国家安全条例案を撤回 香港行政長官
経済回復に全力、市民の理解求む

 香港特別行政区政府の董建華行政長官は五日、中国政府の転覆行為など反政府活動の
規制強化を盛り込む国家安全条例案の撤回を表明した。中国返還六年を過ぎ、景気低迷と
新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の直撃でくすぶる不満のはけ口が同条例案阻
止と董長官辞任要求という形で七月一日の五十万人を超える香港人の大規模デモにまで発
展。同条例案通過を後押ししていた中国政府も条例撤回と景気回復による親中派ソフト路線
が香港人の民意を得やすいと判断、同決定を事前了承したと見られる。

 同日午前、閣僚らを集めた緊急行政会議を開いた董長官は、「条例案についてのコンセン
サスが得られず、条文内容への疑念が払しょくできていない」と判断し、同条例案の撤回を同
会議で決定。

 その後、李少光(アンブローズ・リー)保安局長と梁愛詩(エルシー・リョン)律政長官を率いて
記者会見した董長官は「現段階で条例制定の期限は設けない。多くの市民に不満や疑念が残
っており、理解にはかなり時間を要する」と説明した。当初、二期目の任期が満了となる二〇
〇七年までに条例制定を表明していた董長官は、「保安局内に専門委員会を発足させ、今後
の制定作業を検討・諮問する」と述べたものの、任期内に条例を制定するか否かについては
明確な回答を避けた。

 記者会見時の質疑では「条例案撤回表明は来年九月に立法会選挙に向けた政治的考慮で
はないか」との記者団の質問に董長官は「条例撤回の原因は、十分に時間をかけて意見聴取
を行う必要があると判断したことと、経済回復に全力を注ぎたいためだ」と答えた。

 香港基本法(ミニ憲法)二三条に基づく国家安全条例案の制定問題は、五十万人超の反対
デモで立法会での採決が延期となり、閣僚二人を引責辞任にまで追い込んだ。本来ならば五
十五箇所以上の修正内容を元に市民への意見聴取を開始する予定だったが、来年九月の立
法会選挙で勢いづく野党、民主派勢力が議席の過半数を奪取する可能性もささやかれてお
り、条例反対派が民意を得る形で早期制定の断念に直結した。

 民主派最大勢力である野党・民主党の楊森党首は「条例案の政府撤回を歓迎する。ただ
し、行政長官選挙と立法会選挙ができるだけ早く全面的な普通選挙となり、その後に立法審
議すべきだ」と述べた。

 一方、親中派最大政党である民主建港連盟(民建連)の曽ト成党首は「さらに詳細な市民へ
の意見聴取が可能となり、早期立法化へのステップだ」と撤回決定を歓迎。撤回決定が来年
九月の立法会選挙で民建連の有利に働くのではないか、との意見については「浅薄な考え」と
一蹴、曽慶紅中国国家副主席ら中国要人との会談のために北京入りしている曽党首ら民建
聯の立法会議員メンバー約二十人は中央政府との間で同条例案をめぐる最終的な戦略を練
ると見られている。
(03年9月5日記)



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