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2007年10月23日記 最新中国株情報 WINTRADE


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汚職摘発の要職、江派が奪還 中国指導部
特殊利権の腐敗、メス入るか


 07年10月22日、中国では新指導部人事が発表され、二期目の胡錦濤政権が発足した。最高指導部である政治局常務委員会(九人)は江沢民派が五人を占め、過去五年間で汚職を摘発できた規律検査委員会や公安・検察部門の要職までも胡錦濤派から奪還し、汚職摘発が弱まる懸念が出てきている。主導権を完全掌握したい胡総書記としては党規約に盛り込まれた自身の指導理念「科学的発展観」で党内を統率しながら貧富格差の歪みを生み出す官民汚職に対し、摘発の手を緩めない覚悟だが、江派の巻き返しで逆風を跳ね返せるか。(香港・深川耕治=07年10月23日記)


 第十七回党大会の開幕式(10月15日)と閉幕式(10月21日)でひな壇中央に座った胡錦濤総書記の隣りには、江沢民前総書記(81)が着席し、二人はにこやかに握手した。五年に一度の党大会で総書記の隣りに前任者が座ることは異例で、江氏が現政権でなお隠然たる力を温存していることを象徴する一コマといえる。

第二期胡錦涛政権の顔ぶれと派閥 ←クリックで略歴表示
【政治局常務委員】(序列順、★は新任、()内は年齢、[]内は現職)
 胡錦濤(64) 胡錦濤派、共青団派 [総書記、国家主席、軍事委主席]
 呉邦国(66) 江沢民派、上海閥 [全国人民代表大会常務委員長]
 温家宝(65) 胡錦濤派 [首相]
 賈慶林(67) 江沢民派、上海閥 [全国政治協商会議主席]
 李長春(63) 江沢民派 [常務委員]
★習近平(54) 太子党 [上海市党委書記]
★李克強(52) 胡錦濤派、共青団派 [遼寧省党委書記]
★賀国強(64) 江沢民派 [党中央組織部長]
★周永康(64) 江沢民派 [公安相、国務委員]
【政治局員】(序列順、★は新任、カッコ内は年齢)
★王剛(65)  江沢民派 [前中央書記書書記]
 王楽泉(62) 共青団派 [新彊ウイグル自治区党委書記]
 王兆国(66) 共青団派 [全人代常務副委員長]
★王岐山(59) 太子党 [北京市長]
 回良玉(63) 江沢民派 [副首相]
 劉淇(64)  江沢民派 [北京市党委書記]
 劉雲山(60) 共青団派 [党宣伝部長]
★劉延東(61) 共青団派、太子党 [党統一戦線部長]
★李源潮(56) 共青団派 [江蘇省党委書記]
★汪洋(52)  共青団派 [重慶市党委書記]
★張高麗(60) 胡錦濤派 [天津市党委書記]
 張徳江(60) 胡錦濤派 [広東省党委書記]
 兪正声(62) 太子党 [湖北省党委書記]
★徐才厚(64) 軍人、江沢民派 [軍事委副主席]
 郭伯雄(65) 軍人、江沢民派 [軍事委副主席]
★薄煕来(58) 太子党 [商務相]
※政治局レベルでは大きく分けて江沢民派、共青団派、太子党の三派が拮抗しながら複雑に入り乱れている
 党中央の最高意志決定機関である政治局常務委は五年前と同じ九人制を維持し、集団指導体制の形を取っているが、江氏に連なる上海閥(上海出身や上海勤務経験者グループ)が温存され、江沢民派の党指導部内での発言力は大きいままだ(表参照)

 北京筋の情報を総合すると、昨年九月、江沢民派で上海閥の陳良宇上海市党委書記(当時)が社会保険基金不正流用問題で解任された時期に、浙江省党委書記だった習近平氏はチベット自治区党委書記への転任内示があったにもかかわらず、「チベットに行ってどうする?上海に行け」と江沢民氏から直接指示を受けたとされる。上海閥の首領、江氏自らが習氏を上海トップに据え換える胡錦濤氏後継指名の下準備をした形だ。半年後、習氏は太子党(党幹部子弟)の“落下傘部隊”の形で突如、今年三月に上海市党委書記に大抜擢された。

 八月初め、五年ぶりに再開された河北省の北戴河会議(党長老を含めた党幹部が自由に討議できる非公式会議)では四月末に曽慶紅国家副主席が辞表願を出したことについて話し合われ、江沢民氏は「六十八歳制の内規に従った適切な決断」と全面支持。その後も政治局常務委メンバーを決める人事案として胡総書記は自らが推す李克強遼寧省党委書記と王兆国全人代副委員長、江沢民派の張徳江広東省党委書記を新人として入れるよう準備したが、未決着。

