台湾:陳水扁総統の献金疑惑すっぱ抜いた「中国時報」
    謝罪記事出して総統側が告訴取り下げ

◆与野党の動き活発化

 台湾では二〇〇四年三月の総統選挙に向けて与野党の動きが活発化し、台湾メディアの関
心は、与党・民進党の陳水扁総統が再選できるか、それに対抗する二大野党の国民党と親民
党が大同団結して再選阻止を行うか、に絞られてきている。

 総統選の前哨戦ともいうべき台北、高雄両市長選挙が七日に投開票された際、驚いたのは
各地上波テレビ局の開票速報が与党・民進党候補有利だったり、最大野党・国民党候補の有
利だったり、数字がまちまちだった点だ。

 台湾のテレビ局は地上波局である中視(中国電視公司)、台視(台湾電視公司)、華視(中華
電視公司)、民視のほか、東森電視台(ETTV)、TVBSなど大手有線テレビなどがひしめく。

 これらの大半は、五十年以上続いた国民党政権の影響が強く、必然的に外省人(戦後、中
国大陸から台湾に移り住んだ人々)が経営する国民党系の局が多い。選挙管理委員会の正
式な速報とは別に独自の開票データを速報情報として出すため、逆に視聴者側としては混乱
を招き、「当確」情報もまちまちで、最終結果が出るまで正確さという点では信用できない。

 台湾の新聞各紙も大きく分けて与党・民進党支持者や台湾団結連盟(台連)支持者が多い
本省人(戦前から台湾に移り住んでいた人々)系と野党の国民党、親民党、新党支持者が多
い外省人系に分けられる。

 国民党機関紙の「中央日報」は別にして、外省人系に人気があるのは「聯合報」と「中国時
報」だ。「聯合報」は夕刊紙「聯合晩報」や経済紙「経済日報」、娯楽紙「民生報」も出す有力紙
で野党寄り。同じく「中国時報」も夕刊紙「中時晩報」や「商工時報」を出す野党寄りのスタン
ス。

◆報道の自由を逸脱?

 野党寄りの有力紙に対抗し、与党・民進党の機関紙のような色彩を帯びるのが「台湾日
報」。李登輝前総統の考え方に近い有力紙「自由時報」は台連寄りということになる。

 台北、高雄市長選挙の直前、外省人に人気のある「中国時報」四日付一面トップは陳水扁
総統の献金疑惑をすっぱ抜き、それを読んだ陳総統が激怒。陳総統側が告訴する動きを見
せた。まるで「外省系メディア」対「陳水扁総統」の対立構図が言論戦から法廷に持ち込まれる
ような動きだった。

 中国時報の記事内容は、裏金工作事件である新瑞都事件に関連し、一九九四年の台北市
長選挙で民進党の陳水扁候補陣営の選挙対策責任者だった謝長廷氏(現高雄市長)が新瑞
都の大株主から四百五十万台湾元(約千五百七十五万円)分の小切手を裏金として受け取
り、選挙の活動資金に当てたというもの。

 四日、総統府の陳師孟秘書長は「記事内容は具体的な名前が隠されているが、選挙期間中
なので目的は明らかだ。報道の自由を逸脱した記事であり、有権者を特定の方向に導こうとす
る意図があるので、短期間内に告訴に踏み切る」と宣戦布告。一方、中国時報側は、告訴の
報を受けて社内会議を開き、記事内容に対する説明を五日付の紙面で明らかにすることを決
定した。

◆台湾特有の法治構造

 中国時報は五日付一面で「事実を確かめずに報道した」と謝罪記事を出し、陳総統は同日、
「訂正報道は受け入れられる」と表明、告訴取り下げを決定した。この告訴騒ぎについては、
「総統が裁判を起こせば、総統側が完全有利。どんなに状況証拠がそろっていても中国時報
側に勝ち目はない」(国民党関係者)との見方が根強く、台湾特有の法治構造が映し出され
た。

 今回の選挙で国民党陣営に取材すると、「民進党はわいろ体質で腐敗している」と同報道を
挙げながら説明する者が多かったが、中国時報側が謝罪していることを「建前上の謝罪」とし
か受け取っていない表れでもある。

 今後、台湾政界が二極化し、先回の総統選直後のような民進党優位の状況から与野党が
五分五分の状況に変化することで、台湾メディアは再び国民党系の支配構造に復権するの
か、健全な言論が醸成されるか、見定めていきたいものだ。

(台北で、2002年12月21日記)




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