中国:深センの二大新聞社が正式に合併・統合
    政府は国内メディア生き残りへ本腰の動き

◆若い世代は「大衆紙」

 一カ月に一度の割合で香港から深セン、広州を一巡し、定点観測すると深センや広州の発
展ぶりは目を見張るものがある。来年、開通を目指す深センの地下鉄工事は香港と接する羅
湖税関周辺で大規模な建設が続いて街の景観が様変わりし続けており、広州の中心部、天河
区もビルやマンションのすさまじい建設ラッシュが続いている。

 定点観測する場所の一つとして、深センや広州東駅の新聞スタンドでどの新聞がよく売れて
いるかをチェックする。深セン−広州間の特急電車では、老若男女がどの新聞や雑誌を読む
か興味津々だ。スタンドでも電車でも、深セン紙「晶報」など大衆的なタブロイド紙、経済動向が
詳しい「証券報」「経済報」、スポーツ紙などがよく売れている。

 二十代前半の女性らはファッション誌をパラパラとめくり、日本のアイドル歌手、浜崎あゆみ
の紹介ページで手が止まり、凝視しながら「同じ東洋人として、流行最先端のファッションと化
粧のメークアップが一番参考になる」と話していた。高齢者は“大本営発表”のような堅い官営
紙を読む姿がちらほらだが、中年より若い世代はスポーツ紙や大衆紙が圧倒的に多く、広東
省の人々の新聞メディアに対するとらえ方は、分かりやすさ、速報性、編集の特徴などを重視
しており、香港人メディアに対するシビアな見方に似て来つつある。

 九月三十日、深セン市内で発行している日刊紙「深セン特区報」と日刊経済紙「深セン商報」
の二大新聞社が正式に合併・統合され、国内最大級の新聞メディア企業が誕生した。

◆合併で国内最大紙に

 昨年の国内紙広告収入ベスト10(中国新聞研究センター調べ)は一位「広州日報」(十四億
一千万元、一元=十四円)、二位「上海文匯・新晩報グループ」(七億九千万元)、三位「北京
青年報」(六億五千万元)、四位「北京晩報」(六億二千万元)、五位「深セン特区報」(五億七
千万元)、六位「深セン商報」(五億二千万元)、七位「羊城晩報」(四億七千万元)、八位「解放
日報」(四億五千万元)、同「新華日報」(四億五千万元)、十位「成都商報」(三億九千万元)の
順になっており、広告収入では五位と六位が合併し、広州日報を抜く最大規模の新聞社となっ
た。

 中国共産党深セン市委員会が管轄する官営紙「深セン特区報」は発行部数六十万部、年間
広告総収入が五億七千万元の深セン最大のメディア企業だった。深セン市政府が管轄する
「深セン商報」は発行部数五十万部、年間広告総収入が五億二千万元超。双方とも官営メデ
ィアだけに合併はスムーズに行われ、広東省随一の新聞メディア企業「広州日報」報業集団を
抜き、総資産額約百億元の国内最大新聞メディア企業に躍り出た。

◆「メディア特区」構想

 中国政府は経済特区形式のような「メディア特区」を広東省内に限定制定する準備を進めて
おり、米娯楽メディア最大手AOLタイム・ワーナー社や豪州のルパート・マードック氏傘下の香
港衛星テレビチャンネル「スターTV」など域外メディアを間接参入させ、緩衝期を設けて国内メ
ディアの生き残りへ本腰を入れる動きだ。

 党中央宣伝部は、二年以内に国内メディアの合併・再編をほぼ完了させたい意向で、広東
省内でも、今後の生き残りの道として経営の振るわない広州電視台と日刊紙「広州日報」の二
社合併、夕刊紙「羊城晩報」と日刊紙「南方日報」、南方電視台の三社合併が現実味を帯びて
いる。

 同省のテレビ局としては他の追随を許さない広東電視台(GDTV)は、広州電視台と広州日
報の合併統合に対しては警戒しておらず、「深センの官営メディアのとは違い、広州メディアは
複雑。現時点では広州の新聞社やテレビ局の合併・統合などあり得ない」(広東電視企業管理
センター企画部)と見ているが、一方で「予想以上に広州メディアの統合・合併は早まる」(広州
電視台編成局)との見方も強まっている。

 かつて旧ソ連最後のゴルバチョフ書記長が就任時、ペレストロイカ(再編)政策とグラスノスチ
(情報公開)を打ち出し、閉鎖的な官営マスコミ報道を改め民衆の「声」を反映させようとしてソ
連は崩壊した。

 中国も、政治は一党独裁、経済は資本主義市場経済を導入し、江沢民政権時代から胡錦涛
新政権への移行期を迎え、中国版グラスノスチの導入に迫られている。官営メディアの親方日
の丸的な経営体質が見直され、私営企業の実利優先型へ移行していく「大いなる実験」は広
東省からどのような形で動き始めるか、中国メディアの体質改善の目安となりそうだ。

(2002年10月5日記)

セン=土ヘンに川。




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