【中国共産党の組織(党員数は2007年6月現在)】
総書記 1人
政治局常務委員 9人
政治局員 25人
中央委員 204人
中央委員候補 167人
党大会代表 2217人
党員 7336万人
※上から下にピラミッド型に末広がり、一党独裁を維持
 江氏が新人事のタイムリミット間際の九月中旬、習近平氏を次期総書記候補、李克強氏を次期首相候補として常務委入りさせる新案を逆提示し、李克強氏を常務委入りさせたい胡総書記は、江派が過半数となる新案を譲歩・容認する形で決着した。

 新人事の目玉は、一二年に退任する胡総書記の後継を選ぶ「ポスト胡」を複数候補で競わせる形にしたことだ。現段階では党序列六位となった習近平氏が五年後の総書記最有力候補、序列七位の李克強氏がポスト温家宝の首相候補となっているが、あくまで僅差。今後5年間、集団指導体制の中で2人を競合させ、総合実務実績を見て判断する暗黙の党内力学が働いており、致命的な失策やスキャンダルがあれば入れ替わる“変数”の余地を残す。

 しかし、今回選出された政治局常務委メンバーを顔ぶれを見ると、江派が過半数を占め、江沢民氏が推して選出された次期総書記最有力の習近平氏は調整型ニューリーダーとして党内に幅広い人脈を持つ太子党ながら、自身の基盤固めのために事実上のポスト胡錦濤を指名した江派の意向に従わざるを得ない立場だ。

 複雑な派閥抗争の中で懸念されるのは、今後の胡政権の汚職摘発能力だ。

 前回、五年前に発足した第十六期政治局常務委では江沢民派が五人(呉邦国氏、賈慶林氏、曽慶紅氏、黄菊氏、李長春氏)で過半数を制したが、汚職を摘発する権限を持つ規律検査委書記ポストに胡錦濤派の呉官正氏が就任したことで、汚職に立ち向かう胡錦濤カラーを最大限発揮できる役割を果たした。

 たとえ政治局員クラスの汚職でも規律検査委で徹底調査を行い、上海市の保険基金汚職を暴いて陳良宇上海市党委書記(当時)を解任したり、従来絶対に手をつけられなかった海軍汚職にも切り込んで摘発できる原動力となった。

 しかし、今回、汚職摘発の要となる中央規律検査委のトップ、同委書記に新任されたのは江沢民派の賀国強氏(64)。「温厚な人柄で政敵は少ないが、いざという時は胡錦濤氏ではなく、江沢民氏の指示を仰ぐことになる。江氏に連なる上海閥の利権を暴く汚職摘発や江派が依然として多い軍幹部の汚職については以前よりもかなりやりにくくなるのではないか」との懸念の声が出ている。

 賀国強氏は湖南省の農村生まれで山東省の石油部門を歴任した石油閥(国務院石油派)出身。〇二年に昇進の登龍門である党中央組織部長に曽慶紅氏の後任として抜擢され、自らは共青団出身者を重用。胡総書記からの信頼も得られ、常務委入りが確実視されていた。同じ石油閥で政治局常務委を引退した曽慶紅国家副主席(68)から厚い信任を得ており、江沢民派だ。

 治安問題担当の中央政法委書記に就任した周永康公安相兼国務委員(64)は江沢民前総書記(81)と同郷の江蘇省無錫市生まれ。北京石油学院を卒業後、石油畑を通過し、賀国強氏と同じ石油閥で朱鎔基前首相にも評価され、国土資源相も歴任。〇二年に公安相、翌年から国務委員を兼務している江氏直系の人物だ。警察組織や国家安全省に隠然たる影響力を保ち続けており、中央政法委書記に就任することで汚職問題処理の具体的な捜査権限が増すことになる。

 一方で、政治局常務委を選出するための新たな中央委員204人は胡総書記の支持母体である共青団(共産主義青年団)系の「革命第五世代」が躍進し、地方政府の要職を握っているだけでなく中央に到るまで人材配備が完了。青共団派の李克強氏と共に「2人の李」と評される李源潮江蘇省党委書記(56)や令計画中央弁公庁主任(51)、汪洋重慶市党委書記(52)らが新たに中央委入りし、ポスト胡錦涛時代の権力中枢に青共団派が配置されることは確実だ。

 さらには、胡総書記が持続可能な安定発展を目指して提唱する指導理念「科学的発展観」を今大会で党規約に盛り込んだことは、故・ケ小平氏や江沢民氏が現職の最高指導者時代にできなかった“偉業”であり、党内路線を掌握して権威は格段に高まり、同理念にそぐわない党幹部の排斥が可能となる。

 党最高指導部は江派が優勢であるものの、その下の中央委員は青共団派が基盤拡大して上海閥が減ったことで、ポスト胡錦涛世代は確実に胡氏腹心を中心とする青共団派が主導権を握ることになる。今後は党中央軍事委員会で軍を掌握する胡錦涛中央軍事委主席がいつまで同主席を務め、後継にだれを副主席級に選出していくか、軍内での統率主導権が注目される。

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