卒予定者でも農民工と同列扱いされ、「見習い期間は月給1500元という職種でも求人が殺到。最低生活ラインが1200元(約15600円)なのに」(華南師範大学卒業予定者)との嘆きの声が聞かれる。

■地方で頻発する公安当局の農民への暴力事件

 中国各地では近年、地元政府による農地買収、土地開発に絡み、農地を奪われる農民の抵抗・阻止を公安当局が暴力的に排除する事件が頻発。具体的には湖北省武穴(2008年5月13日発生)、広西チワン族自治区桂林(08年9月22日)、広東省廉江(08年11月26日)、湖北省武漢(08年12月21日)、貴州省貴陽(09年1月18日)、広東省陽江(09年2月8日)で地元公安当局の農民への暴力事件が続発している。

 地方政府では経済成長率など成績評価を上げるため、農地を商工業施設や高級マンションに乱開発する動きが広がり、警官隊が農民を強制退去させ、抵抗すれば暴力行為を繰り返す事件が急増。農民工の失業者が増え、帰郷しても農地すらない「失地農民」が増える中、干ばつや不況が直撃し、農家が所得減少に追い込まれれば、社会矛盾への巨大な不満が農民暴動に発展する素地を確実に高めている。

2月8日、深セン・羅湖税関付近で農民工の権益保護を訴えるデモを1人だけで行った肖青山氏(左端)=香港のウェブサイトから
 中国政府は昨年11月、金融危機の経済対策として総額4兆円(約52兆円)の大型景気刺激策を発表。これだけ大規模な景気対策は1998年のアジア金融危機後に打ち出した3兆元(約39兆円)以来、10年ぶりだ。「世界の工場」としての輸出型から内需拡大への大転換となり、2010年末までに全額、鉄道や道路などインフラ整備に当てられる。

 内訳は中央政府が1兆1000万元、残りは地方政府が捻出する予定だが、地方がそれだけの財源と資金力があるかは不透明。中央政府は「対策費の不正流用は排除せよ」と強調しているが、各省市では土地開発が手っ取り早い金の成る木であり、農地の強制買収、不動産会社と結託した不正な乱開発が拡大していく潮流は止まらない。「中央対地方」の溝は、改革開放が進むほど根深いのである。

 それでも三農(農村、農業、農民)問題の解決が政権安定の最重要課題と見る胡錦濤政権は、農村での優遇政策を次々と打ち出している。家電製品の購入に中央政府が補助金を出す「家電下郷(家電製品を農村に)」制度はその典型例だ。

 同制度は地方農村限定でカラーテレビ、冷蔵庫、洗濯機、携帯電話の購入者に政府が販売価格の13%の補助金を出す農村優遇策だ。2007年に一部の省で始まり、導入から約1年で350万人が利用。家電製品の売り上げも前年比4割増となった。今年2月から全国展開され、好評だが、不況と干ばつによる消費の落ち込みは暗雲が漂う。

 農村部の年金制度、医療問題はさらに深刻で企業で働く都市部住民のような恩恵がないままだ。中国政府は従来、地方でばらばらに運営していた年金基金を全国統一にする社会保険法の制定準備を進め、2012年施行を目指している。高齢化が進み始めた地方農村では社会保障制度改革は待ったなしの問題だが、都市部との格差に不満が渦巻いている。

浙江省杭州で2009年1月に発行された消費券
 苦しい台所事情に立たされる地方政府では台湾の馬英九政権と同様、消費券発給による内需拡大策を模索する動きも出てきた。四川省成都市政府は昨年、3700万元(約4億8100万円)の消費券を低所得階層に支給、浙江省杭州市政府も今年1月、低所得層に1億元(約13億円)分の消費券を支給した。広東省の深セン(土ヘンに川)市政府も導入を検討したが結果的に断念し、不況下で消費願望の強い市民の間からは市政府の及び腰に失望と不満が広がっている。中国商務省としても国産品の購入しかできない条件付きの消費券発行が内需拡大に貢献できるとしてあらゆる経済効果の検討を進めているが、「一部の地方政府が実験的に行っている特殊な施策」(姜増偉商務次官)として現段階では実行しない方針だ。

 広東省深センの羅湖税関付近では2月8日、農民工の賃金未払い問題に取り組む同省東莞の人権活動家・肖青山氏が「打倒暴政、還権於民(暴力政治打倒、人民に権利を返せ)」のプラカードを持ってシュプレヒコールをあげ、労働者の合法権益を訴えるデモをたった1人で行って拘束された。

 深センで単独デモを行うケースが珍しく、東莞は農民工が500万人以上が集まる全国屈指の出稼ぎの都市であり、農民権益が脅かされる不満がピークに達している現象とも見られる。香港紙「明報」(2月9日付)によると、農民工の待遇改善を地元政府に訴える「維権(=人権)弁公室」を立ち上げていた肖氏は「地元政府の取り調べで事務所内にあった現金10万元(130万円)と文書類が没収されて返却されないままだ」と怒りに震えてデモを行ったという。農民工の最大規模の出稼ぎ場所である広東省でも不満は“沸点”に達している証左だ。

■香港メディア統制へ チベット、民主化で不満爆発も

2008年7月25日、北京の五輪チケット販売の混雑ぶりを撮影しようとして警官から押し倒されてカメラを壊され、渋い顔をする香港人テレビカメラマン=香港のテレビ放送(TVB)画面より
 香港メディアの中国本土取材規制も始まった。2月6日、中国国務院香港マカオ事務弁公室は香港、マカオの記者が中国本土へ出張取材する際の新たな規則を発表。今後、中国本土を取材する度に必ず中国政府の駐香港中央連絡弁公室(中連弁)で取材許可証を申請し、取材対象の部局、個人の同意を得て取材許可証(有効期間は1ヶ月)を受領・携帯することが義務づけられた。取材許可証不携帯でも暫定的には罰則規定はないが、同許可証では突発的な事件の現場取材は許可されないことになる。

 香港記者協会の潭志強主席は「言論と取材の自由、とくに突発事件の取材が阻害される」と批判。香港各紙も「北京五輪を機会に取材規制が緩和された動きと逆行している」(香港紙「明報」)、「今年は天安門事件20周年など民主化弾圧の節目であり、言論封じ込め。同事件直後にも存在しなかった取材証義務付けは厳しすぎる」(香港紙「蘋果日報」)と敏感に反応している。

 1月半ば、チベット自治区の王賓宜政法委書記は「これからチベット自治区は反分裂逃走の高度に敏感な時期に入る」と自治区内のチベット独立勢力の動きを憂慮。武装警察は昨年3月14日に発生したチベット騒乱事件後、突発事件に即時対応する態勢が取られている。3月のダライ・ラマ14世のインド亡命50周年、6月の天安門事件20周年を控え、国内の突発的な民主化運動や暴動に関する香港情報をできるだけ遮断したい意図が見える。

 軍による被災地への給水活動動員、救援費増額、農村の優遇措置強化、反テロ対策、言論統制の強化は、干ばつ、金融危機による農民工の大量失業と就職難、少数民族問題と民主化問題がつながり合って暴動頻発へ発展する「横の動き」を出来る限り遮断したい中国当局の暴動封じ込め策だ。中央政府が地方政府を完全統率できない軋(きし)みが広がる中、暴動抑止の政策がどこまで効果を上げるか、農村対策、暴動阻止策の戦略是非が胡錦涛政権の安定度を大きく左右する虎の尾を踏みかねない1年となりそうだ。

 




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