香港トップの去就の鍵握る中国政府
格別待遇の会見でも明確な支持は表明なし

 梁錦松(アント二−・リョン)財政長官と葉劉淑儀(レジーナ・イップ)保安局局長が辞任したこ
とから、二人と同様に七月一日の大規模デモで辞任要求が叫ばれていた董建華・行政長官の
去就に注目が集まっている。高官二人の辞任発表後の記者会見で、董長官は自らの辞任の
可能性を全面的に否定した。また、特区行政長官の任免権を持つ中央政府も引き続き支持を
表明した。だが、香港メディアには果たして中央政府が本当に董長官を支持しているのかとい
う疑問を投げる論調も目立っている。

★☆董長官の北京訪問、過去に例のない異例の厚遇

 先に締結された香港と中国本土による「より緊密な経済・貿易関係に向けた協定(CEPA)」
や、重症急性呼吸器症候群(SARS)流行の際の医療物資供給、中国本土住民の来港規制緩
和など、中央政府による香港への数々の支援措置は童政権に対する支持の表れといわれて
きた。

 董長官が七月十九日に北京に赴いた際、中国の胡錦涛国家主席、温家宝首相、曽慶紅国
家副主席ら八人の中央幹部が面会したのは過去に例を見ない格別な待遇だという。胡主席は
童長官と一分間も握手をしたり、温首相は「私は依然として童長官を中心とする特区政府が目
下の困難を克服できると信じている」と述べるなど、中央政府による董政権支持が示された。

 しかし、表面上は支持しているように見せても、中央幹部らの態度は冷却化しているとの見
方もある。二十日付「りんご日報」は「胡主席と温首相は香港メディアの前で明確に董長官本
人を支持しているとは言っていない」と指摘した。江沢民・前国家主席と違い、現在の中央幹部
は公に董長官支持を表明しなくなったとみている。確かに温首相も記者に「董長官を支持する
か?」と問われた時に何も答えず、胡主席は江前主席のようにマスコミの前で董長官を絶賛す
ることはなかった。

 この中央幹部の態度について時事評論家の劉鋭紹氏は、「香港の安定を大前提とし、董長
官降ろしを狙う勢力に対しては室長官への支持を示すが、大げさに董長官を持ち挙げるのは
中央と香港の民意を対立させてしまうから」と分析している。

 七月一日の大規模デモから基本法第二三条に基づく国家安全条例の立法先送りが決定さ
れるまで、中央政府は一切、公式に態度を示さなかった。その口火を切ったといえるのが八日
の外交部のコメントだ。国際格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が前日、「中
央政山同意の下に董長官が辞任すれば、現在の政治的不安は緩和される」との評論を発表
している。これに対し、外交部スポークスマンは「董長官を中心とする特別行政区政府は目下
の困難を克服し基本法第二三条の立法を完了させるだろう。部外者はこの問題に関して一切
の評論を発表する必要はない」述べた。

★☆左派紙「大公報」、副行政長官設置を提案

 香港の左派紙には中央政府の意向が反映されることから、その報道内容から中央政府が
董長官をどのように見ているかをうかがえる。

 このため、七月十五日付「大公報」に掲載された「董長官の能力不足を補う副リーダーが必
要だ」とする論説が物議を醸した。同論説は中国人民大学国際関係学院の時段弘教授による
もので、董長官の香港での威信と信頼性は空前の危機に陥っていると指摘し、「市民の高い
支持があり、政治・行政能力に長け、各方面で香港人の信任が厚い人物を副リーダーとし、董
長官の不足を補う必要がある」と述べている。ここから中央政府が董長官の能力に不満を抱
いていると読み取る向きもある。

 童長官は中央幹部と会談した十九日の記者会見で「『大公報』が副行政長官の設置を提案
しているが、その必要があると思うか」と質問され、「基本法に行政長官の職責がはっきり示さ
れている。われわれは基本法に則っているだけだ」とだけ答えた。

 香港紙「りんご日報」は九日付で、「『大公報』は七月に入ってから度々、董政権の施政を批
判する論説を掲載している」と指摘している。八日付「大公報」では社説で「特区政府の管理、
威信上に問題が出ていることは否定できず、将来の施政でも数々の困難に直面するだろう。
経済を建て直すことだけが市民の信頼を回復する道だ」と述べている。「大公報」はこれまで特
区政府の施政を評価する記事を多く掲載していたが、温首相が香港を訪問してから、こうした
変化が表れたという。

 同じく左派紙「香港商報」は「中央政府はなぜ童長官を支持し続けるのか」、する社説(二十
二日付)で「『董長官降ろし』の動きは実質的に基本法に違反する方法での権力奪取である」
と、香港を不安に陥らせる可能性を挙げた。「中央が支持しているのは董長官個人にとどまら
ず、基本法と香港の政治制度だ」と論じている。こうした論説からは童長官の手腕に満足はし
ていないものの、現時点での行政長官交代が香港の安定を脅かすことになるという中央の見
解がうかがえる。
(03年8月1日記)

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