■■ 沈みゆくマカオ ■■ 中国返還の光と影(3)


増大する一国二制度の歪み
香港の二の舞い浮き彫りに

 中国内で「邪教(カルト)」として徹底取り締まりを受けている気功集団「法輪功」(創始者=李
洪志氏)。七月、中国政府から非合法組織のらく印を押され、徹底した弾圧を受けながら海外
メンバーをデモに参加させ、国際問題化させる全面対決姿勢は返還前後のマカオにも波及し
ようとしている。 

 マカオ返還に向け、中国側が法輪功の動きに最大の脅威を感じたのは、十一日、香港の新
華社香港支社前で行われた外国人を含む法輪功メンバー約八百人の抗議デモ。中国本土の
非合法化組織が「一国二制度」を逆手に取る形で、これほど大規模な抗議活動を展開したの
は初めてだ。 

 香港では、団体登記された法輪功の活動が中国国内で唯一許可されている。 

 デモの動きに対して新華社香港支社の姜恩柱支社長が「香港は法輪功の大陸浸透基地に
なってはならない」と警告するのは当然としても、董建華・行政長官でさえ「国家や香港、一国
二制度に不利益なことはすべきではない。香港を反中国の基地にはさせない」と中国の顔色
を見ながら感情的に発言した点は、一国二制度の本音と矛盾が見え隠れする。 

 法輪功香港支部の簡鴻章・支部代表は「香港の法輪功学徒はマカオでの抗議行動に参加し
ないが、海外メンバーの一部が平和的な請願デモを行うだろう」と談話を発表、法輪功と中国
政府の情報心理戦は、一国二制度に移行するマカオにも飛び火し、まるで二国論をめぐる中
台情報心理戦の様相を呈し始めている。 

 中国の人権擁護組織・中国人権民主化運動情報センター(本部・香港)によると、十九、二十
日の両日、法輪功側は海外メンバー約五百人をマカオ入りさせ、気功修練による抗議行動を
行い、返還式典に参加する中国の江沢民国家主席(総書記)に請願書を送る計画であるとい
う。 

 これに対し、十五日、マカオ警察の梁偉強スポークスマンは「マカオの法律規定では住民以
外はデモ行為の権利がない。住民ではない法輪功メンバーがデモを行った場合、最高で懲役
二年以下の懲役刑になる」と語り、断固、返還直前のマカオ法体系で取り締まる強い意志を示
す。 

 同日、深セン市内のホテルで法輪功メンバー六人(香港人二人、米国籍華人四人)が中国
公安当局に拘束されている。 

 しかも、マカオ警察側は「法輪功の海外メンバーリストを入手しており、もしマカオで違法行為
を画策する動きがある場合、入境を拒絶する」と中国公安当局から入手した法輪功ブラックリ
ストをちらつかせる。 十六日、リストに入っていたオーストラリア人の法輪功メンバー三人と日
本留学中の中国人メンバー一人が「入境条例」を盾にマカオへの入境を拒否され、見せしめ
的に香港へ返送された。 

 返還後のマカオはミニ憲法に当たるマカオ基本法に従って、政治デモは申請が許可されれ
ば可能となる。法輪功の場合、政治活動というより宗教的デモにあたり、取り扱いが微妙だ。 

 中国人権民主化運動情報センターによると、入境拒否の妨害に遭っているマカオでの法輪
功デモ計画は、市内の公園で二百人未満のレベルで平和的に行う動きになりつつある。法輪
功側がデモ申請についてマカオ市政庁に打診したところ、二百人以下ならば申請の必要がな
いが、二百人以上ならば申請手続きが必要であることを指示されたためだ。 

 中国の民主活動家への排除行為はマカオ返還記念式典の香港代表団リストでもあからさま
に出ている。 

 十六日に公表された董建華行政長官率いる香港代表団四十七人のうち、政治家は親中系
の自由党、民建聯などの主席ばかりで民主党や民主派勢力関係者は意図的に一切名簿に入
っていない。 

 また、一国二制度の盲点として必ず発生する不法滞在状態の子女居留権問題がマカオの場
合、香港同様に重くのしかかっている。 

 マカオ人男性と中国内地の女性の間に生まれた子女のマカオ居留権は、マカオ基本法の解
釈次第では合憲となり、香港基本法の解釈をめぐって現在も紛糾する香港の子女居留権問題
と同じ難題を抱えているからだ。 

 九七年七月一日、香港が中国に返還されて直後、香港出入境管理事務所には降ってわい
たように、不法滞在の子女居留権獲得を求めて多くの該当者家族が申請手続きに訪れる事
件が起こった。 

 マカオの場合も、返還直後の二十日、五十人を超える該当者家族が中国内地で生まれたマ
カオ人の子女居留権をめぐって何厚カ初代マカオ行政長官に申請手続きを求める動きだ。 

 一国二制度は本来、故トウ小平氏が台湾回収(統一)のステップとして香港やマカオの返還
用に発案されたものだが、香港返還後、一国二制度のゆがみや矛盾点は基本法の解釈をめ
ぐり多くの難点を浮き彫りにした。香港返還後の一国二制度の矛盾点は生かされないままマカ
オ返還でも適用され、香港の”二の舞い”に甘んじようとしている。 

(99年12月19日記)



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